3月は卒業式のシーズンである。
フェイスブックのサイトでも我が子の卒業写真の投稿が並ぶ。
親としてはやはり格別の感慨があるのだろう。
もう20年近く前のことだが、私にも忘れられない「卒業式」がある。
岐阜県高山市にある県立斐太高校の卒業式。
旧制中学時代から80年近くも続く伝統行事「白線流し」である。
テレビドキュメンタリーの取材で一度だけ見る機会があった。
学校の前を流れる大八賀川にはまだ雪が残っていた。
先生や在校生、父兄、OBなどが見守る中
卒業生たちが学帽の白線とセーラー服のスカーフを一本に結びつけ
変わらぬ友情を誓いながら目の前の川に流す。
まだ旧制中学だった時代、授業をボイコットして退学処分となった生徒たちが
学校を去る時に学帽を川に投げ捨てたのが始まりだと言う。
旧制中学時代は男子生徒だけのために学帽だったが
戦後、新制高校で男女共学になるとセーラー服のスカーフが加わった。
今では生徒会主催の「伝統行事」として続いている。
その「白線流し」で歌われるのが「巴城ケ丘別離の歌」である。
巴城ケ丘にのぼりえて 春秋ここに三星霜
雄壮清きアルプスの 峰を仰ぎつ去る雲に 思いを託して我はゆく
春は山辺の逍遥に 散る葉の秋に思い寄せ
雪の芝生に若き日の 希望語りつ去る君と 共に誓いて我はゆく
この「巴城ケ丘別離の歌」は太平洋戦争末期
戦地に赴く学友への惜別歌として斐太中学の生徒によって作られたと言う。
旧制中学のバンカラ気風が漂う、なかなかいい歌だった。
この「白線流し」は1996年、フジテレビ系列で放映された
長瀬智也と酒井美紀主演の連続テレビドラマで一躍、有名になった。
残念ながら私は見ていないのだが、一部ではかなり評判になったドラマらしい。
ただ、斐太高校の「白線流し」はあくまでもヒントで
実際は長野県松本市の高校を舞台にしたドラマであったと言う。
川を挟んで校舎側に並んだ在校生たちが「送別歌」を歌い
対岸の卒業生たちが「巴城ケ丘別離の歌」を歌う中
一本に結ばれた白線が凍てつく川面にゆるやかに流れていく。
やかで歌が終わると卒業生たちが口々に叫ぶ。
「お父さん、毎日、働いてくれて、ありがとう」
「お母さん、毎日、弁当をつくってくれてありがとう」
見守る父兄の中にはハンカチで目頭を押さえる人が目立つ。
ああ、いいなあ、いい卒業式だなあ・・・と私も思わずジーンとなってしまった。
川面を流れる白線の輝きがいつまでも目に焼き付いて離れなかった。
卒業式など所詮、行事に過ぎないとは思う。
やがて社会に出て世俗にまみれれば、夢は急速に色あせていく。
両親への感謝などすぐに忘れるのだろうし
この世知辛いご時勢に、変わらぬ友情がいつまでも続くとも思えない。
でも、思い出すに足る「卒業式」があることはやはり貴重だし
長い人生、どこかであの頃の「勇気」や「希望」を見つめ直すこともある思う。
いや、あると思いたい・・・
私にとっての卒業式はほとんどが「空白」だ。
担任への反発から、高校は卒業式をボイコットして信州を旅していた。
大学は卒業式どころか中退だから話にならない。
仕事が忙しく息子の卒業式も娘の卒業式も、結局、出ずじまいだった。
AKBを卒業する女の子が滂沱の涙を流すのをテレビで見ながら
シラけたような、それでいて羨ましいような不思議な気持ちになってしまった。
私にとっての卒業式は「見果てぬ夢」なのかも知れない。
卒業式に縁がなかった男の怨念でしょうか…。
文章の中に、「やがて社会に出て世俗にまみれれば、夢は急速に色あせていく」とありますね。
「白線流し」が放送していたのは、確か…
私が、上京して間もない頃、
つまり、ちょ~ど、
世俗にまみれ、夢が褪せてきだした頃でしたね。
仕事はキツイし、金もないし、
標準語もなかなかマスターでけへんし~。
そんな荒んだ気持ちで「白線流し」を見ていました。
なかなかいいドラマやと思いますよ。
今度、暇な時に、tutayaでレンタルしてみてください。
2005年の最後のスペシャルドラマを見た時でした。
だから1996年のドラマは見てません。
スペシャル見た後、オリジナルシリーズ見ときゃよかったと
ちょっと残念に思ったのを思い出しました。
90年代ってドラマ映画ももほとんど見てないし、
小説も読まなかったなあ。
なんでだろうと思い返すと、ほとんど1日を会社で過ごしてたんですよね。
なんかもったいない10年を過ごしたなあと思う今日この頃。
だからAKBのコンサートに行っても冷たくしないでくださいね。
打ち合せ後、やっぱり「ひとり飲み」に行ってしまいまして
帰ったら爆睡でお返事おくれました。
私の場合確かに卒業式の「怨念」があるのかも知れませんね。
世俗にまみれて色褪せるような夢はしょせん大した夢ではなかった
とも言えるかも知れませんねえ。
今は思い切り世俗にまみれながら夢を追いかけておられますやん。
標準語はマスターした方がいいかも知れませんね(笑)
「空も飛べるはず」というのはスピッツのやつですか?
うーん、それも知らなかったなあ。
tsujipu様は高校も大学も立派に卒業しておられますが
「空だって飛べそうだ!」ぐらいに思った卒業の頃の思い出
即ち、青春の高揚感はあったのでしょうか。
ひょっとして、その頃の「空白感」の裏返しがAKBでしょうか(笑)
私の場合、夢が色褪せたと言うより、ずいぶん違うとろに来たなあ
というのが実感ですねえ・・・