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国立大学職員日記
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■「経験年数調整」について
 土台となる「1級25号俸」に「職歴」に応じた調整を行うのが「経験年数調整」です。「(狭義の)初任給」と「修学年数調整」に比べると説明する内容が多いため、この説明に一章を割きます。
 「経験年数調整」によって加えられる号俸はいくつかのステップを経て決定されます。「計算」「換算」「調整」の3つのステップがそれで、処理もこの順番どおりにする必要があります。以下、これら3つを順に説明していきます。

(「計算」について)
 「計算」とは処理の下準備として各職歴の期間を数え上げる作業のことです。「換算」や「調整」で正確な値を出すためにも、まずは対象となる職歴の処理前の数値を正確に、そして誰が処理をしても同じ値が出るように数えなければいけません。そのためのルールがいくつか定められており、これらにそって処理をするのが「計算」と呼ばれるステップなのです。
 「計算」は大体次の3つのルールに沿って行われます。言葉で説明するよりも図で見たほうが分かりやすいと思いますので下図をご覧ください。



 「計算」は「月単位でざっくりと数え上げる」というイメージを持ってもらうと理解がしやすいと思います。場合によっては採用される日付や退職する日付のたった数日の違いで一月から二月の違いが出てしまいますが、これくらいざっくりとしたルールにしないと、それこそ応募する職員の数だけ存在する全て異なる経歴を処理できないのです。
 

(「換算」について)
 「計算」においてその人の経歴を月数で算出しました。しかし単純に月数を出しただけでは号俸に反映させることができません。会社員と空白の期間がともに1年ずつある場合に、どちらも「12月」として処理すると、会社に勤めていた経歴と無職の経歴が同じ評価になり、不公平となるからです。
 このあたりの調整を行うのが「換算」と呼ばれる処理です。具体的には「計算」において算出した月数に、その職歴に応じて「換算率」と呼ばれる数字を掛け合わせる処理のことを言います。こうすることで「より有益と考えられる経歴」が他に比べて多く号俸に反映されることとなるのです。
 「経歴」と「換算率」について、まずは下記の表をご覧ください。



 これは人事院規則9-8に定められている「経験年数換算表」で、左にある経歴の月数に右にある換算率を掛ける仕組みになっています。
 とは言え、はっきり言ってこのままではかなり訳が分からないと思います。そこで、かなり乱暴ではあるのですが、理解をしやすくするために下記のとおりに図を簡略化してみました。本当にもの凄く乱暴に簡略していますし、実際の事務処理などは各国立大学の担当部署が決定しますので、あまり真に受けない程度に参考にしてください。



 「換算率」は最高でも「100/100」、つまり「1.0」ですので、「換算」の処理によっても、換算される月数が実際の月数以上になることはありません。つまり減らされることはあっても増やされることはない訳です。
 やはりこれも乱暴な簡略ですが、「公務員等は10割、民間は8割、無職は2.5割と換算される」と理解するくらいでよいと思います。民間で10割換算される例は多くありません。具体的な判断基準は各国立大学によって異なるので何とも言えませんが、例えば「電気施設関係の技術職員を採用する場合で、その職員が電気会社に技術者として勤めていたような期間」などです。「民間でも事務をやっていた」くらいでは10割換算は難しいと思いますが、このあたりの判断は各国立大学や部署の判断に任せることとします。
 「経歴」の中には「在学期間」が存在します。「修学年数調整」でも少し触れましたが、「在学期間」は必ずしも「修学年数調整」によって処理する必要はありません。「修学年数調整」は人事院規則の上では「学歴免許等の資格による号俸の調整」と呼称されていて、これを行うのは基準学歴や上位資格の持っている場合に、それが「職務に直接有用な知識又は技術を修得したと認めるもの」である場合に限られる、というのが建前だからです。とは言え、昨今は大学院修了者の割合も増えてきましたし、ジェネラリスト志向が強い公務員や国立大学事務職員においては多くの場合、在学期間は「修学年数調整」で処理を行っているようです。経験年数で在学期間を処理するのは、例えば理系学部出身で理系の民間企業の経歴を持っている人が「趣味で2年間大学院に通って文学を勉強していました」などという場合が挙げられると思います。最終的にはこのあたりも各機関や部署が判断することとなるので、この点ご注意ください。
 また最後に、「換算」後の月数の、特にその端数の扱いについて、「計算」ルールのようなものが存在します。「換算」全体のイメージと併せて、下記を参照ください。



(「調整」について)
 「経験年数調整」の最後のステップが「調整」と呼ばれるもので、ここでやっと具体的な「号俸数」が決定します。
 「修学年数調整」でも述べたように、初任給決定や昇給における事務処理では「1年(12月)」に対して「4号俸」を与えるのが基本的なルールです。「調整」とは要するに、「換算」で算出された月数にこのルールを当てはめて号俸を決定する処理のことを指します。これだけならひどく簡単な処理なのですが、少しややこしいルールが存在します。
 まず「1年(12月)=4号俸」のルールが適用されるのは「換算後の月数で数えて5年(60月)」までであり、それ以降では「1.5年(18月)=4号俸」、つまり「4号俸」を当てるために必要な月数が「12月」から「18月」と、1.5倍に増えます。加えてこのルール変更にも例外があり、「100/100」で換算した部分については5年(60月)を超えても「1年(12月)=4号俸」のルールが適用されます。ただし在籍期間は除かれるという例外の例外付きです。
 文章で書くと分かりにくいので、詳しくは下の図を見てください。また「調整」の処理はルールだけ抜き出して眺めても分かりにくいので、詳しくはさらに後に示す、「経験年数調整」の事例集を通して理解してください。


 
 個人的に、「調整」は「換算」などに比べると制度趣旨が分かりにくい気がします。その制度趣旨ですが、調べてみるとどうも「中途採用者の給与を在職者よりも低くするためのもの」として存在しているようです。その証拠に、かつて「調整」においては全期間を18月調整で処理していました。これが昭和45年に「5年までは15月で調整」、平成6年に「5年までは12月」となり、現在の形となったのが平成18年です。つまり流れとしては制度趣旨を弱める方向に進んでおり、このような流れの原因には民間から優秀な人材を獲得するといった目的があるようです。

総論3へ続く


コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
Unknown (大畠)
2012-02-01 10:30:36
こんにちは。

初任給についてご教示願えないかと思いコメントさせていただきました。

私は公務員から公務員への転職を考えております。

履歴として
平成15年高校卒業
平成15年大学入学
平成20年大学中退
平成20年公務員採用

という履歴なのですが、今年大学に復学し、9月に卒業、そして今年度の公務員試験受験を考えております。

私の場合、下位区分の適用+修学年数調整+五年の経験年数という考え方でよいのでしょうか?

修学年数調整ではなく経験年数での処理だとすると60月を超える分不利になってしまうとも考えられるのですが…

どうかご教示ください。よろしくお願いいたします。
 
 
 
Unknown (大畠)
2012-02-01 13:03:55
追記

大学への復学,卒業は公務員をしながら行う予定です。説明不足ですみません。
 
 
 
Re:大畠さん (管理人)
2012-02-01 21:14:41
初任給計算については自分も久々に思い出すのでかなり自信がありませんが、恐らく大畠さんの考え方で基本は良いと思います。一点注意が必要なのは、「修学年数調整」では4年制大学では最大で4年分(つまり240月分)しかカウントされず、残りはすべて「経験年数」に換算される、ということです。また、最初の大学在籍期間を「修学年数調整」でカウントするか「経験年数」でカウントするかも、判断するのは採用先機関のため、現段階では100%修学年数調整がある、とも言い切れません(恐らく大丈夫だとは思いますが)。

あと書いていて思ったのですが、現在公務員で公務員に在籍しながら大学を卒業し、もしそのまま空白期間を作らずに別の公務員になるのであれば、これは辞めたときの給与がそのまま引き継がれることになるのではないでしょうか?あるいは「特別昇給」の分だけを排除した給与に下がるかもしれませんが、一度公務員になったときに行われた初任給計算は既に下位区分(高卒)で計算されているはずなので、これを元に経験年数を重ねたいまの給与が、直接次の公務員になる時の答えになるような気がします。

ちょっと最近初任給計算の業務から離れているので、的外れなことを書いている可能性もあります。現在も公務員であればもっとも確実な方法は、大畠さんのいる機関の総務部署に確認をとってみることなので、出来ればそういう現役の方にもたずねてみてください。
 
 
 
Unknown (大畠)
2012-02-01 21:47:31
ご回答ありがとうございます!

私の場合国家公務員Ⅱ種採用だったため普通の1級25号俸をいただいてました。転職すると不利になるのはこのブログで勉強させてもらって初めて知りました。

ちなみにもう2年公務員やりながら大学院にも通い修了したうえで転職した場合、下位区分+修学年数調整6年+経験年数7年いただけたりするんでしょうか?

質問ばかりですみません、もしご存じであればご教示ください。
 
 
 
Re:大畠さん (管理人)
2012-02-01 22:57:38
そこまで複雑になるとさすがにどうなるかちょっと分からないです。しかし1点だけ、修学年数と経験年数が重複してカウントされることだけはあり得ませんので、「修学年数調整6年+経験年数7年」は無いと思います。

あとこんなエントリーを書いておいてなんですが、初任給計算って結構いい加減なところがあると思います(処理が複雑すぎて逆に本当にその処理が正しいのかどうかよく分からない)。ので、あまり転職後の給与に関係なく、進みたい方を向いて進みたいように歩かれることをお勧めします。
 
 
 
Unknown (大畠)
2012-02-01 23:16:35
アドバイス参考にさせていただきます。

このブログは大変勉強になるので、これからも拝見させていただきます。ありがとうございます。
 
 
 
ご教示下さい (タカ)
2012-08-26 12:28:26
最近、転職することになりましてこのサイトを参考にさせて頂いております。

当方は現在地方公務員をしておりますが、同じ地方公務員(他県)へ転職することとなりました。
そこで初任給の換算なのですが、以下の通りと考えております。 管理人様のアドバイスがあれば教えていただけると助かります。

1年目 :短大卒 高卒区分採用
12年目 :退職(12年目満了時)
13年目 :別の自治体へ転職(大卒区分採用)

大卒ではありませんが、大卒程度試験をパスして採用となる予定です。

短大卒後12年の経験年数がありますが、大卒区分採用の場合は修学年数調整のため、マイナス2年となる。 その場合10年分を換算対象とする。

地方公務員→地方公務員のため、希望的観測で100%換算の場合、10年×4号棒=40号棒

転職先大卒区分の初任給が1-29であるため、
29+40で 1-69 が初任給となるので
しょうか?

ご指摘等があればコメントをいただけると助かりますm(_ _) m


 
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