国立大学職員日記
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 今回は国立大学事務職員の初任給がどう算出されるかについてのエントリーです。「国立大学事務職員の」と銘打っている以上、あくまで国立大学事務職員を中心に扱いますが、内容はほぼ全て国家公務員の初任給計算と同じです。国立大学事務職員や国家公務員Ⅱ種の中途採用を受験される方、あるいは公務員の初任給に関心がある方の参考になれば幸いです。
 総論的なものを説明したあとに各論的なもの、つまりケース毎の実際の計算例を示そうかと思っていますが、調べる資料やら勉強しなくてはいけないことがとんでもない量なので途中で諦めるかもしれません。どうか寛大な心で読んでください。

■初任給計算のイメージについて
 国立大学事務職員や国家公務員の初任給はその計算方法が極めて厳密に定められています。そしてただ規程が細かいだけならまだしも、これが人事院規則や給実甲、さらには給実乙という滅多にお目にかからない通知にも影響を受けていて、はっきり言って給与決定の事務に関与したことがない人間にはさっぱり訳の分からない事務処理になっています。今回のエントリーで紹介する内容も、あくまで人事院規則9-8や給実甲第326号を中心とした大雑把なものであることを念頭においてください。
 そんな初任給決定ですが、このエントリーではイメージを捉えやすくするために、初任給決定をまず「(狭義の)初任給」「修学年数調整」「経験年数調整」という3つのパーツに分けて説明していきます。

(「(狭義の)初任給」について)
 「(狭義の)初任給」とは調整らしい調整をせずとも与えられる、初任給計算においてスタート地点となる級号俸のことを指します。これを建築に例えるなら住宅の基礎工事部分とか土台に該当するものであって、この上に「修学年数調整」や「経験年数調整」の処理によって計算された号俸を設置していくことになります。
 国立大学事務職員の場合は「(狭義の)初任給」をそのまま「1級25号俸」に置き換えることが可能であり、極端な話、「「1級25号俸」にどれくらいの号俸を加えたり減じたりするかの事務処理」が「国立大学事職員の初任給計算」とすら言えます。
 ではこの「1級25号俸」という数字はどこから出てきた数字なのか。これについては人事院規則9-8の別表第二に根拠があります。下の図をご覧ください。



 これは初任給基準表と呼ばれるもので、国家公務員の「(狭義の)初任給」はこの表の試験区分に応じて決定されます。 国立大学事務職員は「国家公務員Ⅱ種採用者」と同等に扱われるため、色づけをした部分を「準用」して、その「(狭義の)初任給」が「1級25号俸」となっている訳です。
 また、この表が「試験区分」に応じて「(狭義の)初任給」を定めていることからも分かるとおり、「(狭義の)初任給」とは「試験に合格したことに対して与えられるもの」と捉えることも可能です。つまりこの表のみでは、大卒だろうと院卒だろうと、あるいは民間企業に勤めた経験があろうと無かろうと、採用試験を合格した者には一律に「1級25号俸」が与えられることになります。一見平等なようですが、大学院や民間企業で経験を積んだ人間が学部卒業者の新卒と同じ給与からしか働き始められない、というのはあまりに支障があるため、この「(狭義の)初任給」に加えて「学歴」や「職歴」、言い換えると「修学年数」や「経験年数」に応じてさらなる調整が必要となってきます。これらが次に行われる「修学年数調整」や「経験年数調整」です。


(「修学年数調整」について)
 土台となる「1級25号俸」に「学歴」に応じた調整を行うのが「修学年数調整」です。再び上の初任給基準表をご覧ください。
 「試験」の他に「学歴免許等」という項目があり、試験区分が「Ⅱ種」、つまり国立大学事務職員の部分はこれが「大学卒」となっています(正確には人事院規則9-8のこの表にはこのような文言は入っていません。しかし、注意書きにもあるとおり、第14条第2項にこの項目に入れるべき文言の定めがあり、この表のように読むことができるのです)。これは「1級25号俸」という「(狭義の)初任給」が、最終学歴「大学卒(4年制大学卒業)」の者を想定しているという意味です。そのため、最終学歴「大学卒」の者はこの「(狭義の)初任給」の後に「修学年数調整」を行う必要はありませんが、その他の者はその最終学歴に応じて「修学年数調整」を行う必要が出てきます。下の図をご覧ください。



 これは人事院規則9-8から最終学歴「大学卒」の場合の「修学年数調整」を抜粋し、加える号俸数を付け加えたものです。
 「年数」の部分は極めてシンプルで、最終学歴を正規の年数で終えた場合の、4年制大学卒業者との在学期間の差を列挙しています。「号俸」はその在学期間の差の年数に「4号俸」を掛けたもので、この号俸数が「修学年数調整」によって「1級25号俸」に加えられこととなります。なぜ「1年=4号俸」かと言うと、既に採用されている職員の昇給が「1年」毎に「4号俸」だからです。「1年=4号俸」のルールは「経験年数調整」でも出てきますし、国家公務員の俸給における基本的なルールとすら言えるので、知らなかった方はぜひ覚えておいて下さい。
 「修学年数調整」はルール自体は極めて簡素で分かりやすいかと思います。しかしここで気をつけていただきたいのは、「在学期間=修学年数調整」では無いという点です。つまり「修学年数調整」で処理しない「在学期間」が存在するのです。このあたりについては「経験年数調整」で説明します。また、「下位区分適用」というやや例外的な処理もあるので、それについても改めて後述する予定です。とにかく「修学年数調整」に少々の例外的な処理がありうることを頭の片隅に置いておいてください。

(「経験年数調整」について)
 「経験年数調整」も「修学年数調整」と同じく、土台となる「1級25号俸」に「職歴」に応じた調整を行うものです。
 この「経験年数調整」に関しては、他の二つよりも詳しい説明が必要となるため、一旦ここで説明を区切って次章から説明をすることといたします。

 とりあえず現時点において、国立大学事務職員の初任給の決定は「(狭義の)初任給」「修学年数調整」「経験年数調整」の3つのステップから処理され、「1級25号俸」という数字に「学歴」と「職歴」に応じた号俸が加算(場合によっては減算)される、ということを整理してください。




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