セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「恋におちたシェイクスピア」

2015-08-06 23:06:21 | 外国映画
 「恋におちたシェイクスピア」(「Shakespeare in Love」、米、1998年)
   監督 ジョン・マッデン
   脚本 マーク・ノーマン  トム・ストッパード
   撮影 リチャード・グレイトレックス
   美術 デイヴィッド・ガンブル
   衣装デザイン サンディ・パウエル
   出演 ジョセフ・ファインズ
       グウィネス・パルトロウ
       コリン・ファース
       ジュディ・デンチ
       イメルダ・スタウントン

 ペストが流行し劇場は閉鎖、パトロンから資金の返済を迫られ窮地に落ちるローズ座
座長、頼みは座付き作者シェークスピアの新作だけだった。 
 しかし、そのシェークスピアはスランプ真っ只中・・・。

 F・トリュフォーの「アメリカの夜」に似た一種の「劇中劇」と言えるし、「ロミオとジュリエ
ット」のパロディとも言える作品で、「ロミオとジュリエット」を劇中劇にした上質のパロデ
ィと言うのが僕の感覚。
 ヒロインが「男装」する事で「十二夜」の要素を入れ、それをラストに生かすと言う「芸」
も上手いと思いました。(ヒロインの名前を「十二夜」から持ってきてるから、両者を交錯
させる設計は明白)
 「劇中劇」に於ける虚と実の境が低い為、ラスト近く宮内長官やエリザベス�世が舞
台に上がると、映画で有りながら、まるで舞台の芝居を観てるような錯覚を起こす演出
も、中々凝っていて面白い。
 既婚者と婚約者の「禁断の恋」という壁は、正直、かなり苦しい部類に入るけど、「ロ
ミオとジュリエット」のパロディと考えれば、それ程、細かく考えなくてもいいんじゃない
かと僕は思いました。(ちょっと後味の悪さは有ったけど)

 この作品を観て違和感を感じたのは、シェークスピアが美男子過ぎる事。
 あれだけの文才、詩才が有って、且つ、美男子と言うのは違反事項というか不条理。(笑)
 シラノが共感を呼ぶのは「天は二物を与えず」の庶民感情が有るからなんですよ!(汗)
 肖像画のイメージが有るので、座付き作者は知ってても役者もやってたのは記憶か
ら落ちてた。
 その肖像画、よく見れば後年のモノだし、あれを若くして不足がちの髪を足せば役者
をやるくらいの男前だったのでしょう。
 う~ん、やっぱり、世の中は「不条理」だ。(爆)

 この作品、「ロミオとジュリエット」が好きな人には非常に楽しい。
 劇中に出てくる色々な台詞の元ネタを二人に語らせたり、パリス伯爵にティボルトの
性格を与えられたようなC・ファース演じるウェセックス卿、ロザラインの実態、最後に
エリザベス�世がヴェローナの領主の位置に立ってしまう演出、F・ゼフィレッリの作品
を思い出させる舞踏会の出会いとダンス等々、一種の「楽屋落ち」かもしれないけど、
何かニンマリしてしまいました。
 (「ロミオとジュリエット」のパリス伯爵は非常に哀れな役だけど、ウェセックス卿は道
化度が十割増しなので哀れを通り越して悲惨(笑))

 役者陣ではヒロインのG・パルトローが断然良かった。
 最初、出て来た時はそれ程でもなかったけど、進むに従ってドンドン魅力的になって
いく、やはり、「ロミオとジュリエット」ものはヒロインが魅力的でないと成り立たないので
す。(笑)
 後、地味で目立たないけどマキューシオの役を演じたベン・アフレックも良かった。
 乳母のイメルダ・スタウトンも良かったけど1968年版のパッド・ヘイウッドが素晴らし
かった分、ちょっと割を喰ったかもしれません。(これはイギリスとイタリアの違いで仕方
ない部分)

 一点だけ不満が有るとすれば、劇中、演じられる「ロミオとジュリエット」がイマイチだっ
た事。
 初演で劇を超えた感情のぶつかり合いなのは解るけど、シェークスピア特有の英語の
美しさ(韻とリズム)を殆ど感じられなかったのは、少し残念な感じがしました。(特に主役
のJ・ファインズ)
 

※シェークスピア役のJ・ファインズ、ずっとライアン・ゴズリングだと思ってた。(汗)
 年初めの「めぐり逢わせのお弁当」で、ヒロインのときめき相手と旦那を区別出来なか
 った苦い失敗を思い出し、顔面識別能力の劣化を嘆いています。(笑)

 H27.8.2
 TOHOシネマズ新宿
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 移り香に 惑い恨めし 後朝(きぬぎぬ)の 儚く消える 運命(さだめ)ありせば

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8 コメント

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昔観ていて★つけてるけど (宵乃)
2015-08-07 07:17:47
なかなか再見しようと思えないのは”既婚者と婚約者の「禁断の恋」”のせいか(笑)
二人の出会いのくだりはかなり覚えてるのに、後半がまったく思いだせないんですよね~。
鉦鼓亭さんの歌をみるかぎり儚い物語みたいだし、いつか気が向いたら再見しようと思います。

>その肖像画、よく見れば後年のモノだし、あれを若くして不足がちの髪を足せば役者をやるくらいの男前だったのでしょう。

あはは、たしかにあの肖像画、真っ先に頭に目が行っちゃいますもんね。なかなかのイケメンなのにもったいない。でも、隠してないという事は気にしてなかったのかな?
返信する
おはようございます☆ (miri)
2015-08-07 08:44:10
>この作品、「ロミオとジュリエット」が好きな人には非常に楽しい。

鉦鼓亭さんらしい記事ですネ!
その題材に限らず、シェイクスピアに詳しいので、そういう目線に頷かされました☆

私は6年前に見て、その年のベスト10に入っては いるのですが、あんまり覚えていなくて(笑)。
ハッキリと覚えているのは、最初の方のシェイクスピアのドタバタ過ごしている点と、
ジュディ・デンチさんの女王陛下ですネ・・・その少し前に同じような役柄を演じてるのを見たので(笑)。

もしも再見する事があったら、鉦鼓亭さんの目線、この記事を参考にさせて頂きますね~♪

それと、先日の「まぼろしの市街戦」の事ですが、よく考えたら、
鉦鼓亭さんは両方見ていらっしゃるのですが、私は吹き替え版を見た事がないので
正確な意味では、比べてのフランス語版が好きとまでは言えないのでしょうね~?
こちらも万一吹き替え版を見る機会があったら(あるかな~?)
鉦鼓亭さんとのお話を思い出して鑑賞したいと思います☆


.
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Unknown (鉦鼓亭)
2015-08-08 09:13:27
 宵乃さん、こんにちは
 コメントありがとうございます

僕は「ロミオとジュリエット」が好きだからいいけど、
宵乃さんには向かないような・・・。(汗)
親父さん、1968年版は、娘の将来を考えての事だけど(キャピュレット家の強力な後ろ盾を得る政略も勿論有る)、こちらは、娘の事等ちっとも考えてない、自分と「家柄」のステータスの為、娘を金で売った、ですから。

あの肖像画、見知ってはいたけど、マジマジと見たのは初めてかも。(笑)
若い時から「後退」はしてないだろうし、頭使いすぎて「薄く」なってたとしても、役者なら多分カツラもあるし。(笑)

隠してないという事は気にしてなかったのかな?
〉♪ありのままに~♪
500年前にアデランスないし、皆、歳取れば自然現象。(笑~僕を含めて)
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Unknown (鉦鼓亭)
2015-08-08 09:50:59
miriさん、こんにちは
コメントありがとうございます

シェイクスピアに詳しい
〉お恥ずかしい、有名なのと他2,3本だけです。(汗)

ジュディ・デンチさんの女王陛下ですネ
〉一歩間違えるとギャグの世界でしたが、流石の貫禄でした。
出番は僅かですが、作品に重みと安定感を与えてたと思います。
彼女が居なかったら随分と軽い作品になったかもしれません。
(8分の出番でアカデミー賞の超効率的なお仕事(笑)、でも、上には上が居るようで、6分で貰った人も居るとか)

「まぼろしの市街戦」吹き替え版
〉僕も何十年、お目に掛からないし、オンエア有ったという話も聞いた事がないです。
望みがあるとすれば民放BSか、こっちならテレ東の「午後のロードショー」くらいでしょうね。
僕も観てみたいです。
返信する
こんにちは☆ (miri)
2015-08-08 11:38:21
>でも、上には上が居るようで、6分で貰った人も居るとか

「ネットワーク」のあの奥さん役の人ですよね~5分40秒、
すっごくうまかったけど、信じられないくらい短くって(笑)。

>「まぼろしの市街戦」吹き替え版
>僕も何十年、お目に掛からないし、オンエア有ったという話も聞いた事がないです。

えっ? もう何十年も見ていないのですか???
そしたら、鉦鼓亭さんのこの映画の吹き替え版の記事は、何十年も前の記憶で書かれたのですか?

アマゾンで売っているDVDには日本語版もあるって書いてありますが、それではいけないのでしょうか?
103分の作品ですが・・・ ↓

※日本語吹替音声計約96分収録。日本語吹替音声は現存するテレビ放送当時のものを収録しております。
そのため一部吹替の音源がない部分はオリジナル音声(字幕スーパー付)となっております。

これで良いなら、いつか機会もあるかもしれませんね~???


.
返信する
昨日はレス出来なくてゴメンナサイ (鉦鼓亭)
2015-08-08 13:29:00
miriさん、いらっしゃいませ

何十年、吹き替え版を見ていない
〉「TV版を、TVで見てない」(意味不明(笑))という意味です。
DVDの吹き替え版は何度か観ています。
でもあれは、完全版(フランス版)に吹き替えを付けてる為、所々、日本語からフランス語に変わって集中力を削がれちゃう。
ラストもフランス版だから、日本語の最後の台詞の後、3分くらい続くし。
(TVでオンエアしたのはアメリカ版に吹き替えを付けた)

只、「大陸横断超特急」ほど日本語と原語が行ったり来たりしないから、見られる事は見られると思います。
(「大陸横断超特急」は10分ちょっとでリタイアしました~あれは、皆が言うとおりTV版の方が圧倒的?に面白い)


返信する
こんばんは☆ (miri)
2015-08-15 23:23:38
昨年10月にBS3でオンエアしたのをBDに保存していたので、見ました☆

>「ロミオとジュリエット」を劇中劇にした上質のパロデ
ィと言うのが僕の感覚。

このお言葉以下、この記事には鉦鼓亭さんのお気持ちが反映されていて、
シェイクスピアにお詳しいだけではなく、愛していらっしゃる事が分かりましたよ~ホントに!

私は初見時とは全然違う感想を持ちました。
2009年には何も知らず・分からなかったので、今回はそれぞれの俳優さんへの想いがあるので・・・

ベン・アフレックさんとジェフリー・ラッシュさんが、めちゃうまかったです☆
コリン・ファースさんはこういう役柄が多くて、泣き笑い・・・申し訳ないけど笑えました。
ジュディ・デンチさんは、覚えていた通りで、女王になりきって、うまくおさめて下さいましたね~☆

主演の二人、特にシェイクスピアには魅力なかったです・・・
この俳優さん、その後も見ているようなのですが全然記憶に残らないヒトで(笑)。
女優さんはあちこちで見過ぎて、どれが良いとも思えなくて・・・
でも書かれているように、この作品の中ではどんどん良くなって「それが役者」って感じしました!

>一点だけ不満が有るとすれば、劇中、演じられる「ロミオとジュリエット」がイマイチだった事。

私はあんな感じで良かったと思います。 洗練されないのがリアルなのではないでしょうか?
もちろん台本は洗練されているのでしょうけど・・・。

最後に・・・「十二夜」も、2年くらい前に見てよく覚えていますが、それ以前は全く知らなかったので、
結局この「恋におちたシェイクスピア」という作品は初見時には上っ面しか見なかったのだと思います。
再見のチャンスを頂き、本当に有難うございました☆


.
返信する
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2015-08-16 13:17:26
 miriさん、こんにちは
 コメントありがとうございます!

愛していらっしゃる事が分かりましたよ~ホントに!
>えへへ(汗)、他はそれ程でもないのですが「ロミオとジュリエット」はね。
「恋に恋してた」頃が凝縮されてる感じなんですよ。(笑)

ジェフリー・ラッシュ>かなり美味しい役でしたね。
この作品に下手な人は殆ど居ないのですが、その中でもちゃんと存在感を見せてました。
ジュディ・デンチ>この人が、あの衣装と顔で漬物石の役をやらなかったら、かなり軽薄な作品になってしまった気がします。
今回は数多居る名優達の元締めみたいでしたが、あれだけ癖と実力のある人達を抑えつける感じを出すのは、生半可なコトではないでしょうね。

女優さんはあちこちで見過ぎて、どれが良いとも思えなくて・・・
>僕は「お初」だったので。(笑)
僕にとって、この作品の魅力は、この人の魅力に負う所が大きかったです。
(実生活見ると引いてしまう人ですが、女優として、この作品では「水を得た魚」のように生き生きして輝いていたと思います~男目線(笑))

 洗練されないのがリアルなのではないでしょうか?
>J・ファインズってロイヤル・シェイクスピア劇団に居た事もあるとか。
これは、僕の固定観念がイケナイのでしょう。
「洗練されてないのがリアル」>これは仰るとおりだと思います。

再見のチャンスを頂き、本当に有難うございました☆
>これは、お互いさまですから。
返信する

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