「隠し砦の三悪人」(1958年)監督 黒澤明 出演 三船敏郎、上原美佐、
藤原釜足、千秋実 音楽 佐藤勝
以前にも書いたように、黒澤作品を書くのは苦手なので箇条書きで御免。
・冒頭の又七、太平の状況を誤解してる人が実に多い。
彼らは、戦で勝って物欲・色欲を満たそうと考え、田畑を売払って武具を
揃え、戦へ加わろうとしたんです。
でも遅刻して、着いたら戦は終わってた。(笑)
結果、負けた秋月家の雑兵と間違われ「死人の穴掘り」に、こき使われた。
それが、「お役御免」になったか「逃げ出した」のかは知らないけど、兎に
角、現場を離れ故郷に帰ろうとしてる。
以上が、冒頭の状況。
「秋月家に加わって負けた」のでは決してありません。
もっと、「間抜け」だったんです。
・この映画は、この又七、太平のアホさ加減を「知性」(笑)忘れて笑えなけ
れば楽しめません。
「馬鹿」でも「強欲」でも、はたまた「色欲」、或いは「庶民」であろうが、笑っ
ちゃえばいいんです。
「笑ったモン」勝ちの映画です。
・これは、今まで、書かれたのを見た事がないのですが、又七が「高札場」
で、秋月の雑兵と間違われ、捕虜の列に押し込められる一連の動きは、
とても素晴らしいモンタージュだと思います。
・三船登場シーンから砦出発シーンまで、5~10分、圧縮して欲しい。
・みんな、旅人宿での雪姫の台詞を評価するけど、僕は、あの宿場町の雰
囲気を評価します。
・三船の乗馬術を超える役者は未だ現れず。
・少し長い気もするが、槍術を初めて見た。
・「日劇ダンシング・チーム」総出の火祭りシーン、統一感が有りすぎかもし
れないけど文句無く素晴らしい。
舞台がハネた後、砧の撮影所に集合、一晩で撮り上げたとか、多分、こ
れは黒澤にしか出来ない。
あの大太鼓、鉦の躍動感。
あの、又七・多平の情けない顔、姫の楽しそうな顔!
・翌朝、金塊を背負う量のやり取り。(爆)
・姫 「さらばじゃ!」
太平「ん?何か言ったか?」
又七「うんにゃ」
ここ、個人的に結構ツボ。
・有名な関所突破シーン。
三船が、馬を走らせながら百姓娘を片手で拾い上げるシーン。
明らかに「拾い上げるシーン」の百姓娘はスタントを使っていて、娘役のス
タントは、その瞬間、三船と呼吸を合わせて飛び上がってる。
それは当たり前の事だけど、惚れ惚れする程、上手い!
姫の「兵衛、犬死無用!志あらば続け!!」から皆が関所を突破して行く
シーン、誰かが「射精感」に例えていたけど、実に言い得て妙。
・藤田進の、あの台詞、あのタイミング。
邦画屈指の名台詞!
この台詞を思い出す時、必ずスクリーンに映し出された藤田進の表情とセ
ットで浮かびます。
・雪姫を演じた上原美佐について。
リメイク版を見た人が「存在感は黒澤版に負けてるかもしれないが、演技
力は長澤の方が上」だとか。
アホか!上原美佐さんより演技の下手な人を見たことはありません、そん
な事は当たり前!!
下手だろうが何だろうが、彼女くらい、一国の姫としての存在感、宿命と自
覚を経た覚悟、気品と気高さ、凛とした真っ直ぐな心、これらを表現出来た
人はいない、彼女以外の雪姫など考えられない、黒沢の眼力は凄まじい。
あの個性なくして、不世出のスター・三船と曲者、釜足&千秋に互せる訳が
ない。
僕は、この作品、上原美佐さんなくしては成立しない作品だと思っています。
更に、自分を知って2、3年で映画界を去っていった潔さ、これは本当に雪姫
そのものだと思う。
・佐藤勝のマーチ、大好き。
・この作品を黒澤監督の「ローマの休日」と見抜いた人、「目から鱗」でした、
心から敬服します。
※「隠し砦の三悪人」の「三悪人」とは誰なのか?
殆んどの人が詮索すると思います。
僕が思うに、あまり「三悪人」という言葉に囚われない方がいいのではない
でしょうか。
黒澤さん、「三悪人」という言葉が大好きなんですよ、だから、ある意味、記
号と考えても、それほど差し支えないかもしれません。
まあ記号と言っても意味は有ります。
「三悪人」とは、黒澤さんの敬愛するアメリカの映画監督J・フォードの作品
から来てると思います。
とすれば、「隠し砦の三悪人」のタイトル名は、J・フォードの「三悪人」への
オマージュなんですよ。
映画「三悪人」は、三人の小悪党が、行きがかりから気の強い娘を大きな
悪党共から守るという話。
このシチュエーションにヒントを得たのか(通説では、「黒澤の脚本ブレーン
だった菊島隆三が、故郷の山に「隠し砦」があった、という話から発展した」
とされてる)、出来た脚本が「三悪人」に似たのか、それは知りません。
だから、「三悪人」は誰なんだ?という詮索はちょっと無意味で、J・フォード
の「三悪人」に似たような話だとタイトルで表明してるだけなんだと思ってい
ます。
藤原釜足、千秋実 音楽 佐藤勝
以前にも書いたように、黒澤作品を書くのは苦手なので箇条書きで御免。
・冒頭の又七、太平の状況を誤解してる人が実に多い。
彼らは、戦で勝って物欲・色欲を満たそうと考え、田畑を売払って武具を
揃え、戦へ加わろうとしたんです。
でも遅刻して、着いたら戦は終わってた。(笑)
結果、負けた秋月家の雑兵と間違われ「死人の穴掘り」に、こき使われた。
それが、「お役御免」になったか「逃げ出した」のかは知らないけど、兎に
角、現場を離れ故郷に帰ろうとしてる。
以上が、冒頭の状況。
「秋月家に加わって負けた」のでは決してありません。
もっと、「間抜け」だったんです。
・この映画は、この又七、太平のアホさ加減を「知性」(笑)忘れて笑えなけ
れば楽しめません。
「馬鹿」でも「強欲」でも、はたまた「色欲」、或いは「庶民」であろうが、笑っ
ちゃえばいいんです。
「笑ったモン」勝ちの映画です。
・これは、今まで、書かれたのを見た事がないのですが、又七が「高札場」
で、秋月の雑兵と間違われ、捕虜の列に押し込められる一連の動きは、
とても素晴らしいモンタージュだと思います。
・三船登場シーンから砦出発シーンまで、5~10分、圧縮して欲しい。
・みんな、旅人宿での雪姫の台詞を評価するけど、僕は、あの宿場町の雰
囲気を評価します。
・三船の乗馬術を超える役者は未だ現れず。
・少し長い気もするが、槍術を初めて見た。
・「日劇ダンシング・チーム」総出の火祭りシーン、統一感が有りすぎかもし
れないけど文句無く素晴らしい。
舞台がハネた後、砧の撮影所に集合、一晩で撮り上げたとか、多分、こ
れは黒澤にしか出来ない。
あの大太鼓、鉦の躍動感。
あの、又七・多平の情けない顔、姫の楽しそうな顔!
・翌朝、金塊を背負う量のやり取り。(爆)
・姫 「さらばじゃ!」
太平「ん?何か言ったか?」
又七「うんにゃ」
ここ、個人的に結構ツボ。
・有名な関所突破シーン。
三船が、馬を走らせながら百姓娘を片手で拾い上げるシーン。
明らかに「拾い上げるシーン」の百姓娘はスタントを使っていて、娘役のス
タントは、その瞬間、三船と呼吸を合わせて飛び上がってる。
それは当たり前の事だけど、惚れ惚れする程、上手い!
姫の「兵衛、犬死無用!志あらば続け!!」から皆が関所を突破して行く
シーン、誰かが「射精感」に例えていたけど、実に言い得て妙。
・藤田進の、あの台詞、あのタイミング。
邦画屈指の名台詞!
この台詞を思い出す時、必ずスクリーンに映し出された藤田進の表情とセ
ットで浮かびます。
・雪姫を演じた上原美佐について。
リメイク版を見た人が「存在感は黒澤版に負けてるかもしれないが、演技
力は長澤の方が上」だとか。
アホか!上原美佐さんより演技の下手な人を見たことはありません、そん
な事は当たり前!!
下手だろうが何だろうが、彼女くらい、一国の姫としての存在感、宿命と自
覚を経た覚悟、気品と気高さ、凛とした真っ直ぐな心、これらを表現出来た
人はいない、彼女以外の雪姫など考えられない、黒沢の眼力は凄まじい。
あの個性なくして、不世出のスター・三船と曲者、釜足&千秋に互せる訳が
ない。
僕は、この作品、上原美佐さんなくしては成立しない作品だと思っています。
更に、自分を知って2、3年で映画界を去っていった潔さ、これは本当に雪姫
そのものだと思う。
・佐藤勝のマーチ、大好き。
・この作品を黒澤監督の「ローマの休日」と見抜いた人、「目から鱗」でした、
心から敬服します。
※「隠し砦の三悪人」の「三悪人」とは誰なのか?
殆んどの人が詮索すると思います。
僕が思うに、あまり「三悪人」という言葉に囚われない方がいいのではない
でしょうか。
黒澤さん、「三悪人」という言葉が大好きなんですよ、だから、ある意味、記
号と考えても、それほど差し支えないかもしれません。
まあ記号と言っても意味は有ります。
「三悪人」とは、黒澤さんの敬愛するアメリカの映画監督J・フォードの作品
から来てると思います。
とすれば、「隠し砦の三悪人」のタイトル名は、J・フォードの「三悪人」への
オマージュなんですよ。
映画「三悪人」は、三人の小悪党が、行きがかりから気の強い娘を大きな
悪党共から守るという話。
このシチュエーションにヒントを得たのか(通説では、「黒澤の脚本ブレーン
だった菊島隆三が、故郷の山に「隠し砦」があった、という話から発展した」
とされてる)、出来た脚本が「三悪人」に似たのか、それは知りません。
だから、「三悪人」は誰なんだ?という詮索はちょっと無意味で、J・フォード
の「三悪人」に似たような話だとタイトルで表明してるだけなんだと思ってい
ます。
コメントありがとうございます!
ご覧になられたのですね。
素晴らしい!(爆汗)
〉この作品、雪姫の硬い演技とキンキン声、大平、又七の性懲りなさを受け入れられるか入れられないかで評価が分かれると思います。
僕は「七人の侍」タイプを求めて観に行ってしまつたので1回目は駄目でしたけど、違うものだと解って観た2回目は存分に楽しめました。
それからは楽しくて楽しくて黒澤作品では2番目に好きです。(僅差で「用心棒」の上)
始まりから砦出発までが長すぎるとか欠点もあるのですが。(笑)
この作品は雪姫の成長物語で(その部分は「ローマの休日」と重なる)、六郎太は目立っていても物語としては2番手の位置、又七、大平は狂言回し、上原美佐演じる雪姫こそが話の大黒柱なんです。
映画的には三船敏郎が主役でも話の芯は雪姫(雪姫は成長するけど六郎太は同じまま)。
誰もが雪姫を中心にした惑星に過ぎない。
歴戦の猛者どもに一歩も引かず、その凛とした個性だけで黒澤の大作の中心にデンと座って動じない、そんな事が出来る人は滅多に居ない、偶然とはいえ、よく上原美佐さんを見つけてくれたと思ってまいます。
(因みに雪姫役候補として最後まで残ってたのが百姓娘を演じてた樋口年子さん、「椿三十郎」で侍女の小磯、「天国と地獄」では権藤家の女中の一人で出てます)
私のような
〉は、は、は、ご冗談を(「七人の侍」の五郎兵衛の台詞)
好悪、どちらにしても記事楽しみにしています。
只、明日、仕事後直ぐ「ラ・ラ・ランド」へ行く予定、帰りに一杯引っ掛けてくると思うのでコメントは日曜になるかもしれません。(汗)
日曜も夕方前にマレーシアの映画を観に行く予定です。(笑)
>アホか!上原美佐さんより演技の下手な人を見たことはありません、そんな事は当たり前!!
素晴らしい!
この映画を何度も見て知り尽くしている鉦鼓亭さんのこの記事の中で
一番こころ惹かれ、大笑いし、納得した文章です♪
私のようなものの記事はきっとアレですけど、
もしお時間いただけたら明日アップしますので宜しくお願い致します。
.
「七人の侍」の次に見た作品なんですよね(「どん底」と二本立)
だから、「七人の侍」と同じものを期待しすぎちゃった。
面白い事は面白いんだけど、宵乃さんが仰るように又七、太平にウンザリしたのと、雪姫のキンキン声に面喰って・・・。
その時の評価は、イマイチでした。
嵌ったのは2度目で、各キャラクターが解ってたからなのか、リラックスして楽しめました。
それからは、もう大好きな作品。
最近は、志村さん達と雪姫の別れのシーンで涙してます。(笑)
それは考えませんでした>他の方のレヴュー読むと、「誰が三悪人なんだ、タイトルおかしい!」というのが多かったもので、つい書いてしまいました。(汗)
>下手だろうが何だろうが、彼女くらい、一国の姫としての存在感、宿命と自覚を経た覚悟、気品と気高さ、凛とした真っ直ぐな心、これらを表現出来た人はいない
ですよね~。甲高い声で耳が痛かったけど、彼女以外の雪姫は想像できません。リメイクは全然面白くなかったです。
>「隠し砦の三悪人」の「三悪人」とは誰なのか?
あー、それは考えませんでした。殆どの人に分類されなかった!(笑)