国立大学職員日記
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国立大学職員日記:記事一覧




■はじめに
 平成17年の人事院勧告により実施された平成18年から平成22年にかけての国家公務員給与構造改革、特にその中の昇給抑制と、これの回復として実施される号俸回復、その平成23年4月1日実施分と、平成24年4月1日から実施される予定である分、またこれらと並行して行われる「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律(平成二十四年法律第二号)」に基づく平成24年度と平成25年度の給与削減と、ここ数年の国家公務員の基本給部分はなかなかに激しい動きを見せています。
 本エントリーはそのような状況の平成24年4月1日時点の情報を、特に「号俸が回復される若年層」に注目して整理してみようとするものです。とは言え若年層に限ったとしても職員ごとに千差万別の基本給部分を一括して整理することは容易ではないため、作成した内容や図はかなりモデル化してあります。この点、悪しからずご容赦ください。
 また制度の全体像だけでは各職員の具体的な給与状況のイメージがつかみにくいかも知れないと思ったので、これを補うべく、今回は自分自身の基本給を元にしてこれまでの経緯とこれから予想される推移もまとめてみました。
 法案も成立し4月1日から実際に始まる給与削減の衝撃はなかなか大きいですが、地震と違って事前に起こることが分かっているだけまだマシというもんで、本エントリーがそんな「転ばぬ先の杖」として役に立てば幸いです。


■平成24年4月1日時点における昇給抑制された号俸の回復状況
 本題に入る前に前提条件となるいくつかの点を簡単におさらいしておきます。また以下に関することは他のエントリーでも記していますので、よろしければ随時参照ください(参照リンク先は章の末部に記します)。

1.「昇給抑制」について
 昇給は通常「4号俸(C区分)」上昇するものだが、平成19年・平成20年・平成21年・平成22年の各1月1日における合計4回の昇給のみ、「1号俸」分の昇給が抑制されて「3号俸」であった。また平成19年1月1日の昇給は給与体系が平成18年4月1日より変わった関係上、昇給号俸の対象となる期間が通常のものより少なく、昇給が抑制されなければ「3号俸」(4号俸×(9ヶ月/12ヶ月)=3号俸)、抑制されれば「2号俸」(4号俸×(9ヶ月/12ヶ月)-1)であった。
 以上のことから、平成18年4月1日より勤務していた職員は、原則として全員「4号俸」分の昇給が本来より少ない状態となっている。

2.平成23年4月1日の号俸調整について
 平成23年4月1日において、平成22年抑制分の号俸調整がなされた。回復された号俸は「1号俸」であり、「43歳未満の職員」且つ「平成22年1月1日に抑制を受けた職員(初任給計算で抑制が考慮された場合も含む。以下同様)」全員に適応された。
 この時点で当時43歳未満(この平成24年4月1日時点では44歳未満)だった職員の回復されていない号俸は「3号俸」、43歳以上の職員は依然として「4号俸」が回復されていない状態となっている。

3.平成24年4月1日の号俸調整について
 平成24年4月1日において、平成19年から平成21年抑制分の号俸調整がされる予定。回復される号俸は(1)「30歳未満」且つ「平成19年から平成21年の抑制3回の内、2回以上抑制を受けた職員」は「2号俸」、(2)「36歳未満30歳以上」且つ「平成19年から平成21年の抑制3回の内、少なくとも1回は抑制を受けた職員」は「1号俸」、(3)「30歳未満」且つ「平成19年から平成21年の抑制3回の内、1回だけ抑制を受けた職員」は「1号俸」。
 平成24年4月1日時点では「44歳以上」は依然として「4号俸」、「44歳未満36歳以上」は「3号俸」、「36歳未満30歳以上」は「2号俸」、「30歳未満28歳以上」は「1号俸」だけ、抑制された分が回復されていない(下図の「回復されていない号俸」及び「抑制された号俸」の部分)。なお「28歳未満」は平成24年4月1日を持って抑制された全ての号俸が回復したことになる。

4.平成25年4月1日及び平成26年4月1日の号俸調整について
 「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律(平成二十四年法律第二号)」において上記2回においても号俸調整を行うことが決定しているが、具体的な号俸数・対象年齢は人事院規則により定めることとされており、現時点では不明。

【下図について】
 この図は「各年度において大学4卒後すぐに採用された、初年度で23歳になる職員(要するに留年・浪人等することなく22歳の時に就職した職員)」の、平成24年4月1日時点における抑制号俸の回復状況を示したものです。
 図中の数字は「採用された時を「0号俸」として、その後昇給毎に「4号俸」加えられると仮定した場合の、各時点における積算号俸数」を表しています。当然、いわゆる「特別昇給」である「6号昇給(B区分昇給)」「8号昇給(A区分昇給)」は仮定していません。また4月1日に採用された場合は初年度の期間率が4分の3になるため、号俸も初年度のみ「3号俸」です。
 このような昇給制度は平成18年4月1日より実施されたものですが、図ではこのような制度が平成18年4月1日以前にもあったものと仮定して作成してます。
 留年・浪人・空白期間などで生まれた年度と採用年月日が図のとおりにならない場合は「年齢」の行の数字に、抑制を受けた回数を考慮して自分の平成24年4月1日時点における「抑制された号俸」を計算しなおしてみてください。





 図をみて分かるとおり、平成24年4月1日時点で44歳の職員を区切りとして、若年層に手厚く号俸の回復を行っているのが分かります。この点について、号俸の回復は必ずしも若年層に限定することなく、前年齢層に薄く広く回復させても別に問題は無いのですが、平成22年人事院勧告の「民間よりも給与水準が下回っている傾向のみられる若年・中堅層を中心に、これまで抑制されてきた昇給の回復に充てることとする」、平成23年人事院勧告の「世代間の給与配分の適正化の観点から、昨年と同様、若年・中堅層を中心に、給与構造改革期間中に抑制されてきた昇給の回復に充てることとする」の文言に基づき、回復は若年層・中堅層が優先して行われることとなっています。
 平成25年以降の回復がどの年齢までを対象にするかが大きな関心事ですが、現時点ではよく分かりません。ただ、平成23年人事院勧告で示された号俸回復のイメージ図(最終頁)から、今回の特例措置による経過措置延長による原資の減少分(この過去エントリーを参照)を考慮して、最終的に30台前半あたりまでが全回復(4号俸回復)し、30台後半からは40台前半にかけて段階的に回復数が3号俸から0号俸と減ってゆくのではないかと個人的ににらんでいます。

【過去に記したエントリー】
・平成23年人事院勧告について(号俸復活の当初案について)
 → 平成23年人事院勧告について
・特例法案による号俸復活の変更について
 → 国家公務員給与削減法案:昇給復活と経過措置廃止に関する最終変更点について
・平成23年4月1日における号俸回復について
 → 平成23年4月1日における昇給について


■具体的な回復状況(自分の場合)
 号俸回復の全体像はともかくとして、「具体的にどのくらいの金額が増えるのか」を気にかける人もいるでしょう。実際に増える基本給金額については「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律(平成二十四年法律第二号)」の中にある改定後の俸給表から確認することが出来ます(現在自分が受けている級号俸の1号俸か2号俸上の基本給金額です)。
 またより詳しいイメージとして、今回は自分自身の「これまで受けてきた基本給」と「これから受ける基本給」の図を下のとおりに作成してみました。イメージに関する誤解を防ぐために、昇給などの時間軸の横軸と、基本給の金額の縦軸は最小単位を揃えてあります。
 「これから受ける基本給」について、特に平成25年以降の回復状況はまだ未定ですが、恐らく平成25年4月1日時点で29歳である自分はさらに1号俸の回復があるだろうと仮定して図を作成しました。また特例法案による削減は本来、今回の号俸回復とは別のものですが、これについて号俸回復との「相殺効果」もあるため、一緒に記します。なお特例法案は2年の時限立法のため、平成26年4月1日で終了させています。





 自分の場合は前回平成24年1月1日の昇給が「6号昇給(B区分昇給)」であり、さらに今回の号俸回復が「2号俸」ということもあって、幸いにも平成24年4月1日における基本給は1年前の平成23年4月1日における基本給を4,000円ほど上回っています。さらに次回平成25年1月1日における昇給を「4号俸昇給(C区分昇給)」と仮定しても、今回の特例法案による削減分はたった9ヶ月で回復することになります(もちろん、「得べかりし利益」分は損をしていますが)。
 特例法案によって実際に「受け取り損ねる金額」は前回のエントリーで記したとおり、自分の場合は約40万円ほどなんですが、こういう図にしてみると今回の特例法案によって「かつて受けていた基本給よりもその額が下がる期間」がたった9ヶ月というのはかなり意外です。正直言って「この程度なら大したこと無いな」ってレベルです。
 もっとも自分の場合は(1)特例法案によって削減される基本給が「4.77%」と最も少ない群であること、(2)2号俸の回復を受ける職員であること、(3)前回の昇給時に6号俸昇給していることと、すさまじく幸運が重なってこの状況であることには注意が必要です。これが年配の教授の場合だと(1)特例法案によって「9.77%」基本給が下がる、(2)号俸の回復は無い、(3)高年齢のため前回の昇給は2号俸しか上がっていないと、自分とは真逆の3重苦になります。こうやって書いてみると、確かに「国家公務員給与削減法案:昇給復活と経過措置廃止に関する最終変更点について」のエントリーで述べられていたように、高年齢層の経過措置を延長して今回の削減の影響を緩和させる、という提案もあながち的外れではないように思えてきます。このあたりは自分の早とちりを反省しないといけませんね。


■おわりに
 という訳で平成24年4月1日における号俸回復状況の整理と、この特例法案削減部分との関連についてでした。
 特例法案は現時点では2年の時限立法となっていますが、国会ではこれを恒久的に削減しようとする動きもあるようで、国会議員どもは他人の給与を下げる前にてめぇの給与と人数を引き下げて無駄な出費を節約したらどうなn今後しばらくはその動向に目が離せません。
 また最近は国家公務員の新規採用が大幅に減らされるかも知れなかったりと、公務員の人事関係についてはシビアな状況が続いています。こういう状況を考慮し、個人的には仕事の効率化を図って人件費削減につなげたいと思っているのですが、よく考えたら自分の大学では各部局や部署の人数配分はその事務室が所管する教員の人数とかによって決定されるので、個々の職員が業務を効率化して仕事量を減らしてもそれで人数調整がなされることはなく、あんまり意味がないなと分かってガックリきています。こんな状況で業務を効率化しても何の意味があるのか良く分かりませんが、それでも残業代が減ればまだ人件費節約の役には立つかなと思いつつ、残業代が減れば年収も減るというジレンマを感じざるを得ません。
 個人的には新規採用抑制なんかしなくても、用途のよく分からない項目ばっかり書いてある事務処理用の申請用紙の書式を見直すだけで節約できる部分はたくさんあると思うんですが、ここらへんどうにかならんもんですかねぇ。自分は国立大学のプロパー職員だから出世の程はたかが知れてますが、上に行って組織を変えたいと思うのはこういう小さな非合理が無数に放置されているのを見る時だったりします。

コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
恐れいりました。 (名前はリンゴ)
2012-03-24 22:14:14
重要な情報ありがとうございます。さらに詳細をお教えしたいので、下記メールにアドレス(直接にあなた様とご連絡の取れるアドレス)をお送りください。信用してください。

まったく恐れ入りました。働いて14年になりますが、初任給から現在までの私の給与の詳細(残業代含め)をお送りします。エクセルデータですべて管理して持ってます。

この世の中、どうもおかしな方向にいっていると思います。若い方々をおおいに応援いたします。

yyyoshimiyaringo@excite.co.jp

よろしくお願いします。


 
 
 
昇給回復について (hiroe)
2012-05-17 21:40:09
昨日コメントしたのですが、うまく表示されませんでした。

よって今日は簡単に。

ひとつ教えてください。今回の人勧で30歳と36歳を境として号俸の回復に差が生じると思います。よって就職同期生の間でも大学現役合格者と一浪の者で差が生じると思うのですが、管理人さんの知る範囲で国立大学職員や国家公務員の職場で「同期なのに何で号俸に差があるんだ!?」と不満は出ないのでしょうか。

勤務成績による特別昇給が日常的に行われているから同期で差が出ることは皆さん普通と思っているのか、それとも今回のような年齢設定がされても同期で差が出ないような特別処置がなされているのか?

情報をお持ちでしたら教えてください。よろしくお願いします。

ちなみに私は公金を補助金として受ける団体職員(独法ではありませんが)で、待遇は国家公務員に準拠しております。

 
 
 
Re:hiroe (管理人)
2012-05-18 07:37:53
今のところそういう不満は聞かないですね。というか、昇給復活措置なんて職員の99%は実施されるまで存在も知らないし、実施されたところでその内容も大して調べないと思います。

年齢による区別は今回の昇給号俸の復活がそもそも「民間に比べ給与水準が低くなっている若年層を民間レベルに近づけるため」という目的があるからだと思います。「若年層」なので、年齢で区別する訳ですね。「同期」という言い方はよく使いますが、給与管理上では「同期」とは要するに「勤続年数の起算点となる採用年月日が同じ職員」のことかと思います。給与の処理をするにあたり、これらの職員間の不公平が生じないように対処する、というのは、実は無いわけじゃ無い(例えば初任給計算で「その他、他の職員に比べて給与に著しい差が生じる場合等はこれを修正する」みたいな処理方法が存在するはずです)ですが、今回は適応されなかったようです。人によっては「同期(同じ勤続年数)なのに差がつくのはおかしい!」となるかも知れませんが、同期(勤続年数)を基準にすると今度は「同じ年齢なのに差がつくのはおかしい!」という言い分も出てくるわけです。どっちが正しいのかは分かりませんが、一般的に「年齢」は非常に客観的な指標とされ、定年制なんかも根本には「時間だけは誰に対しても同じだけ与えられたでしょ?」という考え方があるようで、これに比べて同期とか、例えば現役合格・一浪などは「誰に対しても同じ勉強環境・就活環境が与えられただろうか?」あるいは「全員がした努力は全て同じくらいだっただろうか?」という判断を客観的に行うのが困難で、今回のような処理の指標とするには難しいのだと思います。

個人的には年齢で区別でいいと思います。もっとも、自分なんかは年齢による処理方法で最も恩恵を受けるような立場にあるので、バイアスは最大限に掛かっている訳ですが。
 
 
 
昇給回復についてⅡ (hiroe)
2012-05-18 23:14:34
早速のコメントありがとうございました。

私の組織には一浪・二浪のほかにも中途採用時の俸給額が低く、俸給額は若年層なのに年齢的に今回の回復措置で損していたり、昇給抑制時に在籍していなかったために(採用時初任給は抑制された号俸を基準に定められた)今回昇給できなかったりといった、少し「かわいそうな」例があったので、国家公務員ではもしかして裏技があるのかもと思いコメントしました。省庁ごとにいろんな手当てがある、という噂も聞いたことがあります・・・。昔の話でしょうか?

確かにいろいろな条件をすべてクリアできる基準を作るのは不可能ですね。そういう意味では年齢で区切るのが最も客観的かもしれません。

人勧について調べていたらこのサイトに出会いました。とてもわかりやすく、大いに参考になりました。また管理人さんのクールなようなホットなような考え方や姿勢に魅力を感じます。これからも読ませていただきます。
 
 
 
Re:hiroeさん(前回「さん」付け忘れてました。失礼いたしました) (管理人)
2012-05-19 21:22:51
中途採用で級号俸が低くなるのは、初任給決定の性質上、現状では避けられないものです(前のコメントに書いてある「他の職員に比べて」云々の救済方法は特例として存在はしますが)。しかし、国家公務員や国立大学法人等に民間経験者などを優遇して内向きの志向を修正しようというのであれば、この「中途採用である以上、既採用者より給与が高くならない」現象は修正の必要があると個人的には思っています。

ただ今回の調整はあくまで「昇給抑制」の影響があった者のうちで人事院が決めた者の範囲内で、影響を受けた分を上限にした「復活」のため、今回はこれを利用して上記問題の取っ掛かりにするのはちょっと困難そうですね。

>クールなようなホットなような

自分で言うのもなんですが、自分は「凄まじく気まぐれ」でしかも「物忘れが激しい」です。そして本ブログのエントリーやコメントもその時の気分に応じて書くことが多いので、やたら書いている内容が不安定になるのは出来れば見逃してやってください。
 
 
 
Unknown (fendi outlet)
2016-07-21 15:03:05
個人的には年齢で区別でいいと思います。もっとも、自分なんかは年齢による処理方法で最も恩恵を受けるような立場にあるので、バイアスは最大限に掛かっている訳ですが。
 
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