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マンガ、アニメ、特撮の感想ブログです。

物語三昧ラジオ~『アウトサイダー』

2011年05月22日 | 漫研ラジオ
終了しました。(↓)録画データです。ありがとうございました。

▼USTREAM:物語三昧ラジオ~『アウトサイダー』


今夜、23時からペトロニウスさんと、海燕さんとで、USTREAMでネットラジオをやります。お題は『アウトサイダー』です。基本、ペトロニウスさんと海燕さんでこの本の解説をします。僕は聞き役くらいの感じでしょうか。よろしくお願いします。

5月22日(土)23:00開始

【USTREAM URL】
http://www.ustream.tv/channel/manken



今週の一番『めだかボックス』~安心院なじみさんの求めるもの

2011年05月22日 | マンガ
【メタキャラクター】

【4月第4週:てんむす 第13話 誰がために】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10509.html#687
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



安心院「めだかちゃんには誰も勝てない理由、それはこの世が週刊少年ジャンプだとしたら、彼女は主人公だからだよ。……もちろん比喩だけどね。でもまー千年に一人くらいいるんだぜ。なんていうのかな、ああいう理屈じゃなく、勝者であると決めつけられた主人公体質の人間が。だから僕はむしろ白旗を上げに来たのさ。勝てない相手と喧嘩するほど僕は人間じゃないからね」

(『めだかボックス』第93話より)


■メタキャラクターとしての安心院さん

『めだかボックス』(原作・西尾維新、漫画・暁月あきら)の最後の敵(?)思しき、安心院なじみとの戦い(?)がはじまりました。敵(?)とか戦い(?)で後ろにハテナマークをつけているワケですが、肝心の安心院さんは敵となる事も戦う事も、早々に放棄を宣言しています。この、行状、どこかで見たような~~?というのが今回のお話。
『めだかボックス』は……支持率98パーセント、完全無欠の生徒会長・黒髪めだかちゃんが「何時何時どんな相談でも受ける!」という公約の完遂に奮闘する話…かな?完璧であるが故に色々至らない所があるめだかちゃんに対して、幼なじみの善吉くんや、その他学園の仲間たちが影に日向にめだかちゃんをサポートします。

今回の安心院さんの行動、なかなか興味深いです。僕がこれまでこのブログでしてきた『メタキャラクター』の話と言えると思います。「少年ジャンプ誌上で、少年ジャンプの文脈に乗ってしまえば、負けるのは必定である事が分かる。…じゃあ、どうするか?」という視点で安心院さんはその行動を規定しています。
「比喩だけどね」と韜晦していますが、“三次元現実上”では『めだかボックス』が週刊少年ジャンプ誌上の『物語』なのですから、それは“三次元事実”であって比喩表現などではないワケです。(`・ω・´)安心院さんが真に比喩のつもりだったら「期せずして真実を言い当ててる」という言い方もできますね。

さて、いずれにせよ。どうやら自分は絶対に勝てない、物語主人公のような怪物の反対勢力になってしまったようだ…と判断した時、安心院さんはどう処すべきなのか?ここらへんで、僕としては、同じく西尾維新先生の物語~戯言シリーズのキャラクター・西東天という奴を思い出さずにはいられなかったりします。

【メタキャラクター】戯言シリーズ~西東天の物語



「お前が正解だったか!前に会った時もまさかとは考えていたが――だが、まさか以上だ!この上ない!実に比類ないぞ!どうしたことだ、これは!零崎人識じゃあなく、お前の側か!あんな《なんでもないところ》で《たまたま》会った平凡そうなこの男が――あははははははははははは!木賀峰、貴様は本当に本当に本当に見る眼があるじゃないか!曲がりなりにもこの俺の続きに続き続けてきただけのことはある!いいぞ、俺は最後に貴様を尊敬した!貴様の前に俺は跪く!」

「ちょ……あの?」

「お前か!あはは、お前、お前って奴は一体なんなんだろうな!お前自身はまるで何ともない平凡なガキでありながら――周囲に渦巻くその大黒き混沌は一体どうしたことだ!異端と異形の坩堝、お前こそが地獄か!あはははははははあははははあははははははははははは!はははははははは!愉快愉快!面白い面白い!こんなに面白いのは久し振りだ!なんでこの世の中はこんなに面白いんだ、摩訶不思議!どこまで殺人的にイカれてんだ、この宇宙は!」

(文庫版『ヒトクイマジカル』P.634)

そうして西東天が『メタキャラクター』であると、そういう視点を持って、かつ行動するキャラクターであるという視点を確保すれば、西東天の言う“世界の終わり”という意味が明確になってくると思います。
西東天の言う“世界の終わり”とは何か?そしてなんで、いーちゃんと敵対すると、その目的が達成されるのか?それは「この世界がいーちゃんの物語として成り立っていて、いーちゃんがこの世界の主人公」だから、彼と関わると“世界の終わり”が見れると…そう、西東天は考えたのではないでしょうか?

詳しくは(↑)の記事を読んで欲しいですが、僕はこの狐面の怪人・西東天を「この世のどこかにいる“主人公”を探し出して、彼の物語を書き換えてしまう事によって“世界の終わり”を見ようとしたキャラ」と『読んで』います。しかし、そうして手を出してみたものの、主人公いーちゃんの主人公としての“補正の強さ”~物語のご都合のよさ~に閉口して、早々に投了してしまう。結果として、おかしな方向に流れたいーちゃんの物語だけが残ってしまった…そんな話かなあ?とか考えています。
まあ、そこらへん本当のトコロどうなのか?というのは分かりませんけどね(汗)こういう観方でも無いと西東天ってキャラクターはかなり意味が分からないキャラに思えるんですけど、どうなんでしょうね。単によく分からない奇行に走るキャラって捉え方でもいいんでしょうけどね。

この観方で観た時、安心院さんは西東天よりも、いろいろ考えている事が想像されますよね。そもそも、彼女が別の目的を持っていて、それを主人公(めだか)に邪魔されるのを嫌っているようです。……だから戦わない。つまり安心院さんは、西東天が主人公と殺り合ってみて出した結論を既に持っているワケです。
単純な戦略と言えば単純なんですが、彼女のメタ的なロジックは既に語った通りで、読者である『受け手』も多くの少年ジャンプのバトルに対して「最終的には主人公側が勝つんでしょ?」というような認識の了解があって、はじめて彼女の『面白さ』が観えてくると思います。
一京もの特殊能力を持ち、めだかや生徒会たちの長所~勝ちパターンを封じる能力/戦略を披露しながら、何故それを実行しないのか?「それでも主人公には勝てない!」という彼女の判断はメタキャラクターの視点でこそ理解し得ます。(※ただ、そうは言っても「理屈でなく勝者であると決められた体質の人間がいる」という『情報圧縮の顕現』を行って補完をしてもいますね)


■安心院さんの目的とは?



さてメタキャラクターの景観はこのくらいで、安心院さん自身の『読み』に入ろうと思いますが…。

ここまで話した所で「いや、そもそも安心院さんて、何がしたいキャラなの?何を求めているの?」って疑問は残るワケですよね。フラスコ計画の継続をしようとしている。しかし、その目的が以前、不知火じいさんが語ったような「天才を量産(安定供給する)」というようなものなら、それって彼女が長い時をかけて欲するものなのだろうか?「凡て平等に下らない」と言い放つ彼女が?一京もの特殊能力を持ち、メタキャラクターの視点さえも持ち得る彼女が?その上で「戦わない」と決断する彼女が、フラスコ計画のその額面通りのものを欲するものなのか?

今回のここらへんの疑問をkichiさんとツイッターで話したりしていて、それでふと気がついたのですが、安心院さんって「主人公になりたい人」なんじゃなかろうか?あるいは、そこを変じて「主人公を創造りたい人」でもいいかもしれません。
まさにメタキャラクターの視点の話なんですが、あれだけの過多の能力を持ち、おそらくは最強無敵であろうキャラクターに無いものって何か?仮に欲するものがあるとしたら何か?そして「めだかちゃんに有って安心院さんに無いもの」って何か?って考えるとちょっとこれしか思いつかないくらいの感じです。

どうやって?…というのは、kichiさんとちょっと話したりしていて、今、戦わない戦略をとってきた安心院さんに対する、めだかちゃんの回答は「後継者を育てる」というものでした。…めだか会長に匹敵する人材を本当に迎える事ができるか?という実現性は置いておくとして、ほんとに見事な正論返しなんですが、これ言ってしまうと物語が一人の主人公の話から「キャプテン」や「ジョジョの奇妙な冒険」のような系統の物語にシフトする事を意味する……意味できるかな?と思ったりもします。
実際に、物語がそう変わる必要はなく、メタ的にいえばそう構造が変わる事を示唆できれば、安心院さん的には目的達成かな?とか。なんでかって、主人公が継承的に変わって行く物語で“常に変わらないラスボス”が君臨し続けるなら、むしろそっちが主人公だろう、みたいな事が言えるかと思うんですよね。

タイムボカンシリーズで、それぞれの作品にそれぞれ主人公がいても、シリーズ通して観たときは三悪が主人公じゃね?みたいな?(`・ω・´)

あるいは今、後継者候補として残っている五人の子たちの全員が安心院さんの分身である事が判明していますよね。この子の誰かが後継者に指名された時点で、その子が新たな主人公になる~安心院さんが主人公になる……という考え方もできそうです。分身と宣言しつつも「安心院は安心院、あいつらはあいつら」と思わせるような描写はちらほら観る事ができます。

……まあ、これは、そういう展開になるだろうという展開予想というワケではないです。『メタキャラクター』という考え方を進めて、安心院なじみというキャラクターを『読んで』行くと、こういう景観になった…という話です。
ここでは言及しませんけど、そもそも安心院さんってめだかちゃんと球磨川くんのいる中学にも居たわけで、かつ、球磨川の証言~駆け引き(?)などにもブレがあって、かなり揺らぎのあるキャラに観える所もあるんですよね。あれだけの設定を持っている人ですから辻褄が合わない、説明がつかない、なんて事は生まれないと思いますが……。まあ、彼女のボスキャラとしてのポテンシャルは、ジャンプ誌上でも類を見ない程のものがあると思っていいるので、彼女がどこに辿り着くかとても『愉しみ』なんです。

『めだかボックス』球磨川禊のメタキャラクターとしてのメモ書き

今週の一番『めだかボックス』そっか。球磨川くんってカッコつけてたのかw

あとオマケで球磨川に対しての言及をすると、当初、僕は『メタキャラクター』の視点を球磨川くんに当てはめて観ていたのですが、これはもうほとんど安心院さんに移行してしまっていますね。いくらかメタ的な発言をしたりもするんですが、まあ、この時点ではかなり普通のギャグのようなメタさというか諧謔レベルのものに思われます。
…まあ僕の見立てが穿っているだけって指摘はあるんでしょうけどね(汗)でもねえ…西尾先生が非常にメタ的に観える作家である事はそうそう外れてはいないと思いますし、また球磨川くんの能力“却本作り”(ブックメーカー)って………名称だけ聞くとすごくメタキャラクターな能力のものに思えません?w少なくとも他者を自分と同じマイナスに巻き込む能力の名称には思えないんですよね。…穿ちをさらに穿つような話ですが、球磨川がメタキャラクターであった(今もメタキャラクターかもしれないけど)事の名残かなあ…などと妄想したりしています。(´・ω・`)

ちょっと繰り返しになりますけど安心院さんと球磨川くんの間で何があったかは、かなり謎というか、表に出ている証言をまともに信用していいかどうかにも疑いがかかる状態に思えます。こっちをわざわざ事細かに語る事はないようにも思えますが……まあ、ちょっと興味深いですね。いろいろ考えてみたい所です。


めだかボックス 10 (ジャンプコミックス)
西尾 維新
集英社