国立大学職員日記
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国立大学職員日記:記事一覧




 大学法人に限らず、異動の多い年度末には送迎会が開かれるものです。

 僕のいる部局では送迎会は「幹事」に指名されている係が執り行います。「幹事」の任期は一年で、年末(年度末ではなく)を境に順繰りに係を変えていっています。主な業務は歓送迎会の開催、職員旅行の企画・運営、会費の管理(徴収は総務係の業務)などです。帳簿などを見ると、職員の身内に不幸があった際の弔花の購入なども行っているようです。

 今年は自分の係が幹事のため、これまでの帳簿を引き継ぎ、中身を拝見する機会がありました。そんな中ふと疑問に思ったのが「寸志」というものの存在です。

 帳簿には「寸志」という項目とともに、寸志をいただいた方の氏名と金額とのし袋があり、どうも歓送迎会に合わせて贈られているようなんですが、単純なカンパというわけではない感じです。

 結論から言うと、「寸志」というものは送別会の時に送り出される人間が、会費とは別に支出する金銭であり、つまるところ、「自分のためにわざわざ送迎会を開いていただきありがとうございます。ささやかな金額ではありますが、どうぞ会費の足しにしてください。」という感じに感謝の意を表明するカンパのようです。

 義務ではないようですが、見たところほぼ全員が出していました。大学でサークルにでも入っていれば「寸志」なんてものは常識なのかもしれませんが、そういう経験がない自分には「そんなものもあるのか」と非常に新鮮味を感じるとともに、こういうやり取りが妙に「日本という社会で生きていく上で知らなければならないこと」のように感じ、どことなく諦観とも惜寂ともいえるような感情になりました。

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 大学事務職員になった当初、高校生の子供を持つ知人から冗談半分で「うちの息子をいれてやってくれないか?」なんて聞かれたものです。ちなみにこの要請に対する返答は明確に言って「無理」の一言です。


 自分も大学受験を経験した身なので、大学における大学入試試験のありようには少なからず興味があります。そしてそろそろ勤め始めて1年が経とうとしている今、大学事務職員の身分からはっきり言えることがあります。それは「大学入試というのは学務部の入試系の課が行っている業務の一つであり、その課に所属していない大学職員にとってみると大学入試は世間一般の人間とあまり変わらないくらいの感覚で自分の生活とは疎遠なものである」ということです。

 もっともこれは僕のいる大学が割りと大きいためにおこる、縦割り業務の弊害なのかもしれません。あるいは僕の職場への帰属意識が薄いのか…。まぁとにかく、大学事務職員と言えども全員が全員その年に行われる入試の日程をみっちりと知らされるわけでもないし、ましてや試験前に試験問題をみることができるわけでもありません。そもそも試験前に試験問題を見ることができる大学事務職員なんて各大学で1人か2人、いるかいないかのレベルだと思います。(合格番号くらいなら発表前に知る職員も多いとは思いますが。)

 そんな大学入試なんですが、じゃあ全く無関係かと言うとそうでもありません。センター試験を含め、大学入試というものは定員をはるかに上回る人数が受験し、その数はその大学にいる事務職員数すら上回ります。当然、そのような大規模な行事を学務部一つの人数で行うことは不可能であり、ここで入試関係業務にあたっていない僕のような職員にも出番が回ってくるのです。

 前置きが「かなり」長くなりましたが、この季節の大学事務職員の季節物業務の一つには「センター試験及び二次試験の監督員を勤める」というものがある、ということです。

 監督員の業務は大きく分けて二つ、室内監督員と室外監督員です。室内監督員に関しては大学受験の経験がある人には想像しやすいでしょう。部屋の中にいて「試験始め」とか「これこれ以外のものを机の上に置かないように」とか注意しているあの人達です。室外監督員は試験受付時に受験票の確認をしたり、途中退席した学生の誘導を行ったりするものです。

 監督員に選ばれる職員は恐らくランダムでしょう。ただしいきなり入社一年目の新人に「試験始め」の号令をかけさせるとも思えないので、監督員の経験が何度かある係長クラスの人間が室内監督員に優先的に配置され、僕のような新人はまず室外監督員をやらされるのだと思います。回数も2~3年に一度くらいでしょうか。もっともこれは各大学の受験希望者数と事務職員数の比率によるはずですが。

 ちなみに監督員に選ばれると試験日1週間くらい前に講習会のようなものがありますし、講習会の他にも1ヶ月くらい前に小冊子が渡され、非常時の対応などに目を通す必要があります。しかし正直言って、監督員の業務についてみっちりと指導を受けるわけではないようです。

 こんなことを書くと「じゃあ大学事務職員は適当半分で監督員をしているのか」と思われそうですが、そうではないと思います。個人的な感想ですが、この手の業務で一番重要なのは「経験」なのだと思います。監督員マニュアルを頭に叩き込むのも大事ですが、それよりも、現場に臨んでその雰囲気を感じることでしか学べないこともこの業務にはあるような気がするからです。その証拠かどうかわかりませんが、大抵年の若い監督員は係長クラスの人とペアにされて監督業務にあたります。自ら臨み、また経験ある人から学ぶことで少しずつ「入試監督員」が出来上がっていく、監督員はそういう仕組みになっているのではないでしょうか。

 またそういう意味では、「監督員」というのはその職員がどれだけ大学というものに慣れて来たかを計る物差しみたいなものなかもしれません。まだ新人の僕ですが、いつかは「あぁ今年もそんな季節か」とかいう台詞を吐きながら監督員業務依頼の文書に目を通す日が来るのかもしれないと思うと、妙に感慨深い気持ちになる今日このごろでした。

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