国立大学職員日記
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 独立行政法人化して非公務員型となった国立大学ですがもともとは文部科学省の所管(というか文部科学省の組織)、国家公務員Ⅰ種で文部科学省(いわゆる本省)に採用された方(いわゆるキャリア組)が国立大学に来ること自体は今でも珍しくありません。人事異動の記事などでキャリア組の異動歴を見ることがありますが、彼らの昇進スピードは正直ぶったまげるくらいに早いです。

 キャリア組といえども係員からスタートしますが、4~5年もすると大学係長クラスになり、30歳を超えると大学課長クラスになってます。これがどれくらい早い昇進なのかは我々一般の国立大学事務職員(いわゆるノンキャリア組)と比べて見れば分かります。当たり前ですが普通の国立大学事務職員も係員からスタートです。そして、個人差はもちろんありますが、採用から10年はヒラの係員です。30歳の前半あたりに主任という微妙な肩書きをもらい、係長になるのは40歳を超えてからです。運がよければ(という言い方も変ですが)50歳前後で課長になれたりしますが、係長・専門職員(部下を持たない係長)で定年する人もいます。

 実体験として、自分の大学には30代前半のキャリア組の課長がいました。部署が違ったので書類などを持っていく時に見かける程度でしたが、ノンキャリだったら50代でもおかしくない課長というポストに自分の係の先輩(主任)と同じ年齢くらいの人がいるということにはかなり違和感を覚えた記憶があります。

 ちなみに、一般にはあまり知られていませんが、キャリア組とノンキャリア組との間には「準キャリア組」というのも存在しています。厳密に定義づけされているわけではありませんが、「国家公務員Ⅱ種で本省採用された方」という理解で概ねあっていると思います。昇進の目安としては40歳で大学課長クラスといったところでしょうか。

 キャリア組は通常、採用形態(「Ⅰ種試験で採用された」という事実)で昇進が決まるのに対して、準キャリア組は勤務形態(「本省勤務歴が長い」という事実)でその昇進が決まるように思えます。実際、我々一般の国立大学事務職員もかつては国家公務員Ⅱ種からの採用でしたが、Ⅱ種採用で各国立大学で勤務している人間を「準キャリア」とは意識しないと思いますし、昇進のスピードも早くありません。逆に、Ⅱ種・国立大学採用でもその後に本省に移りキャリアを積んだ人間は「準キャリア」として各国立大学で勤務し続けた人間よりかは早い昇進となります。こういう意味では出世を目指したい国立大学事務職員は本省勤務を希望するのが手っ取り早い方法だといえそうですね。

 さて、以上キャリア組とノンキャリア組について書いてきましたが、通常業務においてこれらを意識することは、少なくともドラマやマスコミが脚色する程には、ありません。若い課長や事務局長を見れば「あぁキャリアなのね」と思い、「そういえばうちの課長って結構若いなぁ」と思って先輩に聞いてみたら本省勤務が長かった、なんてエピソードがあるくらいです。また別段キャリアとノンキャリアでギスギスした関係があるわけでもありません。キャリア組が威張っている訳でもノンキャリア組がキャリア組を鼻つまみにしている訳でもなく、皆さん仕事上の関係と割り切って業務に勤しんでいるようです。

 ここからは個人的な意見です。時たま「採用試験に関係なく能力に合わせて昇進させる」話なんかを目にしますが、採用時に「幹部候補」と「オペレーション的業務を行う目的で採用する職員」に分けること自体は特に悪いことではないと思います。要するにキャリア組とノンキャリア組はいてもいいと思います。これは「幹部候補養成」は組織的にあった方が良いという考えに基づくところが大きいです(もっとも、たま~にやさぐれて「上の世界のことなんて知らないね。重要政策はキャリア組が決めてくれ。こっちはルーティン業務で忙しいんだから」とやや捨て鉢な考えが頭をもたげることもありますが…)。なお、個人的アイデンティティーとして、文部科学省に帰属していることよりも今いる大学に帰属していることの方が自分としては重要なので、キャリアアップを目的とした一時的な本省勤務を別にすれば本省で勤めたいという気持ちは無い、というのが本音のところです。ここらへんは実を言うと、今勤めている大学が自分の母校でもあるので、そこらへんが大きく起因しているんだと思います。ま、ノンキャリアとしての卑屈っぽさも無いわけでは無いんですけどね…。

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