国立大学職員日記
メインコンテンツ
国立大学職員日記:記事一覧




■はじめに
 今年も12月ボーナスの季節がやってまいりました。国家公務員・国立大学法人職員のボーナスである「期末手当」と「勤勉手当」については過去のエントリーで何度も触れてきましたので、今回もそれらを利用して平成23年度版のアップデート情報をお知らせいたします。そして今回は新たに、期末手当・勤勉手当の中でまだ触れていなかった「役職段階別加算」と「管理職加算」に関しての説明も行います。
 「行います」とは言っても、多くの人間ににとっては「?」であろうこの話題。この加算を受けてる本人ですらも「そんなものあったの?」とか思ってそうなのですが、一応これを知らずに期末手当と勤勉手当は計算はできないくらい重要なものなのです。
 という訳で「まぁそういうもんなんだ」くらいに考えて、管理人が年休取ってまでこさえた本エントリーをご覧ください。


■平成23年度12月支給をめぐる状況について
 まずは前年度からの更新状況に関する整理です。
 今年度の期末・勤勉手当を考えるにあたって最も懸念されるのは3月11日の大震災の影響ですが、「平成23年9月30日に出された人事院勧告」ではこれを「期末・勤勉手当(ボーナス)は、岩手県、宮城県及び福島県について調査していない中で、国家公務員の特別給の改定を行うべきと判断するに至らず、改定を見送り」と判断し、実質的な引下げは行いませんでした。また人事院勧告の他にも期末・勤勉手当を大幅に引き下げると予想される「国家公務員給与削減法案」が国会に提出されていますが、これについてもまだ未成立であるため、今回の支給への影響は今のところありません。よって、現段階では平成23年度の期末・勤勉手当は平成22年度と全く同じ「支給月数」となっています。
 以上のとおり「支給月数」は同じですが、支給方法の内容には前年度からの変化が見られる点、やや注意が必要です。変更点については後述しますが、内容としては「前年度12月の支給割合等からの若干の引き上げ」と表現できます。「支給月数」が同じなのに支給割合等が引き上げられるのもおかしか感じがしますが、これは平成22年度の人事院勧告の内容とタイミングによるものです。
 「平成22年8月人事院勧告」では前年度(つまり平成21年度)からの引下げが勧告され、またそれが12月の期末・勤勉手当に合わせて実際に施行されました。これは本来6月と12月の2回で引き下げるものを1回で強引に引き下げるものであったため、平成22年12月の期末・勤勉手当の支給割合等は本来のものよりもかなり低い値になりました。
 このような中で平成23年度に入ったのですが、今度は逆に1回分の支給割合等を引き上げなければ予定されている支給月数の水準を大幅に下回ってしまう状況となりました。このために、平成23年度においては前年度と「支給月数」は同じなのに支給割合等だけが引き上げられる結果となったのです。
 ちなみにこの引き上げは、「期末手当」は「平成22年法律第53号」、「勤勉手当」は「人事院規則9-40-39」で施行されました。人事院規則の方は支給毎にいちいちその勤勉率を変更していますが、期末手当の方は平成22年に成立させた法律で「平成22年12月」と「平成23年度以降」の両方の支給割合を定め、施行日を別にすることでこれらが混合しないようにしています。時系列で見た際に期末手当と勤勉手当の施行根拠法令の数に違いがあるのはこのような事情によるものなので、念のため書いておきます。

【参考ページ】
平成22年8月人事院勧告
平成23年人事院勧告
一般職の職員の給与に関する法律(特に第十九条の四)
人事院規則九―四〇(期末手当及び勤勉手当)
総務省「新規制定・改正法令・告示 法律」のページ
 → 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律要綱(平成22年法律第53号)
人事院「新たに公布された人事院規則の概要」のページ
 → 人事院規則9-40-39(新旧対照表)
















■期末手当と勤勉手当の支給方法 + 「役職段階別加算」と「管理職加算」について
 以上、今年度支給状況の整理が終わったところで、今年度の期末・勤勉手当の金額算定方法と、「役職段階別加算」と「管理職加算」について説明します。まず金額算定方法の全体像として、次の図をご覧ください。







 加算以外の部分については以前のエントリーでも説明していますし、またそれを見ていなくても図をみればほぼ全容は理解できるかと思いますので、今回は説明を省略いたします。以下、加算部分について説明をいたします。

(役職段階別加算について)
 図を見て分かるとおり、役職段階別加算とは期末・勤勉手当の金額を算定する際に支給基礎部分に加算される、基本給等の合計額に対象者の級に応じた割合を掛けた金額と言い表すことが出来ます。図では「課長」や「教授」などの「役職」を含めていますが、これはあくまで自分が勝手に設けた目安であり、規定上は対象者の「級」だけに応じて加算されるのが役職段階別加算です(そういう意味では「級別加算」と表現した方が正確なのかもしれません)。
 役職段階別加算で最も重要な点はどこか。それはこの加算が「対象者の級に応じている」という点です。
 一見「級(あるいは役職)」に応じて支給額を増やすことはそこまで変わったことではないように思え、また実際にも民間では役職が高くなるごとにボーナスの支給額も上昇するのでこの点は全く正当なのですが、国家公務員・国立大学職員の期末・勤勉手当の仕組みそのものを考える上では「級に応じた加算」というのはやや特殊な処理にあたります。なぜ「級に応じた加算」が特殊なのか。それは加算部分を除いた期末・勤勉手当の算定方法に理由があります。
 図のとおり、加算部分を除いて期末・勤勉手当を算定する場合には、全員共通の「支給割合」や「期間率」を除けば、各職員の金額に影響するものは「基本給+諸手当」しかありません。これはつまり、「課長」だろうが「係長」だろうが、また「教授」だろうが「准教授」だろうが、「基礎部分の金額が同じであれば手当額は同じになる」ということを示しており、またそのように支給するのが本来の国家公務員・国立大学職員の期末・勤勉手当だったのです。
 これが当初予定されていた手当のあり方とは言え、先にも書いたとおりこのような状況は民間等における「役職段階の上位の者ほど手厚い支給割合の配分となっている実態」とは一致せず、民間の給与水準に応じて給与を支給することとされている国家公務員・国立大学法人のあり方とは整合的ではありません。そこでこのような問題の解消のために設けられたのが「役職段階別加算」であり、この加算によって基礎部分の金額が同じでも各職員の「級」に応じて支給金額に違いが出るようにしたのです。
 なお、なぜ「役職そのもの」ではなく「級」に応じているかという点について、参考文献には次のように書いてあります。

加算の対象となる職員および割合を職務の級によって区分しているのは、民間における役職別の差を公務に置き直すに当たって、公務の場合は本省庁、管区機関、地方出先機関などの各組織段階にわたってさまざまな職務の段階が混在していることから、これらの官職の職務と責任の共通の尺度となっている職務の級を基準とすることが適当とされることによる。
森園幸男・大村厚至(2009)『公務員給与法精義<第4次全訂版>』582頁 学陽書房


(教育職の「別に定める」職員について)
 国立大学法人の「教授」に該当する教育職4級と「准教授」に該当する教育職3級には通常の加算割合の他に「別に定める」として「+5%」が付くものがあります。なぜこのような措置がされているのか、その理由を記した文書は確認できませんでしたが、恐らく教育職俸給表の級の区分が他の俸給表に比べて少ないが、それでも同じ級内で職務内容によって差別化を図る必要があったために、このような規定が設けられたのだと思います。
 具体的にどのような教員がこれに該当するのかという点について、国家公務員では「期末手当及び勤勉手当の支給について(給実甲第220号)」がこれを定めていますが、内容を見ても「気象大学校の教頭」「海上保安大学校の教授」「その他事務総長が定める職員」となっており、いまいちピンと来ません。また国立大学においては各大学毎にこれを定めているのですが、今回はその資料を見つけることが出来なかったため、詳細についてはほぼ不明です。
 ちなみに自分のいる大学のやり方では、この「+5%」枠には学部長・研究科長・研究所長・センター長のような、いわゆる「部局長」の他、学内委員会委員などがその対象となっているようです。また部局に対しても推薦枠を与え、毎年度対象とはならない部局内委員会委員をしている一部の教員も、数年に一度はこの「+5%」枠に入れることが出来るようするなど、いろいろと柔軟に対応できる仕組みになっていました。これはあくまで自分の大学のやり方ですが、恐らく他大学も大体このようなやり方をしていると思っています。機会があれば、各大学の仕組みをもっと詳しく調べるかも知れません。
 なお、今回作成した図は国立大学を念頭に、行政職と教育職(正確には行政職(一)と教育職(一))しか掲載していませんが、実際には全ての俸給表について加算割合を示した一覧がありますので、確認したい場合は「人事院規則九―四〇(期末手当及び勤勉手当)の別表第一」を参照ください(「別に定める」方式自体は教育職(一)以外にもあります)。

(管理職加算について)
 「役職段階別加算」は基本的に「級」に対して加算するのに対し、「管理職加算」では「管理職」という役職そのものに対して加算を行います(一定以上の級は要求されますが)。これもやはり基本給以外の要素で期末・勤勉手当の金額を変動させる点で役職段階別加算とよく似ているものですが、大きな違いとして、管理職加算はその対象となる教職員が極端に少ないことが挙げられます。
 まず国家公務員の管理職加算については、「人事院規則九―四〇(期末手当及び勤勉手当)」でその概要が示され、「人事院規則九―一七(俸給の特別調整額)の別表第一」で各俸給表毎の具体的な該当者が示されています。参考までに「規則九―一七」別表第一の「文部科学省」の一覧を下に示しますが、見てわかるとおり、これを受けることのできる職員は文部科学省本省と言えども一部のみです。



 国立大学の管理職加算について、詳細はやはり各大学毎に定められていますが、今回は香川大学についてインターネット上で内容を確認することが出来ました。具体的な内容は「国立大学法人香川大学職員給与規則」でこれを確認できますが、この規定によると、香川大学で期末・勤勉手当支給の際に「管理職加算」が受けられるのは、事務なら「部長、事務部長」、教員なら「副学長(理事を除く。)」「研究院長(博士課程を有する学部の長を兼ねる者に限る。)」「附属病院長」のようです。これは香川大学の例ですが、他大学においても大体このくらいが対象になっていると思います。そういう点では国立大学においてもやはり、管理職加算を受ける人間は非常に少なく、役職段階別加算と違って、管理職加算はプロパー事務職員にはあまり縁の無い仕組みと言えるかもしれません。

【参考ページ】
人事院平成2年度年次報告書(役職段階別加算導入について)


■おわりに
 以上、期末手当と勤勉手当に関する平成23年度のエントリーでした。最後に期末手当・勤勉手当に関連して2点だけ書いて終わります。
 第一に、これは文中でも書きましたが、「役職段階別加算」の教授・准教授クラスの「+5%加算対象者」が具体的にどのような役職の者なのか、もう少し調べるかも知れません。ただ、インターネットで情報が見つからない以上、より詳しく調べるためには情報公開制度などを用いるより他、方法が無さそうです。情報公開制度は請求する側からすると便利なのですが、提供する側からするとかなり手間がかかるイメージが強いので、請求する場合はその内容や時期を見て慎重にやりたいと思っています。
 第二に、これも文中で書きましたが、国家公務員給与削減法案の存在についてです。いまさら引下げの是非うんぬんを言っても始まらないし、あまりそういうことに興味は無いのですが、これが来年度の給与体系にどのように影響してくるのかは、非常に関心があります。期末手当と勤勉手当については各支給割合を下げるのだと思いますが、どの年度が対象で、どのタイミングで法案が成立していつから施行されるか等、基本給部分も含めて詳しい情報を逐一把握し、近いうちにこれに関するまとめをエントリーしようと思っています。

 最後の最後に、今回は管理人の支給額は載せませんでしたが、これについては年度末の一覧に入れる予定なので、この旨お知らせしておきます。今年の冬は節電対策で部屋の温度を下げているので、せめて寝るときくらいは暖かくしたく、ちょっと上等な布団でも買おうかなと考えています。



※過去の期末手当・勤勉手当のエントリー
 ・(平成22年度)期末手当と勤勉手当について
 ・(平成21年度)期末・勤勉手当額まとめ ~気がつけば4年目~
 ・(平成21年度)期末・勤勉手当は2009年6月にどれくらい下がったのか
 ・(平成20年度)期末手当・勤勉手当(ボーナス)額の暫定まとめ
 ・(平成20年度)期末・勤勉手当について

コメント ( 11 ) | Trackback ( 0 )