国立大学職員日記
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 今回のエントリーは大学事務職員の最終学歴と学校歴についてです。全大学の統計を持っているわけではなく、あくまで自分の大学限定で、同期や上司や先輩達からの伝聞によって得た知識であることを前置きしておきます。

■「学歴」と「学校歴」について
 まず用語の違いを明確にしておきます。
 「学歴」とは日常でも頻繁に使われる言葉ですが、国立大学の人事などにおける「学歴」とは、いわゆる院卒・大卒・高卒のように、最後に卒業(あるいは修了)した学校の種類により分類されます。国立大学の人事で使われている業務ソフトに「人事管理システム」というものがあるのですが、そこでは「高校3卒」「短大2卒」「大学4卒」「大学6卒」「修士2卒」「博士3卒」等といった具合に分類されていました(「人事管理システム」は最近新しくなったと聞きました。今では分類上のこれらの単語は新しいものに変わっているかもしれません)。
 次に「学校歴」についてです。こちらは日常生活ではあまり耳にしない単語ですが、日常生活で使われるところのいわゆる「学歴」と同義で、卒業した高校名や大学名を示します。
 仮に最終学歴が東京大学法学部の職員がいたとして、この職員の「学歴」は「大学4卒」、「学校歴」は「東京大学法学部」となります。

■「学歴」について
 まず同期(平成18年度採用組)の話をします。同期の職員は4年制の大学を卒業した者が中心で、技術職員などに修士課程や博士課程修了者が少しいます。割合としては、事務職と技術職をひっくるめると学部卒と院卒で8:2くらいの割合になり、事務職員に限定すれば学部卒の割合がもう少し増えると思います。
 つぎに年代別の話になります。先輩達に聞くところによると、新規採用者として高卒を取っていたのは大体90年代の初めあたりまでで、それ以降高卒の新規採用(恐らくは国家公務員Ⅲ種からの採用だと思いますが)はしていないとのことです。個人的な感覚としても、中堅主任クラス(30歳代の真ん中あたり)より年下で最終学歴が高校卒業の職員さんはいない印象がある一方で、40歳代の係長クラスには高卒の方がちらほらいるように見受けられます。
 なお、現在の国立大学事務職員の採用試験である国立大学法人等職員採用試験においては受験資格に学歴の定めはないものの、筆記試験の内容が「大学卒業程度」となっているところから見て、採用側のターゲットとしては大学4卒以上を念頭に置いているのだと思います。

■「学校歴」について
 「学校歴」、出身大学についてですが、同期含め大学全体で言えることは大学のある都道府県か、あるいはその近隣の都道府県の出身校の者が多いと言うことです。出身地を聞けば意外と遠くの生まれということもあるのですが、出身大学となると両手の指で数えれるくらいに限定されます。このことから、地元の人間は地元にあるからという理由で就職し、遠くからやってきた人間は(学生時代の)大学が(勤務先である)大学の近くにあったから、あるいは母校であったからという理由で就職するというパターンが多いのだと思われます。
 ここで「俗に言う学歴」、つまり「学校歴の偏差値」についても触れておきます。自分で言うのも何ですが、同期(平成18年度採用組)の最終学歴の偏差値は決して低くありません。センター試験の得点率でいうと80%前後の大学出身者が同期の半分以上を占めます。また高偏差値の大学を出た者ほど就職浪人を経ずに就職している傾向がある一方で、(失礼な言い方ですが)偏差値がさほど高くない大学出身者の方は一度公官庁に臨時職員などとして勤めた後で正式に採用されるパターンが多いように思われます。このあたりについては国立大学事務職員の就職傾向というよりかは、公務員試験の合格傾向などを調べたほうがより正確なデータが取れるのではないかなと思います。なお同期以外の職員では、自分より年上になるに従って「学校歴の偏差値」はゆるやかに下降しているように思われます。一概には言えないとは思いますが、多分このあたりには過去の大学進学率や、バブル期時代の公務員になることの不人気だとか、最近の公務員試験が「狭き門」となっていることの影響だとかが関係しているのだと思います。

■働く上での「学歴」と「学校歴」、または「学歴コンプレックス」についての個人的な見解
 就職活動をしていた学生時代なんかは「学歴社会」なんて言葉に敏感に反応したものですが、いざ国立大学で働き出して見ると「学歴社会」なんてものがあるのだろうかと思えるくらいに日常で「学歴」「学校歴」を意識することはありませんでした。
 これは一つには、上で書いたとおり、同期から10数歳年上の先輩までの最終「学歴」が「大学4卒」と同じであるため、そもそも差異がないことが原因だと思います。40歳代の上司には「高校3卒」の方もいますが、ハッキリ言ってこの年代になってくると「最終学歴」うんぬんは20年近く前の出来事になってしまう訳で、大卒・高卒の違いは勤め始めてからのキャリアでどうとでも埋め合わせされてしまっているため、意識されることは無いのだと思います。上司とこういうことを話し合った訳ではないのでハッキリとは言い切れませんが、高卒の年配職員の方に「学歴コンプレックス」はあまり見られない印象があります。ここらへんは公務員試験Ⅲ種採用とⅡ種採用で昇進上の区別があまりハッキリとはしていないことにも関係するかもしれません。あくまで一職員としての意見ですが、「学歴」と現状の中間管理職の方々を見比べて見るかぎり、マスコミがはやし立てるほどの「学歴社会」というものはなく、勤勉な人間がキチンと昇進しているように見えて、新人時代の自分なんかは割りと感心した記憶があります。
 「学校歴」、あるいは「学校歴の偏差値」などについても同様で、いざ勤め始めて見ると誰それの出身大学の偏差値なんてものはほとんど問題にならず、せいぜい同じ大学・同じ学部の先輩・後輩の間で名物教授の話で盛り上がる程度です。ちなみにこれは「学閥」なんてものとは程遠く、同窓ということでちょっと話の種になるくらいのものです。
 「学歴コンプレックス」について、上でも少し書きましたが、少なくとも自分の大学ではそういうものを身近に感じる機会は特にありませんでした。そもそも国立大学の事務職員自体が、大学教授という有名大学出身とか博士課程修了とかすごい学歴・学校歴を持った人たちと一緒に仕事をしているわけで、「学歴とか学校歴の違いなんてものはあって当たり前」くらいのドライな考え方を、事務職員全体として共有しているのかもしれません。
 「高卒だろうと大卒だろうと何の関係もない」とまで言い切ってしまうと「じゃああんたが勤めている大学の存在意義は何だ」と問いただされてしまいそうなので、個人的には「大学を卒業すること」が何らかの形で人生を一歩豊かにすることだと信じたいのですが、勤める上で最終学歴というものは少なくとも決定打ではない、というのが勤め始めて3年目になる自分の率直な感想でした。しかしまぁ、自分の話をすると実は大学院に進みたかった過去もあるので院卒の方をちょっと羨ましく思ったり、高偏差値の大学を出た同期についついすごい活躍を期待してしまうことが無きにしもあらずです。このあたりはどうしても感情論になってしまいそうなので日常生活でも中庸的な考えを尊重しようと努めたりしてます。でも「最終学歴」と聞くとどうしても「より良いものを!」を求める気持ちが胸のどっかで沸いてきてしまうんですよねぇ…。そんな自分につい高度成長期の日本人臭さを感じる今日この頃です。

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