牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

カラスの害

2009-06-03 23:31:46 | 牛の病気



最近、写真のようにつとに、肥育牛をカラスが突いて穴を開ける。
直径が7~8cmでその深さも同程度である。
カラスの害を受けるのは、仕上げ期末期の牛であり、治療には1ヵ月以上を要することと、治療するには、消毒薬や抗生剤を使用することになる。
もたもたしていれば、増体どころか肥育状態が肉落ち、サシ落ちのマイナスになることも考えられる。
そこで、この様な被害を受けた場合は、早々に出荷することにしている。
気温が上がってくると傷口が化膿したり、ウジが湧くケースもある。
若干の治療をしても、傷口周囲に炎症が広がる。
以前、ロースにアタリの烙印が付けられたことがあり、何故ロースが、と疑ったが、カラスの害のためであった。
カラスの牛への悪さは、ロースの上辺りが殆どであり、カラスも旨い場所を心得ているのかと思うほどである。
考えてみれば、毎年5~7月頃にカラスの害が多い。
聞くところによると、この期間はカラスが子育てをする時期だそうである。
夕方と早朝の悪さであるが、一気にこの大きさの穴を開けるなどは、子育てが絡んでいるだけに、想像以上の被害を与えているのである。
そこで、カラス対策であるが、有りとあらゆる対策を講じたが、カラスの賢さに往生しっぱなしである。
こうなれば畜舎全体をネットで覆う意外にその方法が見つからずに苦慮している。
15棟もあるために、その対策も容易ではない。




後悔先に立たず

2009-05-18 19:34:04 | 牛の病気



仕上げまで数ヶ月の去勢肥育牛が、尿毒症で急死した。
予てより、尿石症の疑いがあり、断続的に加療を続けた牛であったが、最近も数日間その治療を続けたが、食欲不振となり、獣医師の直検により膀胱に尿が溜まっているとのことで、とりあえず血液検査をして加療することとなった。
血液検査の結果、BUN値が100で、出荷しても廃棄の可能性が高いとのことであった。
膀胱の尿を排出させることで、この値を下げることを期待して、尿道へカテーテルを装着する手術が行われた。
カテーテルが順調に装着され、尿の排出をみたが、尿は血液と思われるほどの血尿であった。
膀胱内で何らかの炎症が起きていたのであろうか。
ところが、尿の排出による効果は見られず、その翌日、2度目に見回った昼前急死しているのを発見した。
獣医師によれば、尿毒症が悪化したものと判断された。
これまで、この種の手術に立ち会ったことは無かったが、肉牛ジャーナルに08年12月号から連載されているシェパードの蓮見浩獣医師の「尿石症のお話」の記事中、尿石症の手術の詳細を拝見したばかりであった。
今回、蓮見師の紹介記事同様の手術内容であり、「なるほど!」と固唾をのみながらの観戦であったが、残念な結果に終わった。
尿石症の治療を徹底しなかったツケでもあり、先立たぬ悔いしきり。

第4胃変異か盲腸炎か

2009-05-11 23:13:22 | 牛の病気










導入2ヵ月目の去勢子牛が食欲不振に陥り、原因不明のため、獣医師の診察を受けたのは、去る3月30日であった。
診断がなかなかつかなかったが、それは盲腸炎なのか第4胃変異なのかで判断しにくい状態であるという。
おそらく変異であろうが、開腹手術してみないとらちがあかないと言うことになり、その翌日に手術となった。
結果は、後者であったが、変異の具合は差ほど重傷ではなかったが、胃内からは黒褐色の内容物が貯留し、それらを取り出すことで、手術は終了した。
手術の翌日からは、食欲と胃の動きが回復した。
獣医師の的確な診断と、その処置の正確さに敬意を表した次第である。
写真は、その回復状態を撮ったものである。
1枚目は、手術終了時、2枚目は4月3日の抜糸直後、3枚目は本日の状態で、発毛状態にかなりの変化が見られる。
同症き原因不明であった。

ウシRSウイルス感染症

2009-03-04 22:34:06 | 牛の病気






前述した導入牛の風邪は「ウシRSウイルス感染症」であった。
担当の獣医師がその疑いをかけ、家保が検査した結果確定した。
この感染症は、今から40年あまり前に北海道で初発をみて以来、全国的に蔓延したとある。
ものの本によると、同症の症状は、体温が39.5~41.5℃が5~6日続いたり、または一過性の発熱があり、元気および食欲の減退、膿性の鼻汁、流涙、泡沫性の流涎、湿った咳、喘鳴、呼吸数の増加速迫がみられる。肺を聴診すると明らかなラッセル音が聴収される。同居牛には速やかに伝播する。
一般に本病の予後は良好で、発症後2~3週間で回復する。
予病はワクチンを接種して発病の予防を行うとある。
当方では、導入間もない牛が発症し、その2日後に1月の導入牛に伝播し、2日目にはその1頭が死亡した。
ウイルス性だろうから、導入2~3ヶ月以内の牛について、風邪の治療薬を全頭注射するように指示して、3日間留守にした。
その間、上記したように、家保の指導を受け、同症用のワクチンを再度接種した。
感染した牛は、同一人が担当している二つの畜舎のみであった。
家保が判定したその日の内に、7棟ある育成牛舎の全てについて、パコマを希釈して動噴で消毒した。
現在では、近時に導入し発症した全ての牛たちも、安定し食欲が回復した。
1頭の犠牲を出したが、獣医師の的確な判断と処置が功を奏したと判断している。

蹄葉炎で牛も人も辛い!

2009-02-21 15:52:42 | 牛の病気


久しく出ていなかった蹄葉炎罹患牛1頭が、1月前から出始めて、治療中であるが、回復は望めそうにない。
牛にとってはかなり痛い病気のようである。
だから立ったり座ったりの動作が辛いらしい。
餌を食べるために、写真のように肱を曲げたままどうにか食べている。
写真は排尿時のものであるが、同様に肱を曲げたまま用を足している。
育成時から、濃厚飼料の摂取量に比し、粗飼料の摂取量割合が極端に少なかったために起こる疾患ルーメンアシドーシスが原因になっている。
この様な牛は、導入後も粗飼料をなかなか食いつこうとせず、粗飼料の底の方をかき混ぜながら濃厚飼料を探しているタイプである。
この様な場合は、その生産者をチェックせざるを得ない。
調べてみると、意外にも、市場により多い少ないのあるケースがある。
先天性の疾患ならともかく、人の餌の給与管理によるだけに、子牛の管理については、目先の健康だけでなく、成長段階に影響のない様な健康管理に配慮して貰いたいと願っている。
牛は草で育つのである。

ビタミンA欠乏症と同剤

2009-02-01 16:20:53 | 牛の病気



07年11月に50頭導入した肥育牛のうち10頭が、昨夏ビタミンA欠乏症と診断された。
通常は2~3頭発症することはあったが今回のように20%の発症は希有なことである。
獣医師の診療歴では、その全ての症状が四肢浮腫であり、平均24ヶ月令での発症であった。
発症の原因は、導入から2週間程度、風邪症状と下痢が多発したことと、生後15ヶ月令までのビタミンA剤の補給に問題があったと判断している。
導入時にこの様な症状を起こした子牛たちは、ビタミン剤の消耗が大きく、通常より多めの同剤の補給が必要であった。
発症による処置は、ビタレラADE5mlとデキサDS10mlを全頭に筋注した。
これまで本欄では、肥育牛へのビタミンAのコントロールが終了して数ヶ月経過後は、その投与の影響は軽度であると記述してきた。
これらの牛は、僅か10頭であるが、生後31~32ヶ月目に出荷した。
これらの肥育結果では、サシの評価であるBMS値は平均7.0であり、4.0が1頭、6.0が1頭、7.0が6頭、8.0が1頭、10.0が1頭であった。
大方の予想どおり、ビタミンA剤の投与の悪影響はなかったと判断している。
この数値は、これらの疾患に罹っていない残りの40頭の牛と大差なく、0.5程度の低くさに留まった。

放線菌症と稲わら

2009-01-28 19:38:20 | 牛の病気



昨年の春頃には、導入して数ヶ月の肥育牛に放線菌症が多発し、酷い時は30%程度に頬腫れの症状があり、その原因追及に獣医師とともに苦慮したものである。
その結果、大鋸屑やオーツヘイやバーリーストローなどを疑ったものである。
ところが、昨夏頃まで、多発し治療していた放線菌症が現在は、その名残が1頭いるだけで、新に発症した牛は昨夏以降全くいなくなったことに最近気付いた。

それで、何故放線菌症がなくなったかを考察してみると、一つの要因が浮かんできた。
それは、肥育牛用粗飼料をバーリーストローから稲わらに替えたことであり、その経過はそろそろ10ヶ月目になる。
ここでは、放線菌など何らかの菌類による影響も否定は出来ないために、確定したことではなく経過段階であるが、現況からバーリーストローであろうと考えている。

バーリーストローは、稲わらのように桿が硬くはないが、細くトゲトゲして素手で触るとかゆくなる。
そこらに何らかの原因があると判断している。
同症にかかった牛は、その70%程度は、治癒し難く食欲が若干低下するため、肥育成績は芳しくない。
稲わらの利用には、肥育の全期間給与した頃には、今回の効果とともに、肥育成績がさらに向上することを期待しているところである。



肝膿瘍

2009-01-26 18:51:04 | 牛の病気


最近出荷した去勢牛に肝膿瘍があり、その写真が携帯で届けられた。
肝膿瘍が酷く、肝臓自体が硬直し肝廃棄されたとの報告があった。

そもそも、肝膿瘍が何故発症するかである。
一般的には、粗飼料の摂取量が少なく、濃厚飼料主体で、常に多量摂取することで、発症すると考えられている。
また肥育当初に粗飼料の利用性が芳しくない肥育牛に発症しやすいとも言われている。
濃厚飼料主体で、多量摂取した結果、ルーメン内の絨毛の間に濃厚飼料が挟まり、その度合いが多くなり絨毛が団子状態となり、絨毛の機能が低下し、やがて次第に絨毛が剥がれ、胃壁が荒れてしまい、その部分から雑菌などが侵入し、血管を通じて肝臓内などに膿瘍を来し、写真のような肝膿瘍が次第に広がり、肝臓が機能低下するために、触手すると硬い状態となる。
肝膿瘍だけでなく、肺膿瘍のケースもある。
内臓検査時に、同疾患の程度により、肝廃棄だけか内臓廃棄かが行われる。
肝膿瘍は、高い増体速度を要求される乳用肥育牛では、濃厚飼料を多量摂取させるために、多発し易いことが知られている。
肥育牛に肝膿瘍が発症するケースには、ビタミンAの欠乏症により、体内のあらゆる器官内細胞が劣化し機能低下することから、肝膿瘍の発症を助長していることも考えられる。
生後20ヶ月令頃から配合飼料を多量摂取するため、体重が急激に増加するが、この時期に飼料摂取量の10%以上の粗飼料を確実に摂取させることと、最低限度のビタミンAなどの補給があれば、肝膿瘍は予防できると考えている。
とくに数頭の群飼いの場合は、飼料給与時に個体間差が出ないように留意する必要がある。
これらを留意するように徹底したつもりでも、今回のような結果がもたらされ、自らに柳眉を逆立てさせている次第である。






患畜舎

2009-01-08 19:01:47 | 牛の病気



肥育牛が1,000~1,200頭規模の施設であるが、当然のように患畜舎が1棟(6頭収容)ある。
現在は、生後16ヶ月令の牛が3頭飼われている。
いずれも肺炎の罹病患畜であるが、既に治療からは免れており、後2ヶ月程度同舎に据え置くことになっている。
その患畜舎の近くに仕上げ牛32頭収容規模の牛舎があり、患畜がほぼ完治した牛など用の肥育牛舎である。
ひとたび、患畜舎に収容された牛たちは、完治してもそれ以前の飼育舎に戻されることは一切ない。
その理由は、①群飼いから外れた牛を再び戻せば、暫くは強弱関係が収まるまで、正常な餌の摂取行動に変化が生じ増体速度が全ての牛に影響する。
②病歴を保った牛を群れに戻すことで、肺炎などの場合は、序列争いなどの過激な行動のため、再発するおそれがある。
③症状によっては、感染の恐れもある。
④病歴のある牛は、群れに競合できない
などの理由から、患畜舎で、完治させ、18ヶ月以上を待って、近くの専用舎で仕上げることにしている。
各房用の看板には、病歴を記して管理している。
勿論、畜舎のやり繰り上、この専用舎であっても、病歴のない牛も収容している。
理屈では、病歴のある牛は上物には成らない感があるが、そのような牛でも、時折、BMS値が10~11ということもある。
数年以前は、8棟ある仕上げ舎の中で、上物率の発生割合が最も高いこともあったくらいである。
この患畜舎は、年間10頭程度が入房している。


シラミのシーズン

2008-12-21 18:33:14 | 牛の病気
肥育牛には、冬になると外寄生虫であるケジラミが発生する。
牛に付くケジラミは何種類かいるらしい。
本来は、皮膚や毛に年中寄生しているらしいが、シラミのライフサイクルの関係で、冬になれば成虫になるため、家畜の皮膚に食いついて家畜が痛みを感じるために、その部分を牛自体が舌で強烈に舐めたり、柱などで擦るために、被毛が無くなり、傷が点在する。
こうなれば、牛は落ち着かず、無駄な体力を消耗し、餌の摂取量も減るため、肥育成績に影響する。
梅雨時にも同様の寄生があるらしいが、肥育牛の場合は、ほぼ冬間が多い。
駆虫剤はあるが、問題は頭数が多いため、担当者が面倒がるために大事になってから、駆虫にかかることが多い。
最近は、牛の背筋に沿って液体の駆虫薬を掛けることで駆虫できるものが一般的となっている。
粉剤であれば、ストッキングの中に入れて、ぽんぽんと体表面に掛けたり、手が届かない場合は、ストッキングは弾力性があるので、入り口付近を持って、先っぽに薬剤の入った部分を牛の係る箇所へ投げつけて駆虫している。
1m以上でもうまくいく。
いずれにしてもマスクは必要である。
牛が可哀想だと思う人は、すぐにでも駆虫せずにいられないはずである。