国立大学職員日記
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国立大学職員日記:記事一覧




■はじめに
 今回は国立大学における非正規職員(いわゆるパートタイム労働者)にスポットを当ててみたいと思います。
 国立大学で働く職員は大別して二つに分けることができます。「正規職員」と「非正規職員」です。一般に「国立大学職員」といえば一般にそれは「正規職員」を指します(少なくともこのサイトではそのような意味合いで使っています)が、実際の現場を覗いてみると「非正規職員」さんの存在は決して無視できるようなものではありません。運営費交付金が削減される中で国立大学における「非正規職員」の存在はその業務量や従事する業務の質の両方で高まっており、今や国立大学は「非正規職員」さんの存在も含めて国立大学として機能しているとさえ言えます。昨今問題となるような「官制ワーキングプア」や「非正規職員の雇い止め」といった問題も、国立大学職員にとっては単なる社会問題の一つに限らず、国立大学の全体像にも影響を及ぼしうる問題な訳です(たぶん)。


■「非正規職員」にもいろいろある
 さて、一言で「非正規職員」と言ってもその種類は様々です。何と言っても「正規職員以外はみんな非正規職員」な訳ですから。今回のエントリーにおいては主に「事務系正規職員と同じフロアで働く事務系非正規職員」を中心に説明します(※これ、大事です)が、それ以外の非正規職員についてもここで簡単に触れておきたいと思います。

【教員系非正規職員、研究系非正規職員】
 「教育・研究方面に従事する」という点でそれ以外の「非正規職員」と区別されます。
 「年俸制職員」「特任教員」「客員研究員」「外国人特別研究員」「非常勤講師」などの呼称や種類があります。その大学に在籍していない、あるいはその大学が給料を払っている訳ではない職員さんも含まれるので、厳密な意味では「非正規職員」ですらない職員さんも含まれますが、「正規職員ではなく、教員・研究系に属する方々」という意味で、自分はこれらの職員さんで一つのカテゴリーを作れると考えています。
 「特任教員」は通常の教員のように「特任教授」「特任准教授」「特任講師」「特任助教」と分けることができます。原則全員が有期雇用であり、「特任教授」といえど教授会には出席できません。研究主体としては通常の教員とそこまで区別されてるようには見受けられませんが、大学の意思決定に参加できない点で、「正規」とは違う存在のように感じられます。

【技術系非正規職員】
 「研究こそしないものの、研究室などにおいて専門知識を必要とする業務や、研究をサポートするルーティン業務を行う非正規職員」と個人的には理解しています。
 自分の大学ではフルタイムで働く場合は「技術補佐員」、パートタイムで働く場合は「技術補助員」と区別され、それぞれに別の就業規則が適用されます。「補佐員」と「補助員」の区別の仕方は事務系非正規職員においても同様で、給与面での待遇が結構違うところもあります。そのあたりは事務系のところで後述します。
 「技術系」とありますが、かならずしも専門知識を持った人間ばかりがいる訳ではありません。「実験データの整理を行う」といったように、半ば事務系ともいえる業務を行う技術系非正規職員さんもいます。もちろんその一方で、大学でその分野を専攻し、「実験データの解析」を行うような、研究系と事務系の中間に位置するような職員さんもいます。また極稀にですが、技術系非正規職員から特任教員になるような「教員の補欠的存在」な方もいます。研究室に財源があれば割と自由に採用できるようなので、一口に「技術系非正規職員」と言ってもその幅は広いようです。
 ちなみに大学病院等においては看護師や医療技術者の分野に「技術系非正規職員」がいますが、この方々はそれ以外の非正規職員に比べるとほとんど「準・正規職員」か、あるいは「任期付正規職員」のように取り扱われている側面が多いので、今回のエントリーではその特殊性から説明は省きます。

【TA(ティーチング・アシスタント)、RA(リサーチ・アシスタント)、短期間勤務職員】
 これらの非正規職員は「パートタイム職員の内で業務従事時間が殊更短い職員」と位置づけられるかもしれません。
 TAとRAに関しては大学院生のアルバイト的な性格があると思います。名前の通り、教員の講義の補助をしたり、研究の補助をしたりします。一ヶ月の業務従事時間も30時間とかそんな感じで、あくまで本業は学生として位置づけられる方々です。短時間勤務職員においては「日雇い労働」的な正確が強く、毎月2~3回の業務に従事したり、あるイベントに数時間だけ従事して終わるものもあります。短時間勤務職員においては学部生が行うことも珍しくありません。

【嘱託職員】
 人数は極めて少ないですが存在します。基本的に「事務系非正規職員」の一分類です。自分の大学では嘱託職員と呼ばれる方々はみんな定年退職した正規職員です。業務こそ「非正規職員」ですが、なにせ「数年前まで部局の課長をやっていました」なんて人もいるので通常の事務系非正規職員とは嫌が応にも区別する必要があります。

【研究室勤務の事務系非正規職員(秘書さん)】
 上述した「技術系非正規職員」も一部に含みますが、「事務室」ではなく教授などがいる「研究室」で業務に従事する「事務系非正規職員」はいわゆる「秘書」と呼ばれる存在です。事務系非正規職員をあえて「秘書さん」と「それ以外」に区別する必要は無いかもしれませんが、自分のような事務系正規職員から見ると研究室という環境で働いているという意味と、日常的に「秘書さん」という風に呼称し、また秘書的業務を行っているという意味で、こういうカテゴリーに分けてしまいたくなるのです。
 業務内容は研究室によって種々様々ですが、「研究室にいる教員の事務手続きを本人に代わって事務室とやりとりする」点から、我々事務室にいる事務員から見ると、この「秘書さん」が研究室の窓口役になっています。また給与面においても教授の持っている財源などでその内容が決定されるので、月当たりの勤務日数や時給などもかなりいろいろと分かれています。部局によっては「教授一人につき秘書一人は当たり前」なんてところもあるようで、大学全体で数えればかなりの数の秘書さんがいたりもします。

 ちょいと長くなりましたが非正規職員の種類について知っている限りを書いてみました。ここで書いた種類のどこにも属さないのが「事務系正規職員と同じフロアで働く事務系非正規職員」で、以降は単純に「非正規職員」と呼びます。


■「非正規職員」はどのように構成されているか
 「国立大学で働く非正規職員」あるいは「国立大学で働くパートタイム労働者」といった時にどのような人物像を想像するでしょうか。「なんとなく温和な感じの人」といった印象を受けたとしてもそれを裏付ける資料がないので、ここでは裏付けることができる資料の中から「非正規職員」のイメージを形作ってみようと思います。まずは下記の三つの資料をご覧下さい(このデータはここで言う「非正規職員」、つまり「事務系正規職員と同じフロアで働く事務系非正規職員」のものです)。







 まずもっとも顕著な特徴として挙げられるのがその男女比です。自分の大学で統計をとると実に全体の92%が女性でした。個人的には「8%も男性がいたのか!?」と思うところですが、とにかく個人的な印象からしても国立大学の非正規職員には女性が多いのです。もしこのデータを上で挙げたいわゆる「秘書さん」に限定するなら女性の割合はさらに高くなると思います。
 次に年齢構成です。これは24歳以下の人数を100とした場合の各年齢層の比較をしています。30歳から34歳をピークにしてその後はゆるやかに減少していっています。いまどきの言葉を使うなら「アラサー」が中心というところでしょうか。
 最終学歴においては大学卒がもっとも多いですが、以前のエントリーにおける正規職員の最終学歴と比べると、短大卒業者の割合が飛躍的に多いのが特徴的です。また統計をとるなかで目を通した学校名に注目すると、「女子大卒業者」や「私大卒業者」の割合が正規職員に比べて多い気がしました。
 データから調べることができたのは以上の3種類のみです。以上のデータから総合して、国立大学で働く非正規職員とは「大学か短大を卒業した20歳台後半から30歳台の女性」というイメージが浮かび上がります。なぜこのような層が厚いのかはデータだけでは読み取れませんが、「国立大学がこのような層を選出している」というよりかは「国立大学の非正規職員の募集にはこのような層が主に応募をしてくる」のだと思います。他の国立大学でもこのような感じなのでしょうか。あるいは民間ではどうなのでしょうか。データがあればぜひ調べて見たいところです。


■一旦切ります
 国立大学における非正規職員の就業実態は以前からエントリーに載せたいなと思っていろいろと下調べをしていたのですが、いろいろと調べる内容やら載せたい内容やらが多くなってしまい、まとめるのに時間がかかっています。申し訳ありませんが、今回はここで一旦切ります。次回は非正規職員を給与面などをまとめてみたいと思います。最近残業が多いので次の更新がいつになるか、ちょっと心配ですがお待ちいただければと思います。
 非正規職員について質問や「自分の大学ではこうなっていますよ」といった情報があればコメント欄に書き込みください。次回の更新の参考意見にさせていただきます。

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