国立大学職員日記
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国立大学職員日記:記事一覧




■はじめに
 なんだかんだで国家公務員給与削減法案が年内に成立する見通しとなりました。お給料が下がってしまうのは正直言って少し残念ですが、何はともあれ法案の成立に伴い平成23年の人事院勧告が実施されることとなった点については素直に良かったなと思っています。
 さて、そんな国家公務員給与削減法案ですが、ニュースなど見ても「平均7.8%削減」などの言葉が見られる限りで、その具体的な金額がはっきりしません。あえてハッキリさせない方がいいのかな、と思わなくも無いですが、こういういらんことに足突っ込んで地雷を踏むのが大好きな自分は、法案がまだ成立していないのに内容を調べて「こんなにお給料減っちゃいますよ!」と無駄に扇情的なエントリーを作って当ブログのアクセス数大幅アップを画策しております。
 そんな訳で千年に一度と言われた大震災が国家公務員の給与にいかに影響したか、その内容を下のとおりにご覧ください。

■注意事項(※重要)
 本エントリーの内容は第179回国会で提出された「一般職の国家公務員の給与の改定及び臨時特例等に関する法律案」の内容に沿って作成されていますが、この法案は既に「撤回」されています。現在は第180回国会で提出された「国家公務員の給与の改定及び臨時特例等に関する法律案」がいわゆる国家公務員給与削減法案の最新案です。本来ならこの第180回国会の法律案でデータを作成すべきなのですが、法案内容を取得することが出来なかったため、第179回国会提出法案でもって本エントリーを作成いたしました。
 この2つの内容の差異については詳しく調べていません。「一部修正になったらしいけど、給与の削減部分に関する数値はたぶん変わってないべ?」くらいのひどく無責任な感覚で本エントリーを作っていますので、間違っても本エントリーを真面目な記事作成の参考にはしないでください。あと、このことについて恨むなら、さっさと第180回国会で提出された法案の本文内容をホームページに掲載しない衆議院事務局を恨んでください(まぁ木曜日に提出された法案を、金曜日の退勤時間までに掲載すれ、というのは無茶な要求かも知れませんが)。

【参考:衆議院ホームページ】
第180回国会 議案の一覧
・最新法案の審議状況(第180回国会 衆第1号)
 →議案名「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律案」の審議経過情報
・今回参照した法案(既に撤回済の第179回国会 衆第1号の法案本文)
 →一般職の国家公務員の給与の改定及び臨時特例等に関する法律案

■今回の削減の内容について:「人事院勧告」と「臨時特例」
 今回の国家公務員給与削減法案についてまず注意すべき点は、この法案が「平成23年人事院勧告の実施」と「東日本大震災の復興財源捻出のための臨時特例」という二つの性質を併せ持っているという点です。早い話が、前者は今回の地震があっても無くても実施されたであろう内容であり、後者は今回の地震があったから実施された内容です。
 人事院勧告は通常8月頃に出されるので、通常はこの人事院勧告を実施する内容の法律は12月ボーナスには間に合うように12月初めくらい成立します。しかし今回は与党の馬鹿どものお粗末な対応のせいで東日本大震災に絡む複雑な調整の影響を受け、年度末ギリギリの成立となりました。このような対応は人事院勧告に関する過去の経緯から見ても前代未聞で開いた口が塞がらない割と珍しく、「平成24年3月31日付け退職者に余計に支払われた給与はどうする気だ?」と衆参両議院の各委員会で「人事院勧告は特例法案に内包される」とか言っていた議員を小一時間問い詰めたい衝動を抑え切れnとにかく珍しいと思います。
 また、今回は上のとおり例年にはないスケジュールで実施されるために、その「削減のタイミング」が非常にユニークなものになっています。具体的には次の図のとおりで、平成24年6月ボーナスで平成23年度分の人事院勧告分を削減し、臨時特例部分の削減については平成24年4月から平成26年の3月まで、淡々と続いていくことになっています。



■具体的な削減金額について(人事院勧告)
 次に具体的な削減金額について説明します。
 まず人事院勧告における削減、つまり「平成23年度に余計に支払われていた部分を平成24年6月ボーナスで回収する部分」については、計算は次のとおりとなります。




 図にも書いてあるとおり、この削減分については個人個人で金額が変わりやすいため、もの凄く大雑把に算出しています。また最終的な金額を見てもわかるように、金額自体は1年分(つまり平成23年分)あわせてもそこまで大きな額にはなりません。

■具体的な削減金額について(特例法案)
 上で「人事院勧告削減分はあまり大きな額にはなりません」と書きましたが、じゃあなにが「大きな金額になるんだ」といえば次の「特例法案による削減分」です。これについては年収ベースで考えると本当にちょっと洒落にならないくらい大きな金額になります。ローンを持っている教職員は冗談でなく今後2年間の返済ペースを再考してみたほうがいいかもしれません。また国立大学教員を商売相手にしている方は、一人あたり次の金額の年収が減ることに考慮の上、今後2年間のセールス活動はある程度きついものになることを覚悟した方が良いかもしれません。
 今回は国立大学事務職員と国立大学教員に該当する「行政職(一)」と「教育職(一)」について、各級号俸ごとの最終的な年収削減金額を表にまとめてみました(そのため恐ろしく長いです)。国立大学事務職員については、国家公務員の俸給表とほぼ一致していると思うので問題はありませんが、国立大学教員については国家公務員の俸給表とは一部ことなる表を用いている国立大学があるので注意が必要です。とりあえずここでは「教授:4級」「准教授:3級」「講師:2級」「助教:1級」を目安にしてください(5級は困難な業務を行う教授など、やや特殊な例です)。また自分の級や号俸が分からない場合は、「平成24年1月の給与明細に記載されている給与月額」を表中の「給与月額(旧)」と照らし合わせ、大体の目安としてください。
 またちょっと分かりにくいですが、表中の「人事院勧告」の部分は「特例法案の計算の元となる基本給」が、「特例法案中の俸給表の改定によってどれだけ下がったか」を示すものです。この部分の削減は上の章で書いた人事院勧告分の削減とは無関係ですので、ご注意ください(上の人事院勧告削減分と、表中の削減分の二重削減にはなっていない、ということです)。
 最終的な「年収ベースでのダウン金額」は表の一番右を見てもらえば分かりますので、もし昨年度と同じくらいの貯蓄やら消費やらを行いたい教職員は、平成24年から平成25年はこの金額分、どこかで節約したり何か物を買うのを我慢しなくてはなりませんので、これもご注意ください(あるいは毎年「貯蓄0円」の教職員は、この金額分浮かせないと、しばらくは赤字になっちゃいますよ?)。



















■おわりに
 ということで平成24年2月下旬における国家公務員給与削減法案の給与への影響でした。
 この法律の是非自体は国会で法律が成立しちゃえばもう文句のつけようもないのでここであーだこーだは言いませんが、個人的にはこんなに給与を減らして社会全体の個人消費に影響しないのかが少し心配です。このあたりについて、自分はどうも経済に疎いので、法案全体による削減金額約6000億円が社会全体の個人消費の冷え込みにどう影響を与え得るかはよく分かりません。各種報道でこの点を大きく取りあげていないところを見ると多分大丈夫なんだろうと思いますが(あるいは削減分は復興特需という形で社会に還元されるので問題ない?)、国家公務員や国立大学教員をお得様に持つ業界は一応今回の事情は知っておいたほうがいいと思います。
 ちなみに自分の場合は年収の額面で40万円くらい、手取りで恐らく35万円ほどは落ち込むと思うので、とりあえず今年の夏に予定していたオートバイの新車購入は諦めて、また中古車を購入することにしました。あと使用しているPCがWindowsXPなので、これをWindows7へ乗り換えるついでに、PC本体も高性能なグラフィックボードを組み込めるタイプに自作しようと思ったのですが、これもWindowsXPのサポートが終了するギリギリ(ちょうど特例法案の期限が切れるあたり)まで、お預けにしとこうかなと思っています。
 つきましては自分が買いに行ったかもしれないバイク販売店・マイクロソフト社・PCパーツ販売店に置かれまして以上のような事情のため、この点悪しからずご容赦くださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

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■はじめに
 今回は国立大学、特にその大学病院や医学部附属病院に勤務する看護師さんらの年収情報等をまとめてみました。
 このブログで「看護師」を扱うことを意外に思われる方がいるかもしれませんが、実は国立大学という機関はめちゃくちゃたくさんの看護師さんを抱えています。全体で見れば事務職員約2万6千人に対し、看護師さんは約1万8千人です。これだけでもかなりの人数がいることが分かりますが、大学によっては事務職員以上に看護師がいる国立大学もかなりたくさんあります(下図参照)。こういう大学では早い話が、「事務職員vs看護師」でガチの殴り合いが始まれば事務職員がボコボコにされてしまっても全然不思議ではない訳で、意外と国立大学事務職員は看護師さんに頭が上がりません。
 さてそんな看護師さん達ですが、幸い国立大学では毎年度に給与水準を公開しているため、各大学ごとの詳細な年収情報を収集することが出来ました。例のごとく、一部の情報はグラフを手作業で数値化したため、完全なものではありませんが、これらの一覧が国立大学に勤める看護師さんの労働条件等の参考になれば幸いです。




■平成22年度 国立大学病院看護師「平均年収・人数」等の一覧
 対象となる42国立大学分を一度に載せるとページが重くなるため、各地区毎に分割して掲載します。

 → 東北・北海道地区
     ・北海道大学
     ・旭川医科大学
     ・弘前大学
     ・東北大学
     ・秋田大学
     ・山形大学

 → 関東・甲信越地区
     ・筑波大学
     ・群馬大学
     ・千葉大学
     ・東京大学
     ・東京医科歯科大学
     ・新潟大学
     ・山梨大学
     ・信州大学

 → 近畿・中部地区
     ・富山大学
     ・金沢大学
     ・福井大学
     ・岐阜大学
     ・浜松医科大学
     ・名古屋大学
     ・三重大学
     ・滋賀医科大学
     ・京都大学
     ・大阪大学
     ・神戸大学

 → 四国・中国地区
     ・鳥取大学
     ・島根大学
     ・岡山大学
     ・広島大学
     ・山口大学
     ・徳島大学
     ・香川大学
     ・愛媛大学
     ・高知大学

 → 九州地区
     ・九州大学
     ・佐賀大学
     ・長崎大学
     ・熊本大学
     ・大分大学
     ・宮崎大学
     ・鹿児島大学
     ・琉球大学



※使用した情報について
 基本的な情報は文部科学省及び各国立大学が公表している「国立大学法人等の役職員の給与等の水準(平成22年度版)」を使用しています(一覧はこちら)。病院名や住所については「国立大学病院看護部長会議」のページから引用しました。
 年収や人数について、「職種」の部分は公表されている数値を直接引用しているので、データの転載間違いが無い限り正確なものです。また「職種」欄の「0人」や「0.0万円」の表記は、「該当者無し」か「個人が特定されるため公表せず」を意味しています。今回、特に両者は区別していませんので、人数が「0人」なら「該当者無し」、人数が0人ではないのに年収が載っていなければ「個人が特定されるため公表せず」だと思ってください。ちなみに一部の大学で明らかにその職種に該当者がいるにも関わらず(また個人特定をされる恐れが無いにも関わらず)、年収や人数を公表していないところがあります。恐らくこれは総務省が作成した作成見本(8頁)にその職種が載っていなかったので「載せなくていいや」と思って載せていないのだと思います。この対応で問題がないかどうかは知りませんが、個人的には出来れば載せてほしいです。あと「職種」について、一部の大学では「副看護部長」などの名称が違っているところもあったのですが、今回は比較しやすいように全大学で職種名を統一しています。
 「年齢層」の部分は公表されているグラフを手作業で数値化したため、例のごとく誤差があること前提です。具体的な数値は人数の誤差で「-1.6773%~+0.8304%」、年収の誤差で「-2.966%~-0.018%」です。
 なお「全体人数」などは「看護師の職種だけで給与水準をまとめた資料」が上記の給与等の水準の公開時に資料として作成されていますので、各年度のそれを使用しています。「ラス指数」とは「ラスパイレス指数」のことで、国家公務員の平均水準を100とした場合の、各自の給与水準を表しています。これについて、「一見すると年度経過にしたがって平均年収が下がっているように見えても、実はラスパイレス指数が上がっている(つまり対国家公務員で考えれば受け取る年収は相対的に増えている)」という場合もあるので、平均年収などと併せてラスパイレス指数も参照してみてください。
 その他、情報はなるべく正確を期したつもりですが、個人で作っているもののため一部に間違いがあるかも知れません。ひどいものは直すつもりですが、あくまで話のタネにする程度の参考として本エントリーは見ていただきたく、正確な数値は情報源も明記していますので、そちらを参照くださいますよう、よろしくお願いいたします。


■今後の話
 今回のエントリーを作成していてふと思ったのですが、「年齢層」が4年毎に作成されていることに鑑み、例えば平成18年度と平成22年度の各「年齢層」の推移を調べることによって看護師の離職率を(完全に正確なものではなく、あくまで全体人数の「見かけ上」のものですが)算出することが出来るのではないでしょうか。今回は時間が無かったためこのデータの作成は断念しましたが、大学病院によっては看護師の離職率を下げようと努力しているところもあると聞いていますので、これはいつか時期を見つけて作成してみようと思っています。
 この他、看護師さん(医療職(三)俸給表系職員)の給与についてはその体系(給与決定など)や実態が国立大学事務職員と異なった独自の部分も多いと聞くので、コツコツ情報収集してエントリーとしてまとめられるものはまとめてみようと思っています。


■おわりに
 ドイツの「トーマス・マン」という小説家の作品に「魔の山」という長編小説があります。作品それ自体は入院している主人公を中心に話が進むのですが、自分はこの作品に出てくる医師の医療にかける情熱、またこれは文中に出てくる表現なのですが、「病気なんてナンセンスなものはこの俺が全て解決してやる」という言葉が非常に好きで、ことあるごとに思い返して仕事のやる気を上げています。
 自分はこのエントリーで最初に「国立大学事務職員は人数の多い看護師には頭が上がらない」なんて書きましたが、そんなことを抜かしても、毎日医療現場で勤務に励む看護師さん達には、医師やコメディカルの方々も含め、同じ大学に勤務する職員として心底頭が上がりません。国立大学は法人化してしばらくの時が経ちましたが、まだまだ煩雑な事務手続きで医療現場にいらぬ手間を掛けさせている面もあるかと思います。この抜本的な改善は決して一筋縄では行かないでしょうが、いつかは自分も、小説に出てきた医師のように「そんなナンセンスなもの」を自分の手で解決してやろうと、虎視眈々と時機を狙っております。
 現在、大学病院を持つ国立大学は日本に42あります。自分はその中の一つにおりますので、もし自分と目的を同じくする看護師さんがいるのであれば、いつか一緒に働けることを願っております。

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