国立大学職員日記
メインコンテンツ
国立大学職員日記:記事一覧




 期末・勤勉手当も出たことですし、就職してから計6回に渡る期末・勤勉手当の額とその内訳を一覧にしてみました。

■基本データ
・平成18年4月採用
・最終学歴は4年制大学卒
・採用時年齢22歳(就職時まで受験浪人・留年・就職浪人無し)
・平成19年1月1日に2号級、平成20年1月1日に3号級昇給
 (昇給と昇給抑制期間についてはこのエントリーを参照)
・国家公務員における行政職俸給表(一)相当の給与表に該当
・途中に期末手当基礎額の変動あり(昇給を除く)
・期末・勤勉手当の算出方法についてはこのエントリーを参照

■勤続3年間における期末・勤勉手当の内訳一覧(単位:円)
勤続年数1年目(2006年)2年目(2007年)3年目(2008年)
支給月 6月12月 6月12月 6月12月
期末手当74,000280,000250,000289,000260,000298,000
勤勉手当37,000124,000127,000135,000153,000134,000
共済短期-3,600-13,000-11,000-12,000-12,000-13,000
共済長期-8,000-30,000-28,000-32,000-31,000-32,000
雇用保険-1,000-3,000-2,000-3,000-2,000-3,000
所得税-8,000-29,000-13,000-15,000-15,000-15,000
手取金額91,000330,000323,000362,000354,000369,000

※全ての値は百の位で四捨五入しています。


 勤続1年目の6月の支給について、4月採用のため2ヶ月分の手当てしか出ていないので他と比べて低くなっています。また、所得税について勤続1年目の12月だけ額が高くなっていますが、このあたりは恐らく平成19年度に行われた所得税率の変更が関係しているのだと思います。
 6月と12月の支給額を比べた場合、勤勉率や期間率が同じであれば7:8の割合で12月の方が高額になるのですが、今回は途中に基本給の引き上げなども行われたので、その差がいまいちはっきりしていないかと思います。
 さて昨今の金融不安を受けて、輸出を主とする大企業の中にはボーナスを出さないところもあるのではないかと聞いたことがあります。国立大学事務職員におけるボーナス(期末・勤勉手当)の額はあらかじめ給与に関する規定で定められているため、ボーナスが出ないということはないものの、人事院における期末・勤勉手当の額の調整の勧告の影響はもろにくらいます。恐らく来年度の期末・勤勉手当の支給割合は本年度の一般企業の業績悪化を受けて低下することになるでしょう。そのように考えると支給額の値に素直に一喜一憂できない今日この頃ですが、せめて内需拡大に寄与すべく使う分はきっちりと使って、あとは慎ましく貯金しておくことにしたいと思います。


※平成22年12月5日追記
期末手当と勤勉手当についてまとめなおしましたので、こちらもご覧ください。
期末手当と勤勉手当について

コメント ( 14 ) | Trackback ( 0 )




 今回のエントリーは労働時間に関してです。初めに注意しておきたいのは、以下に示す労働時間はあくまで各大学の一般事務職員に適用されるものの典型例である、ということです。教員や大学病院職員(特に看護師の勤務体制)は多くの場合以下に示す原則から外れるものがあったり、就業規則に別表という形であらかじめ詳細に定められているものが多かったりするのでご注意ください(その一例)。

■大学間で異なる労働時間
 独立行政法人の一種である国立大学法人には労働法の適用があり、労働時間に関する規則、特に「始業および終業の時刻、休憩時間」については就業規則にその定めを記さなければなりません(こういう定めを「就業規則の絶対的必要記載事項」といいます)。そういう訳で、かつて国家公務員時代に人事院規則で一括して定めていたと思われる大学事務職員の労働時間についても、現在では大学ごとに作成される就業規則にその定めが置かれています。
 しかし個人的な経験から言わせてもらうと、大学の就業規則は往々にしてどこも似たり寄ったりの内容となってたりします。そのためどうせ労働時間に関してもそんなとこだろうと思っていたのですが、調べて見ると結構な違いがありました。まずはネット上で拾えた旧帝大の労働時間に関する下記の一覧をご覧ください。

大学名始業時間終業時間休憩時間休息時間実労働時間
北大8:3017:1545分(12:15~13:00)15分(12:00~12:15)7時間45分
東北大8:3017:1545分(12:15~13:00)なし8時間00分
東大8:3017:15
(17:30)
45分(12:15~13:00)
(60分(12:00~13:00))
なし8時間00分
名大8:3017:1545分(12:15~13:00)15分(12:00~12:15)7時間45分
京大8:3017:30
(17:15)
60分(12:00~13:00)
(45分(12:00~12:45))
なし8時間00分
阪大8:3017:1545分(12:15~13:00)なし8時間00分
※九州大学はネット上にデータ無し
※東大の下段括弧書きは「教職員が申し出た場合」のもの
※京大の下段括弧書きは「特別の理由があると認める場合」のもの


 一番驚いたのは「大学によって実労働時間が異なる」という点で、旧帝大で言うと北大と名大は他の大学に比べて15分間多い「休み時間」が与えられて訳です。15分といえど個人的には有るのと無いのとではかなり違いがあるように思えます。全ての大学が全く同じ労働時間の定めをしているとは予想していませんでしたが、まさ大手国立大学である旧帝大の中にさえ実労働時間に違いが見られるとは思いませんでした。

■休息時間と休憩時間、所定労働時間と法的労働時間
 改めて一覧に目を向けて見ると、「休息時間」の有無が実労働時間に違いを与えていることが分かります。
 労働法に慣れない人から見ると、一般的には同じ意味で使われる「休憩時間」と「休息時間」とが区別されていることに違和感を覚えるかもしれませんのでちょっとここで説明をしておきます。簡単に言えば、「休憩時間」は賃金が支払われない完全な休み時間で、「休息時間」はその時間に対しても賃金が支払われており必要なときには業務に従事する可能性がある休み時間(手待時間)です。無給の休み時間、有給の休み時間とも言えるかもしれません。詳しくはこちらのページが分かりやすいのでご参照ください。
 ちなみに「休息時間」は労働している時間と捉えられているため、「所定労働時間」は表上のどの大学でも8時間となります。また新しい単語が出てきてややこしいかと思いますが、「所定労働時間」とはその会社(ここでは各大学)が定める1日にこなさなければならない労働時間を言います。「所定労働時間」は原則として1日8時間を超えてはならないと労働基準法に定められています。この「1日にそれ以上働かせては(あるいは働いては)ならない8時間という数字」が「法定労働時間」と呼ばれるものです。両者はたまに混同されたり、あるいは「労働時間」と略されて使われるためにややこしいですが、一応違うものです。「実労働時間」には厳密な法定義はありません。「実際に働かなくてはならない時間」くらいに捉えて下さい。
 長々と書いて分かりにくいかもしれません。要するに、北大と名大では労働時間の中に「15分間手を休めて待機している時間」が含まれているということです。実際には休み時間と大差ないものですが、大学(北大と名大)側がそれを「労働している時間」と見なす以上、北大と名大の職員も「1日8時間労働している」と言える訳なのです。

■「休息時間」は公務員時代の名残?
 労働法の話に少し触れましたが、実は「休息時間」については労働法上に特段の規定がありません。もちろんだからといって「休息時間」を設けることが違法になるわけではありませんが、労働者側にとって恩恵的とも思えるような「休息時間」はなぜ存在しているのでしょうか?
 ここからは先輩から聞いた話となりますが、「休息時間」とはもともと公務員に特有の労働時間制度で、民間ではほとんど行われていなかったそうです。事実、これが原因で公務員の「休息時間」は平成18年3月2日に出された「休憩・休息時間に関する見直しについて」という文書で廃止が謳われました。その後の経緯はどうなったのか分かりませんが、とりあえず現在の人事院規則には休息時間の定めがないので、恐らくは廃止されたのでしょう。面白いのはまだ休息時間の定めがあった時に独立行政法人化した大学の中には就業規則に「休息時間」を定めた大学がいて、公務員の「休息時間」が廃止なった現在でさえも人事院の管轄外という理由で「休息時間」を残しているところがあるという事実です。ある意味シーラカンスみたいなものでしょうか。その存在の是非を別に考えるなら公務員制度の生きてる化石みたいなものなので歴史的(負の)文化財としてしばらく残しておいてほしいなと思ったりします。

■「隠された15分間の休憩時間」について
 ちょっと謎めいた小見出しですが、自分が勝手に「隠された15分間の休憩時間」と呼んでいる休憩時間があります。
 「休息時間」と違って、「休憩時間」には労働基準法上の定めがあります。曰く、「休憩は労働時間が6時間を越える場合は45分。8時間を越える場合は1時間を労働時間の途中に与えなければならない」という内容のものです。ここで注意すべきは「8時間を越える場合」に「1時間」の休憩時間が必要ということです。上に挙げた旧帝大は「所定労働時間」と「実労働時間」のどちらを取っても、「8時間のものはあっても8時間を超えるものはない」ため、休憩時間は45分与えておけば法的にはなんら問題がありません。実際、ほとんどの大学は休憩時間を45分にしています。京大だけは1時間の休憩時間を設定していますが、この1時間のうちの15分間分は大学から恩恵的に認められているとさえ言える訳です。
 しかし、残業をするとなるとちょっと話が変わってきます。上で伸べたように、実労働時間が7時間45分である北大と名大も、「所定労働時間」は8時間と換算できるため、例え1分でも残業をするととたんに労働基準法の「8時間を越える場合は(休憩時間を)1時間与えなければならない」という法規に縛られる訳です。そしてここでさらに、「休憩時間」は「労働時間の途中に与えなくてはならない」という定めが関係してきます。つまり、京大を除く表上の全ての大学は時間外労働をする職員に対して終業時間後に15分の休憩時間を与えなくてはならない訳です。これが自分の呼ぶ、「隠された15分の休憩時間」です。なお、京大に限っては既に1時間の「休憩時間」を与えているため、残業を命じられても「休憩時間」を確保する必要はないかと思います。が、「休憩時間」なしで夜遅くまで就業するとなると昼休み明けから続く労働による拘束時間が長くなるという、また別の問題が出てくるかもしれません。京大の職員に知り合いがいないのでこのあたりを確かめることができないのですが、実際の運営上は「休憩時間」が取られている可能性があるかと思います。事情をお知りの方がいればコメントの方へ書き込み方お願いいたします。
 ちなみに自分の大学の労働時間は表上の「北大・名大」方式を取っているため、残業するときは終業時間の15分後から時間外労働をすることになっており、終業時間である17:15から17:30までが「隠された休憩時間」になっています。実際には、この時間帯以外で休憩を取っても構わないし、実際に取っても上司が特段文句を言うこともありませんが、時間外労働命令簿には必ず上記時間帯を書き込むようにと上司から支持が出されています。その理由は、時間外労働時の休憩時間をあまり遅めに取ると、昼休み明けから続く連続する労働時間が長くなりすぎて労基署に目を付けられるから、だそうです(係長談)。なお、このような指示は帳簿上ではきちんと守られているように記録されますが、現場レベルではかなりいい加減に運営されています。個人的な経験としては、残業するときは大体18:00くらいまで働いて、その後学食に夕食を食べに行って、帳簿上には17:15から17:30までは休憩を取ったことにしておいて、残業が終了する時間は実際に残業が終わった時間から学食で夕食を取っていた時間と休憩しなければならない15分間を引いた数字を書き込んでいました。規則にのっとっていないと言えば確かにそうなのですが、時間外手当はこのやり方でもキチンとやっただけ支出されるので、労働者側(自分や先輩たち)も特段不満に思うことなくやっていました。

■労働時間は今後どうなるか
 上で「休息時間は残してもらいたい」と記しましたが、人事院が「休息時間」の廃止を決定した過去の経緯から見ても、北大・名大方式の労働時間は今後無くなって行くと見るのが妥当かもしれません。しかし個人的に気になるのが、平成20年度人事院勧告で出された「職員の勤務時間の改定に関する勧告」です。この勧告の中では、「一日の労働時間は7時間45分を超えない範囲で割り振るものとする」といった趣旨が書かれています。「休息時間」の廃止が比較的最近のものであることから考えて、この勧告が「休息時間」の復活を呼びかけるものではないとは思いますが、「休息時間」によって「実労働時間」を7時間45分としている北大・名大方式は、案外この勧告に親和的だと思うのです。
 とは言うものの、この勧告が作成されたのは例の金融不安が起こる前の話です。内定取り消しなど雇用情勢上くらいニュースが取り上げられる中、来年度の人事院勧告で期末・勤勉手当の支給割合を下げることは覚悟しなければならない現状、所定労働時間を平成20年度人事院勧告に従って短縮する大学はかなり少ないのではないでしょうか。少なくとも自分が大学運営側なら時短はためらいます。

 人も予算も減る中で、仕事だけが増えていくといわれる今日この頃。そのしわ寄せが職員へのサービス残業などに集中しないとも限らない意味では、労働時間の管理は地味だけど大事な観点の一つとなりうるのではないかと思います。

コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )