国立大学職員日記
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国立大学職員日記:記事一覧




■はじめに
 平成23年度の概算要求基準(シーリング)でいろいろと騒がれた国立大学の運営費交付金ですが、その具体額が判明したので今年度もランキングを組んでみました。
 データは例のごとく「旺文社 教育情報センター」様の「23年度 国立大学法人運営費交付金(11/4/21)」の記事を参照させていただきました(たまには自分自身でデータを作成しようと思って、各国立大学の年度計画を細々と調べてみたのですが、東北大学の平成23年度の年度計画がネット上で探せなかったので断念しました)。
 例年通り予算は縮小していますが、ネット上でのあちこちの記事を読むと、今年度は運営費交付金の内外において一定の下げ止まりが見られたようです。今回のエントリーはランキングに加えて、運営費交付金近辺の事情を少し調べて見ました。

■運営費交付金ランキング




 上位17位の国立大学の順位変動が無いという、恐ろしく前年踏襲型のランキングになりました。
 全体で見ると運営費交付金の対前年度伸率は「-0.5%」となり、これは法人化された以後の削減割合としては最も低い数字となっています(下図参照)。



■大山鳴動してねずみ一匹か?
 こうやって結果だけ見てみると去年の概算要求基準(シーリング)が出された際の騒動は何だったのかと思えるくらい、各国立大学にとっては「良い結果」に終わっています。しかし、忘れてはいけないのが「元気な日本復活特別枠」の存在です。それというのも、今回の運営費交付金においてはこの特別枠から実に546億円もの金額が計上されており、はっきり言ってこれが無かったら本当に去年騒いだとおりの事態になっていたかも知れないからです。
 そういう意味では今回の結果は、政府が政策コンテストでパブリックコメントを求めた際の、文部科学省関係者の努力の結果なのかもしれません。まぁ、組織票でゴリ押しするのが良いのかどうかという問題もありますが、とりあえずは起こした行動に対するある程度の効果は生じた訳です。

■「大学教育研究特別整備費」の新設
 運営費交付金が全体でたった0.5%の削減に抑えられたのに加え、さらに今回は「施設整備費補助金」の中に「大学教育研究特別整備費」というものが新設されています。その金額は58億円で、これは運営費交付金の削減額を700万円ほど上回っています。つまり、この「運営費交付金」と「大学教育研究特別整備費」を併せて考えるなら、国立大学におけるこの予算はなんと昨年度を上回ることになるのです。
 もっとも、「運営費交付金」とは明確に区別される「施設整備費補助金」について、安易にセットにして考えてよいのだろうかという疑問は残ります。ただ、これについては財務省自身が発表した資料(「平成23年度文教・科学技術予算のポイント」35頁)において、わざわざ次のような図をこさえてまで説明してくれているので、とりあえず「下げ止まった」という風には捉えても問題はないと思います。



■財務省の資料に見る、ちょっとした不安材料
 ここからはちょっと与太話のような、信憑性が疑わしい話です。
 上記でも示した財務省の「平成23年度文教・科学技術予算のポイント」の資料は、文部科学省関連の予算について詳しく説明してくれているとても良い資料なのですが、ちょっと気になる部分があります。具体的には37頁のことです。資料全体のほとんどはプレゼンテーション的というか、見る人間が理解しやすいように書かれているのですが、37頁でいきなり次のような、通知文書というか、えらくとってつけたような頁が出てきます(これはぜひ、こちらのリンクから実際の文書を確認してみてください)。



 頁の位置や内容からしても、間違いなく平成23年度における国立大学法人の運営費交付金予算に関係するものですが、具体的にこれがどういう意図を持って掲載されたのかが、どうもはっきりしません。個人的にはどうしても、財務省が運営費交付金や「大学教育研究特別整備費」を今年度に色をつけて計上した見返りに、文部科学省に次年度以降の予算を縮小させることを約束させたことを宣言する文書に見えてしまうのですが、どうなんでしょうか。
 こんなご時勢ですし、財務省は財務省で大変だと思うので、口喧しいことを言うつもりはありませんが、とりあえず次年度以降も引き続き厳しい状況は続くと覚悟しておいたほうが良さそうです。

■おわりに
 相変わらず財務や予算のことに非常に疎いため、ランキングは作れてもその原因や周辺事情はほとんど一般人の知識と変わるところがないことを、毎度毎度痛感しております。そんな中で、「旺文社 教育情報センター」様の資料は、運営費交付金のデータのみならず、その解説も非常に詳細で分かりやすく、個人的には大変お世話になりました。このエントリーをご覧いただいた皆様も、ぜひご覧いただくことをお勧めいたします。

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