国立大学職員日記
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国立大学職員日記:記事一覧




 前にも書きましたが、僕が今いるのは国立大学病院です。もちろん古くからある(創立が大正時代って…)組織なので昔の話を聞く機会がよくあります。その中でも特に驚くのは歴代の看護師さん担当の人事係さんの記憶力です。

 全ての国立大学で共通かどうか分かりませんが、僕の大学では業務用アプリケーションとして「人事事務システム」という、人事を管理するソフトがあります。早い話がデーターベースです。職員の各種情報・履歴を参照できたり、条件を設定してそれに合致するものをCSVで出すことができる代物なわけです。

 今現在、僕の病院に看護師は600~700人ほどいるらしいのですが、エクセルなど使えばアイウエオ順に並び替えるのは一瞬です。所属だって一瞬で判明、その所属の者のみ抽出することも一瞬です。でも昔はこういうことができません。毎月作る勤務時間報告書や超過勤務命令簿の整理は書類で、しかもランダム順に出てきます。そこで人事係は看護師に関して凄まじいほどの記憶量を持たざるを得なかったわけです。

 まず全ての看護師の名前を暗記していました。ランダムに分けられた全員分、400名あまり(その頃は今より少なかったそうです)分の書類もあっという間にアイウエオ順に並べることが出来なくてはなりませんでした。改姓歴・所属・職種・採用時期・扶養の有無なんかもすべて覚えてそうです。そして恐ろしいことに、これらを全て覚えないと、人事係として一人前とみなされず、異動させてもらえなかったみたいなのです。

 もちろんこれは年配の方の昔話。多少脚色はあるでしょう。それでもやはり、これは脱帽せざるをえない記憶量です。そう思うと、今は全く便利な世の中になったものです。システムを使えば人事記録が一瞬で参照できる。条件を設定すれば条件に合致する者が一瞬で抽出される。年齢順に並べるのも所属別に分けるのも全て一瞬。ただまぁ、看護師の名前を聞いて所属も分からないと年配の人事係経験者に怒られちゃうのが玉に傷なんです…。

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 国立大学は独立行政法人化したとはいえ、その収入には税金が多く使われています。当然、横領なんて持っての他、無駄遣いも許されないし、いい加減な方法でその税金を使ってもいけないわけです。「税金は公正に使われなければならない」、この論理は正直言って正しい。しかし、この正しさにはある種の「面倒臭さ」が付随するわけです。

 ではこの面倒臭さとはなにか。端的に言って、「税金をきちんと使うために税金を使う」ことの面倒臭さなんです。

 例えば住居手当。国立大学では「○○月からアパート住み始めたので住居手当下さい」の一言じゃ住居手当は出ません。住居手当だって税金から支出するんです。その支出の内容は公正であり、ましてや職員の虚偽・誤りの申告で大学側が多めに手当てを出してしまうような失態があることは許されません。そこで大学の人事・庶務係は住居手当の申請があると必要な書類を職員に用意してもらいます。賃貸に引っ越したなら「住居届(引っ越したことの申請書みたいなもの)・賃貸契約書のコピー・入居証明書(大家さんにその職員がそこで暮らし始めたことを証明してもらうもの)・初月分の家賃の領収書」等が典型。家を購入しました、家を新築しましたってんならさらに登記などがからむ複雑な手続きとなってしまいます。

 これだけの書類を集めるのも職員にとっては手間ですが、コレを吟味し、さらに稟議(決裁するために複数の係に書類を見てもらう作業)する人事・庶務係もかなりの手間です。これだけいろいろやって、OKがでた上でようやく給料に反映されます。

 しかし、これで済むならまだ民間会社でだってやってるレベルかもしれません。さらに面倒臭いことに、手当関係は一年に一回、「今支出されている内容が実態に即しているかどうか」のチェックをしなければならないのです。これを「現況調査」と呼びます。これがとにかく面倒臭い。特に人件費なんて考えたら、100人に1人いるかいないかの誤支給者のために、数十人が数百時間かけて書類をチェックするわけで、もう採算的に考えたら絶対やってはいけない作業だと思います。

 僕のつたない文章では、上記の面倒臭さは伝わらないかもしれません。要するに、極めて単純に言うと、「山狩りをしてでも万引き少年を捕まえなければならない」面倒臭さというものが、税金を使うものにはついてまわるわけです。

 できることなら一度、財務関連の上層部に「10万円の税金を支出するには税金が何万円必要なんでしょうか?」と聞いてみたいです…。

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 たまにこういう質問を受けることがあり、返答に非常に苦労します。

 僕自身、民間か公務員かで選択するなら、自分は公務員だと思っています。だって税金で給料もらってますし、会計検査院が監査に来ますし、共済年金にも入ってますし、なんだかんだ言って人事院勧告(人事院がする、公務員の給料を上げ下げを指示するもの)にしたがって給料が上下しますもの。「こういうのは民間にはない、だから自分は公務員なんだ」と考えてるわけなんです。内面的にも、「自分の勤める大学だけではなく、日本全国の教育業務の運営をサポートするのが国立大学事務職員の使命だ!!」とか思っちゃってますしね。

 ただ正直なはなし、民間と公務員の二つのカテゴリーだけでは国立大学って論じられないのだとも思います。例えば、給料面では公務員にしか適用されないはずの給与法という法律に準拠する「公務員性」がありますし、労働面では公務員には適用のないはずの労働法の適用を受けるという「民間性」があります。こういう二つを併せ持つ存在がいまの国立大学なんですね。大学内部でも、「お役所仕事チックな仕事」が残る一方で、業務の効率化が急ピッチで進んでいる面もあります。僕自身、昭和テイストあふれる「お役所仕事」に出会いながらも、どんどん電算化している業務の中で仕事をしてますからね。

 それで総括ですが、こちらのページにある通り、「みなし公務員」、というのが、いまの国立大学事務職員を呼称するのにもっともふさわしい名称なのであり、公平性と効率性のバランスを考え直しているのが、いまの国立大学の現状なのではないかなと、僕は思っています。

 まぁそんなわけで、だからこそ悩むんですよ。表記のような質問に…。

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 一度「国立大学病院の事務職員になるにはどうすればいいのですか?」という電話対応をしたことがありました。今から考えると、この「国立大学病院の事務職員」というのは、医事課などで働く医療事務従事者・外来クラークなど、僕のような事務職員とは少々異なる、「若干医療に関する知識・経験を必要とする事務職員」をさしたのかもしれませんが、ここでは僕と同じく「普通の事務職員」を念頭に、一応この質問にお答えしておきたいと思います。

 さて上の質問、手っ取り早く答えると「国立大学法人等職員統一採用試験に合格してください」、の一言で終わります(詳細はココを)。

 もう少し詳しく言うと、「国立大学病院の事務職員はその大学病院の所属する大学の事務職員ですから、国立大学病院の事務職員になるにはまず国立大学の事務職員になる必要がありますよ」、の二言で終わります。

 かなり詳しく言うと、「国立大学病院の事務職員はその病院の所属する大学の事務職員であるため、あなたはまず国立大学の事務職員になる必要があります。国立大学の事務職員は公務員試験ではありませんが、ほぼ公務員試験に順ずる試験と言えるもので、筆記試験などもありますのである程度勉強する必要もあります。難易度は国家公務員二種を少し易しくした程度と考えてください。あ、でも問題は専門がなくて教養のみ、要するにセンター試験と変わらないですよ?この試験を統括するのは国立大学協会というところです。試験は各地域によって分かれていますので、あなたの希望する大学がある地域の試験を受けてください。ちなみに採用に関して、その試験区分の中であれば他の大学に入ることも可能です。逆に試験区分外の大学には入れないので注意してください。各地域区分は上は北海道、下は九州まで七地区です。ひとつ覚えておいて欲しいことがあります。この試験、「国立大学法人「等」職員採用試験」などの名称が示すとおり、大学以外の施設の職員を採用する試験でもあるのです。関東甲信越地域国立大学法人等職員採用試験を例に取ると「26国立大学法人と4機構7機関の大学共同利用機関法人、7国立高等専門学校、15独立行政法人」が就職先として選べてます。「就職先として選べてる」なんていうと夢が膨らんでしまいますが、仮に試験には合格したものの長く険しい就職活動に疲れて、「大学じゃなくてもいいや。この機関に入ろう」とかいうことにもなりかねないということですからね?特に国立大学は各種の研究機関に比べれば採用人数も多いし人気が高いと思いますので、本当に大学職員、ひいては大学病院職員になりたいなら試験勉強と面接対策はかなりやっておく必要がある点、肝に銘じておいてください。さてさて、晴れてあなたが国立大学事務職員になれたとしても、そこから病院事務職員になれるとは限りません。国立大学病院の人数割振というものは、大学職員数にしめる割合こそ多いものの、それは医師や看護師の人数が多いことに起因することで、事務職員の割振数は普通の部局(工学部や文学部、事務局など)よりちょっと多いくらいです。異動の意向を聞かれた際、常に「病院」と言っておけばいつかは配属されるだろうとは思いますが、新入社員がいきなり病院に配属されるのは偶然でしかありませんので、その点はしっかり把握しておいてください。じゃ、そういうわけで、頑張ってくださいね~」の二十言くらいで終わります。

 分かっていると思いますが、電話対応でここまでしゃべるとほぼ嫌がらせですw
 良識ある大学病院事務職員の皆様は真似しないでくださいね。


※2008年9月28日:試験区分のことについてDAF様からいただいたコメントにより、一部修正を加えました。

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 あいかわらず見るものが少ない国立大学職員日記です。

 実は今現在の所属が大学病院になってしまったため、正確には国立大学病院職員日記と表記しなければならなくなってしまいました。でもまぁ、事務的な作業で普通の大学職員日記と共通するところがほとんどなので、この表題のまま文章を書き進めようと思っております。

 ちなみに全国に大学病院はこれだけあるので、どこに勤めているかは特定されないでしょう。(まぁ、バイクのツーリング日誌を読めば「どこに住んでるからどこの大学だな」なんて具合に丸分かりなんですけどねw)

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