国立大学職員日記
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国立大学職員日記:記事一覧




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■「経験年数調整」について(事例集)
 「経験年数調整」の最後の仕上げとして、いくつかの事例を設定してみました。これらを通して「計算」「換算」「調整」の一連の流れを理解していただきたいと思います。ちなみにあくまで「経験年数調整」の事例です。初任給計算全体の各論ではありませんのでご注意ください。

(case.1)経験年数5年以内の場合
 もっとも簡単な例が「経験年数の合計が5年以内である場合」です。
 この場合、実質的には「調整」を行う必要がなく、「計算」「換算」を行って出した月数からすんなりと号俸数が算出できます。職歴が一つであろうと複数あろうと関係ありません。




(case.2)経験年数5年超、100%換算部分5年以内の場合
 経験年数が5年を超えると「18月調整」部分が出てきます。しかし「100%換算」部分が5年以内ならそこまで複雑な処理にはなりません。5年までは「12月調整」を行い、余った部分で「18月調整」を行うだけです。
 複数の職歴があり、そのどちらかが「100%換算」である場合には一点だけ注意点があるのですが、それについては「case.4」で後述します。




(case.3)経験年数5年超、100%換算部分5年超の場合
 経験年数が5年を超え、さらに「100%換算」部分も5年を超える場合、少し複雑な処理になります。「換算」した月数を「60月」「60月を越える100%換算部分」「それ以外」に分けて、それぞれを「12月調整」「12月調整」「18月調整」で処理します。職歴が単数であるなら全て「12月調整」で済むので簡単ですが、複数職歴でさらに「100%調整ではない職歴」を含めると少々ややこしくなります。
 またここでも「case.2」同様に、複数職歴かつ「100%調整ではない職歴」がある場合に注意点があります。詳しくは「case.4」で後述します。




(case.4)「60月の積上げ方法」に気をつける場合
 「case.2」と「case.3」で言った注意点というのがこの「60月の積上げ方法」のことです。これを知らないと誤った初任給を支給することになってしまうため、特に注意が必要です。
 「60月の積上げ方法」は「調整」ルールの3つ目である「「100/100」で換算した部分については5年(60月)を超えても「1年(12月)=4号俸」のルールが適用され」ることに関する注意点であり、特に「5年(60月)を超えても」の条件の理解に関するものです。
 結論から言うと、この「5年(60月)を超えても」というのは「100%換算部分から優先的に積上げていき、それでも100%換算部分が5年(60月)を超えたら」という意味です。決して「時系列で数え上げて5年(60月)を超えたら」ではないということ、これが肝です。
 実は「case.2」と「case.3」では時系列がそのまま積上げ順になっていたため、この方法を知らなくても正答が導き出せるのですが、下の「case.4」のような場合、あるいは「case.2」と「case.3」で「100%換算部分」が後に来る場合ではこの方法を知らないと全ての職歴を「12月調整」で処理してしまうため、結果が異なったものになりかねません。「case.1」のような場合には全く問題とはならないので普遍的なルールではありませんが、「経験年数調整」には「計算」「換算」「調整」に加えて準ルールとして「積上げ」がある、くらいに覚えておいてください。
 また補足として、「在学期間」は100%で換算しますが5年(60月)を超えていても「12月調整」の対象とはならないのと同様、「60月の積上げ方法」においても「在学期間」は優先的に積上げる必要はないことを申し添えておきます。




総論4へ続く


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■「経験年数調整」について
 土台となる「1級25号俸」に「職歴」に応じた調整を行うのが「経験年数調整」です。「(狭義の)初任給」と「修学年数調整」に比べると説明する内容が多いため、この説明に一章を割きます。
 「経験年数調整」によって加えられる号俸はいくつかのステップを経て決定されます。「計算」「換算」「調整」の3つのステップがそれで、処理もこの順番どおりにする必要があります。以下、これら3つを順に説明していきます。

(「計算」について)
 「計算」とは処理の下準備として各職歴の期間を数え上げる作業のことです。「換算」や「調整」で正確な値を出すためにも、まずは対象となる職歴の処理前の数値を正確に、そして誰が処理をしても同じ値が出るように数えなければいけません。そのためのルールがいくつか定められており、これらにそって処理をするのが「計算」と呼ばれるステップなのです。
 「計算」は大体次の3つのルールに沿って行われます。言葉で説明するよりも図で見たほうが分かりやすいと思いますので下図をご覧ください。



 「計算」は「月単位でざっくりと数え上げる」というイメージを持ってもらうと理解がしやすいと思います。場合によっては採用される日付や退職する日付のたった数日の違いで一月から二月の違いが出てしまいますが、これくらいざっくりとしたルールにしないと、それこそ応募する職員の数だけ存在する全て異なる経歴を処理できないのです。
 

(「換算」について)
 「計算」においてその人の経歴を月数で算出しました。しかし単純に月数を出しただけでは号俸に反映させることができません。会社員と空白の期間がともに1年ずつある場合に、どちらも「12月」として処理すると、会社に勤めていた経歴と無職の経歴が同じ評価になり、不公平となるからです。
 このあたりの調整を行うのが「換算」と呼ばれる処理です。具体的には「計算」において算出した月数に、その職歴に応じて「換算率」と呼ばれる数字を掛け合わせる処理のことを言います。こうすることで「より有益と考えられる経歴」が他に比べて多く号俸に反映されることとなるのです。
 「経歴」と「換算率」について、まずは下記の表をご覧ください。



 これは人事院規則9-8に定められている「経験年数換算表」で、左にある経歴の月数に右にある換算率を掛ける仕組みになっています。
 とは言え、はっきり言ってこのままではかなり訳が分からないと思います。そこで、かなり乱暴ではあるのですが、理解をしやすくするために下記のとおりに図を簡略化してみました。本当にもの凄く乱暴に簡略していますし、実際の事務処理などは各国立大学の担当部署が決定しますので、あまり真に受けない程度に参考にしてください。



 「換算率」は最高でも「100/100」、つまり「1.0」ですので、「換算」の処理によっても、換算される月数が実際の月数以上になることはありません。つまり減らされることはあっても増やされることはない訳です。
 やはりこれも乱暴な簡略ですが、「公務員等は10割、民間は8割、無職は2.5割と換算される」と理解するくらいでよいと思います。民間で10割換算される例は多くありません。具体的な判断基準は各国立大学によって異なるので何とも言えませんが、例えば「電気施設関係の技術職員を採用する場合で、その職員が電気会社に技術者として勤めていたような期間」などです。「民間でも事務をやっていた」くらいでは10割換算は難しいと思いますが、このあたりの判断は各国立大学や部署の判断に任せることとします。
 「経歴」の中には「在学期間」が存在します。「修学年数調整」でも少し触れましたが、「在学期間」は必ずしも「修学年数調整」によって処理する必要はありません。「修学年数調整」は人事院規則の上では「学歴免許等の資格による号俸の調整」と呼称されていて、これを行うのは基準学歴や上位資格の持っている場合に、それが「職務に直接有用な知識又は技術を修得したと認めるもの」である場合に限られる、というのが建前だからです。とは言え、昨今は大学院修了者の割合も増えてきましたし、ジェネラリスト志向が強い公務員や国立大学事務職員においては多くの場合、在学期間は「修学年数調整」で処理を行っているようです。経験年数で在学期間を処理するのは、例えば理系学部出身で理系の民間企業の経歴を持っている人が「趣味で2年間大学院に通って文学を勉強していました」などという場合が挙げられると思います。最終的にはこのあたりも各機関や部署が判断することとなるので、この点ご注意ください。
 また最後に、「換算」後の月数の、特にその端数の扱いについて、「計算」ルールのようなものが存在します。「換算」全体のイメージと併せて、下記を参照ください。



(「調整」について)
 「経験年数調整」の最後のステップが「調整」と呼ばれるもので、ここでやっと具体的な「号俸数」が決定します。
 「修学年数調整」でも述べたように、初任給決定や昇給における事務処理では「1年(12月)」に対して「4号俸」を与えるのが基本的なルールです。「調整」とは要するに、「換算」で算出された月数にこのルールを当てはめて号俸を決定する処理のことを指します。これだけならひどく簡単な処理なのですが、少しややこしいルールが存在します。
 まず「1年(12月)=4号俸」のルールが適用されるのは「換算後の月数で数えて5年(60月)」までであり、それ以降では「1.5年(18月)=4号俸」、つまり「4号俸」を当てるために必要な月数が「12月」から「18月」と、1.5倍に増えます。加えてこのルール変更にも例外があり、「100/100」で換算した部分については5年(60月)を超えても「1年(12月)=4号俸」のルールが適用されます。ただし在籍期間は除かれるという例外の例外付きです。
 文章で書くと分かりにくいので、詳しくは下の図を見てください。また「調整」の処理はルールだけ抜き出して眺めても分かりにくいので、詳しくはさらに後に示す、「経験年数調整」の事例集を通して理解してください。


 
 個人的に、「調整」は「換算」などに比べると制度趣旨が分かりにくい気がします。その制度趣旨ですが、調べてみるとどうも「中途採用者の給与を在職者よりも低くするためのもの」として存在しているようです。その証拠に、かつて「調整」においては全期間を18月調整で処理していました。これが昭和45年に「5年までは15月で調整」、平成6年に「5年までは12月」となり、現在の形となったのが平成18年です。つまり流れとしては制度趣旨を弱める方向に進んでおり、このような流れの原因には民間から優秀な人材を獲得するといった目的があるようです。

総論3へ続く


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