国立大学職員日記
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 平成21年2月2日付けの「人事管理通信」に本府省業務調整手当に関する国会の質疑応答要旨が載っていて、読んでみるとなかなかに興味深い内容だったので少し調べて見ました。

※なお名称に関して「本省手当」「本府省手当」「本府省調整手当」といろいろあるようですが、このエントリーでは法律上の正式名称である「本府省業務調整手当」で統一します。


■創設される新手当「本府省業務調整手当」

 国家公務員に適用される手当は「一般職の職員の給与に関する法律」、通称「給与法」がこれを定め、その詳しい部分については人事院規則により補足されます。平成21年2月11日現在、「給与法」上に「本府省業務調整手当」という項目はありません。しかしその内容は「平成二十年十二月二十六日法律第九十四号」(以下「法律第94号」)という法令を見ることにより確認することができます。また、人事院規則には「人事院規則9―123(本府省業務調整手当)」という項目名で既に記載があります。
 「給与法」上に定めがないのに人事院規則に定めがあるというのはちょっと違和感があるかも知れません。このあたりについて文言を読むと、「給与法」という法律を変更するための法令である「法律第94号」が平成20年12月26日に「成立」し、この法令の中で「給与法」の改正は平成21年4月1日に行う(正確には「給与法」を変更する「法律第94号」が平成21年4月1日に「施行」されるので、自動的に「給与法」も平成21年4月1日に変更されるという仕組みです。ややこしいですね)と書かれてあります。「法律第94号」は「施行」されないまでも既に「成立」しており、その文中で「必要な事項は人事院規則で定める」とあるので、平成21年4月1日を前に、人事院規則に本府省業務調整手当の項目が新設されたということではないでしょうか。ちなみにこの「人事院規則9―123(本府省業務調整手当)」は平成21年2月2日付けで「成立」し、平成21年4月1日から「施行」されるとあります。
 ちょっと話はずれますが、自分にとって法律でよく見かける「この法律は平成○○年○○月○○日から施行する」という文言は多くの場合は読み飛ばすくらいの存在でしかありませんでした。しかし今回のように新しい手当の創設を前にすると案外無視できないものです。なんかこういうのを調べていると時代の変化の真っ只中にいるかのような臨場感が感じられて少し興奮しました。日本の歴史上、法律整備に関わる人間を除けばこの文言に興奮した国立大学職員は…、多分自分くらいなものでしょうね。


■「本府省業務調整手当」、だれが受け取るのか?

 これくらい受け取る人間を名称にはっきりと明記している手当も珍しいですが「法律第94号」を見るとこの手当の支給を受ける者は次の二点の「業務」に従事している者だそうです。

 一つ目の業務は「内部部局」の業務です。「内部部局」とは聞きなれない言葉ですが、Wikipediaによれば「日本の行政組織において、府・省・庁・委員会の中に置かれる組織の細目の一つで、府省庁内の本体部分を構成する組織」であり、国立大学を管轄する文部科学省では以下の8つが該当するそうです。
 ・ 大臣官房
 ・ 生涯学習政策局
 ・ 初等中等教育局
 ・ 高等教育局
 ・ 科学技術・学術政策局
 ・ 研究振興局
 ・ 研究開発局
 ・ スポーツ・青少年局
 また人事院規則には「内部部局」意外にも、「本省に置かれる職」という表現があります(この文言は文部科学省他、幾つかの府省庁に記載がありますが、「内部部局」のみとしているところが多数派です)。これは恐らく文部科学省の外局にあたる「文化庁」と、「国際統括官」を指しているのだと思います。ひっくるめて考えれば、要するに「本省」で働く職員さんに支給される、ということなのでしょう。
 
 二つ目の業務は、一つ目の業務と「同様な業務の特殊性及び困難性並びに職員の確保の困難性があると認められるもの」だそうです。これについては人事院規則に細かい規定があります。文部科学省の場合は以下の6つの業務です。
 (イ) 大臣官房文教施設企画部の業務で人事院が定めるもの
 (ロ) 六ヶ所保障措置センター、
     原子力安全管理事務所及び
     横須賀原子力艦モニタリングセンターの業務で人事院が定めるもの
 (ハ) 研究交流センターの業務
 (ニ) 敦賀原子力事務所の業務で人事院が定めるもの
 (ホ) スポーツ・青少年局企画・体育課の業務で人事院が定めるもの
 (ヘ) 登山研修所の業務
 原子力関係の業務が二つあります。ここらへんは特殊性とか安全性を考えれば本省と同視すべきでしょう。中には原子力艦モニタリングセンターなんて凄そうなところもあります。「人事院が定めるもの」とあるので、恐らく事務職員には適用はないのでしょうが、機会があれば配属されてみたいようなところですねぇ。他の業務で少し疑問なのは「大臣官房文教施設企画部」と「スポーツ・青少年局」についてです。文部科学省の組織図を見る限り施設企画部については大臣官房に含まれるのかと思っていたのですが、こうして別に規定を設けるところを見ると、大臣官房とは区別される組織であり、また「内部部局」とも見なされない部のようです。スポーツ・青少年局については「企画・体育課」と限定されていますが…、「スポーツ・青少年局」自体が「内部部局」ではないのでしょうか。あるいは霞ヶ関に基点を置かない組織なのでしょうか。いまいちこの局の扱いが分かりません。

 ちなみに国立大学は当たり前のごとく「内部部局」ですらありませんしそもそも法人化したので「文部科学省」にも含まれません。もちろん本省に行けばこの手当の支給は受けますが、国立大学という枠に留まる限り、この手当の支給は受けないというか、この手当を規定する「給与法」の適用すら受けません。そういう意味で「国立大学職員」がこの手当をもらうことは100%ありえません。就業規則に規定を置けば話は別ですが、かつて国家公務員であった時も国立大学は文部科学省の地方出先機関という位置づけでしたから、就業規則にこの規定を置く、というのも恐らく考えられないでしょう(ではこの手当は国立大学職員には全く無関係なのかというとそうでもありません。このあたりについては後述します)。


■「本府省業務調整手当」、気になるその金額は?

 国立大学職員がもらえないことがはっきりしたこの手当ですが話を進めます。恐らくもっとも気になるであろう点は「いったいいくらもらえるのか?」ということでしょう。これは人事院規則に定めが置かれています。以下をご覧ください。

行政職俸給表(一)
級数金額職務
7級以上4万1400円室長・課長
6級3万8800円課長補佐
5級3万7100円課長補佐
4級7400円係長
3級5800円主任・係長
2級2200円主任
1級1800円係員



 表上は「職務」も入れていますが、規定上は「職務の級に応じ」て支給されることとなっています。表上の職務は自分が級別標準職務表の本省の部分を参考にしていれてみました。
 ここで自分が「あれ?」と思ったのは、「7級以上」という表現です。後述しますが、この「本府省業務調整手当」は平成17年の人事院勧告で創設が謳われており、それによればこの手当は本省で働く課長補佐・係長・係員が支給対象となっていたはずです。規則で6級までとしたならこの通りなのですが、「7級以上」とすると課長も支給対象となってしまいます。このあたりについて、管理職以上となるともらえる手当や調整額の引き下げなどが行われたのかなとも思ったのですが、関係する記述が見つかりません。まぁ課長職だって本省で働いている訳なのでべつに支給しても問題はないと思うのですが、計画段階との整合性が少し気になりました。
 金額に関して、課長補佐と係長の間に随分と開きがあるなと感じました。加えて係長以下の金額が想像以上に少なくて驚きました。個人的にはこの手当は本省の人材確保を第一の目的としているものと理解していたので、1万円にも満たないような手当が誘因となって本省に異動を希望する職員がいるのか、はなはだ疑問です。それとも本省として欲している人材は課長補佐級以上なのでしょうか。このあたり、自分が知っている事情は文部科学省に限られるので必ずしも的を得ているとは思っていませんが、本省に異動を希望する若手職員が減っていて本省が困っているというのが文部科学省含め全省庁で共通の現象かと思っていました。とりあえずこのあたりについては人事院にまかせるとして、少なくとも一国立大学職員としては、本省に異動したところで新たにもらえる手当の額が通勤手当にも満たないような金額だった場合に、その手当が誘因となって本省に異動を希望するようなことはありえないだろうし、本省への人材確保の手段としてはあまりに弱いものだと思わざるを得ません。個人的には係員クラスでも1万円くらいにはなるのだろうなと思っていましたし、逆にそれくらいでないと本省に異動するインセンティブを持ち得ないだろうと思います。もちろん手当のみを目的にして本省へ動く職員はいないでしょうが、それにしてもあまりに額面が低いのではないでしょうか。
 あと手当が基本給の割合に応じたものではなく、級に応じて定額だというのも意外でした。しかしこれに関しては単に定額の手当が少なかったので今回新設される手当も基本給に応じたものになるだろうと個人的に予想していただけで、「官職の職務と責任に応じて」給与を支給すべきとする「職務給の原則」から考えると級別に定額というのはこの原則の方向性に合致するものであり、むしろ個人個人の基本給に応じて支給すればそれは「職務給」というより「職能給」的な意味合いが濃くなってしまうのではないかと納得しました(加えて定額にした方が給与計算が簡単ですしね)。

【2009年3月13日追記】
 上記金額について、平成21年度のみの経過措置の金額であることが判明いたしました。経過措置の金額と本来の金額をまとめなおしたものを「本府省業務調整手当について【追記】」のエントリーに掲載いたしましたので、そちらの方もご参照ください。
【以上、追記終了】


■「本府省業務調整手当」、割を食うのは地方勤務者か?

 「本府省業務調整手当」自体は本省勤務者に支給するものであり、相対的な意味で本省勤務ではない職員の給料が低くなることはあっても、本省勤務ではない職員の給料の額面が実際に低くなることはないように思えます。しかし、今回の「本府省業務調整手当」が平成18年度から平成22年度にかけて行われている給与構造改革の一つであり、「本府省業務調整手当」の原資がこの給与構造改革から捻出されている点に注意が必要です。この給与構造改革で行われた改革の内容は何か、それによって削られた給与とは何か、それは地方にどのような影響を与えたのかに注目しながら、順に見ていくことにします。

 給与構造改革の基盤的なものとして、俸給表水準の引き下げが挙げられます。これは中高年齢層の俸給水準を7%引き下げ、全体としての俸給の引き下げを行ったものです。若年層の俸給水準は引き下げられませんでしたが、全体として4.8%俸給が引き下げられました。これ自体は中央・地方に関係なく行われたものですが、同時に行われた地域手当の新設が中央・地方の給与に関係してきます。
 もともとこの給与構造改革には「地場の民間賃金を反映」させる目的がありました。そのため、まず俸給表水準で全体の水準を引き下げ、その上で各地域ごとの賃金水準に応じた地域手当(旧調整手当)を支給することになりました。調整手当は最高でも基本給の12%が上限でしたが、地域手当においては18%まで引き上げられました。結果、調整手当をもらっていなかった職員の俸給水準は下がり、調整手当をもらっていた職員の俸給水準は、「下がったけれども地域手当で充当された」という訳です。
 これらと同時に行われた措置で、本ブログでおなじみなやつが昇給抑制期間の設定です。くわしくは下に記した過去エントリーを参照してもらうとして、この措置に関しては全年齢の全職員を対象に行われました。

 これらの流れを見る以上、少なくとも地域勤務の国家公務員は本省勤務の国家公務員に比べれば俸給水準が下がったわけで、このような意味で地方勤務者が割を食った(損をした)といえないこともありません。しかしここで忘れてはいけない点は、「本府省業務調整手当」創設のために地方勤務者の俸給水準を下げたわけではない、という点です。
 「人事管理通信」の質疑応答で人事院の方が返答している通り、これらの措置はあくまで給与構造改革という大きな変化の一環として行われたものであり、「地場の民間賃金の反映」と「本府省手当の新設」は、等しくそれらが属する給与構造改革というかたまりの財源のところでつながりはあるものの、その目的は別なものであるはずです。また、この給与構造改革は他にも「広域異動手当の新設」や「勤務成績に基づく昇給制度の導入」、「昇給抑制期間の設定」など、中央・地方に関係なく行われた改革も含むものです。「本府省業務調整手当」と「地域手当の新設」だけに目をやると、まるで中央のために地方を犠牲にしたと目に映るかもしれませんが、給与構造改革は多面的なものであり、「本府省業務調整手当」を槍玉にして中央のバッシングをするのは少し早計だと、個人的には思います。
 ちなみにこの「本省府業務調整手当」の新設に対して「この不況下に公務員だけが美味しい思いをしている」といった記事が、上の地域と中央を対比させた上での中央バッシングとともに、いくつかのメディアで見られました。中央・地方の対比に関してはなるほど一理ある見解ですし、実際にそのような側面が無いとは言えないとは思うのですが、公務員バッシングに関しては「本府省業務調整手当」新設の原資が給与構造改革から出ている点を考えれば、少し的をはずしているなと個人的には思っています。同時に、給与構造改革は手当の新設と同時に俸給水準の引き下げや昇給抑制期間の設定を含むものであり、改革の前後においてその総額が変わっていない点は、もう少し評価しても良いのではないかと思います。


■まとめに変えて(個人的見解)

 結論から言って、個人的には、「本府省業務調整手当」の新設は、併せて行われた俸給水準の引き下げや昇給抑制期間の設定を考慮しても、評価できるものだと考えています。この考えの根底には中央には優秀な人材があるまるべきであり、そのためには人材確保の一助として地方の俸給水準が下がっても致し方ない、という思いがあります。またもう少し身近な話をすると、本省勤務経験のある先輩達の意見を聞くと、大抵はその激務が話題となります。国立大学が法人化したとは言え、それらを束ねる組織(まぁ別に文部科学省じゃなくてもいいんですけどね)が中央には必要であり、そこが激務で有名であり、またそれゆえに人材確保に苦戦しているというのであれば、「本府省業務調整手当」などのように人材確保の措置を講ずることはそれ自体意義があることだと思うからです。
 あえて難点を言うなら、上にも書きましたが、もう少し若手職員の手当額を大きくしても良かったのではないだろうかという点です。本省において係長以下クラスがそこまで決定的な要因とはならないのかもしれませんが、中央で働くことは後進の育成という意味でも有意義なものだと思うので、文部科学省に例えるならもっと国立大学職員が本省に動きたがるような仕組みであってほしかったなと思いました。
 しかしまぁなにはともあれ、中央省庁の皆さんがかなり過酷な就業環境にいることは国立大学内ではかなり周知のことかと思います。個人的にも昇給は抑制されましたが、その分のお金で中央で働く方の夕食が少し豪華になったりと、過酷な勤務環境がすこしでも和らぐことになるのであれば、給与体系を同じくするものとしては腹を立てるのも少し大人気ないかなと思います。本省の皆さん、健康にはくれぐれもお気をつけ下さい。


※関連エントリー
昇給抑制期間とは何なのか?

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※このエントリーは「運営費交付金から見る国立大学ランキング。」で使用したデータをHTMLを使って追記するものです。

順位大学名運営費交付金額
1東京大学87884000000
2京都大学59640000000
3東北大学49643000000
4大阪大学49267000000
5九州大学46432000000
6筑波大学41927000000
7北海道大学39295000000
8名古屋大学35897000000
9広島大学26406000000
10神戸大学22116000000
11東京工業大学21870000000
12千葉大学18122000000
13岡山大学18105000000
14新潟大学17380000000
15鹿児島大学16681000000
16長崎大学16246000000
17金沢大学15852000000
18熊本大学15732000000
19東京医科歯科大学15711000000
20信州大学15001000000
21徳島大学14387000000
22愛媛大学14094000000
23山口大学13842000000
24岐阜大学13810000000
25琉球大学12978000000
26富山大学12772000000
27山形大学12276000000
28群馬大学12248000000
29三重大学12210000000
30弘前大学11249000000
31鳥取大学11112000000
32島根大学10916000000
33香川大学10434000000
34佐賀大学10339000000
35宮崎大学10327000000
36福井大学9875000000
37秋田大学9759000000
38静岡大学9675000000
39山梨大学9657000000
40高知大学9633000000
41大分大学9322000000
42東京学芸大学8608000000
43横浜国立大学8139000000
44茨城大学7668000000
45北海道教育大学6808000000
46岩手大学6740000000
47大阪教育大学6643000000
48埼玉大学6512000000
49浜松医科大学6260000000
50一橋大学6180000000
51東京農工大学6126000000
52九州工業大学5824000000
53滋賀医科大学5769000000
54旭川医科大学5733000000
55宇都宮大学5696000000
56電気通信大学5574000000
57東京海洋大学5537000000
58愛知教育大学5233000000
59お茶の水女子大学4998000000
60東京芸術大学4901000000
61名古屋工業大学4819000000
62京都工芸繊維大学4696000000
63豊橋技術科学大学4068000000
64奈良女子大学3961000000
65和歌山大学3855000000
66京都教育大学3812000000
67福岡教育大学3692000000
68長岡技術科学大学3664000000
69兵庫教育大学3652000000
70福島大学3505000000
71東京外国語大学3490000000
72鳴門教育大学3352000000
73上越教育大学3317000000
74滋賀大学3094000000
75室蘭工業大学3055000000
76宮城教育大学2828000000
77帯広畜産大学2699000000
78北見工業大学2595000000
79筑波技術大学2570000000
80奈良教育大学2444000000
81小樽商科大学1480000000
82鹿屋体育大学1399000000



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 1月19日付の「文教ニュース」に平成21年度国立大学法人法人別運営費交付金予算額案が載っていました。財政・財務関係は疎いを通り越してほとんど何も知らないに等しいようなものですが、このような予算額から全国立大学を比較して見るのも面白いかと思ったので一覧にして見ました。まずは下記ランキングをご覧ください。





 「指数」というのは自分が勝手につけた数字です。予算の全額を大学の数(82大学)で割って出した平均値を100とした場合の、各大学の予算額の大きさを示します。25位の琉球大学が丁度「100」ですから、国立大学の平均交付金額はおよそ130億円ということになります。
 「累積額」はその大学とその大学より上位の大学の交付金額の合計の、全体に占める割合です。10位の神戸大学で「43.2」とあるということは、全交付金の43.2%を上位10大学が受けていることを示します。

 その上で改めてランキングを見ると、やはり東京大学が頭一つ抜きん出ているのが分かります。第2位に京都大学にすら「指数」で200以上の差をつけていることを考えれば「頭二つ分抜きん出ている」と表現したほうが正しいかもしれません。
 上位を独占しているのはいわゆる旧帝大と呼ばれる大学ですが、筑波大学がその中に割り込んでいるのが少々意外でした。このことについて調べて見たところ、国家公務員時代の各国立大学の学長の俸給も、筑波大学は旧帝7大学に肩を並べていたとのことでした。行政組織として見た場合、筑波大学はどうやら旧帝大グループに属するようです。
 旧帝大に続くのが広島大学や神戸大学を筆頭とした、いわゆる旧官立大と呼ばれるグループです。15位の鹿児島大学を除けば上位18大学は全て旧帝大と旧官立大が占めています。

 次に「累積額」に着目した場合、14位の新潟大学が50.3ですから、82ある国立大学のうち、上位14大学が運営費交付金の半分を占めていることが分かります。割合に直せば上位17%の大学が運営費交付金の50%を受けていることになります。ジニ係数的に言えば国立大学間には交付金の配分に関してかなりの格差があるといえそうです。もっとも、総合大学と単科大学の違いや、職員数や学生数に違いがあるため、一概に「格差がある」と表現できるほど簡単なものではないのでしょう。



 ランキング形式でみた運営費交付金ですが、今度は額の大きな順に横軸に並べて比較して見ましょう。





 相変わらず東京大学がずば抜けています。ランキング形式なんかよりはるかに分かりやすくずば抜けていますね(笑)。またこうして見ると、やはり旧帝大レベルが他の大学と区別されていることが分かります。上位12大学以下は綺麗な直線を描いているのも印象的です。


 さて今回は運営費交付金額から見た国立大学ということでしたが、財政・財務に疎い自分はこれらの数字が何を反映しているものなのか、正確には分かりません。各大学の学力偏差値など、学力に関して一定の相関関係はあるでしょうが、例えば学力偏差値の高い単科大学などはこのようなランキングでは上位には出てきません。「行政組織としての国立大学」と位置づけることが可能かも知れませんが、研究費等を度外視し、教職員数などだけで着目した場合には東京大学があれほど抜きん出るのも不自然です。結局、学力偏差値・行政規模・研究規模など、様々な要因が絡み合って出来上がるのが上記の数字なのだと思います。

 ちなみに運営費交付金額の合計は約1兆円で、これは国家予算の一般会計を80兆円と試算した場合の1.25%にあたります。国立大学には国家予算の1.25%が割り振られる…。これが「学術研究および教育の最高機関」の主翼たる国立大学に割り振られる数字として高いのか低いのか…。いつか財政に詳しくなったらこのあたりの国際比較なんかをして見たいと思っています。既刊本でこの手について詳しく述べている資料をお知りの方は、ぜひコメント欄まで書き込みをお願いします。

※平成22年度版(2010/8/1更新) →  平成22年度 運営費交付金 国立大学ランキング

※追記:使用したデータのHTML版

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