居酒屋さすらい 1414 - ダイヤで輝く数珠のモツ - 「鳥勝」（品川区南大井）

立会川橋を渡り、川沿いを少し行くと、ぼんやりと点る提灯が見えてきた。

「鳥勝」はあそこか。ようやく、ここに辿り着いた。ひざげりさんのブログで初めて「鳥勝」を知って以来、これは外せない居酒屋だと思っていた。

ある程度並ぶ覚悟してきた。寒空の中で、待つのは嫌だなと思ったが、店の前には誰もいなかった。もしやすぐ入れるのかと、店の扉を開けると、手前のカウンターは満席。向こう側に見えるテーブルもふさがっているように見える。どうしていいか分からず、そこで立ち止まっていると、店のママが、「奥が空いてますよ」と指を指す。「ウチは相席でお願いしてますから」。

入口から見て、一番手前のテーブル席、厨房側の角の席に陣取り、「ホッピー 」（330円）をオーダーした。

汚い店だが、安くてうまいもつの店。「鳥勝」を簡単に説明すると、そうなる。多くの人が、「汚い店」と枕詞をつける。確かに、メニューの貼り紙なんかは何十年もそのままにし、経年による黄ばみが激しいが、それ以外は気にならない。汚い店というのは、掃除をしていない店。「鳥勝」は、古い店というだけだ。

ホッピーが届けらた。焼酎はかなり多めに入れられている。ホッピーを注いで一口飲んでみる。

甘い。

ひざげりさんから、「鳥勝」の焼酎は「ダイヤ」だと聞いていたので、「キンミヤ」の「ナカ」とどう変わるか楽しみにしていたら、やはりだいぶ違っていた。焼酎は濃いのに、ツーンとする感じがなく、極めてまろやかだ。これはこれでうまい。世の中が、「キンミヤ」一色になる中、「ダイヤ」とは、かなり渋い。

相席になった目の前の男性は、その「ダイヤ」の一升瓶をテーブルに置いている。ははん、ボトルキープか。ひざげりさん曰く、ボトルの置場がなく、マスターの寝室にまで置くようになったという。人気のボトルキープ。自分も、そのボトルキープに挑んでみようと思ったが、そこまで定期的に店に来られる自信がなく、今回のところは静観した。

ホッピーが運ばれるのと引き換えに、マスターに、「牛煮込み」（390円）をオーダーした。それを食べながら、次の展開を考えようと思ったからだ。

その「煮込み」は、トロッとろ。コラーゲンたっぷりで、本当に煮込んでいることが分かる。うまし。

マスターとママの、ご夫婦で切り盛りされており、せわしなく動いている。注文のタイミングが難しくと思い、ひざげりさんにメールで尋ねると、すぐにアドバイスがきた。注文は紙に書けと。カウンターの端に紙と鉛筆が置いてある。注文は、どうやらそれに書くようだ。

早速、「コブクロ刺し」と串焼き、「カシラ」、「ハツ」、「レバー」（各80円）をオーダー。この串焼きが80円とは、本当に信じられない値段。これはもう奇跡としか言いようがない。確かに、「かぶらや」が80円の串焼きで、ウッているが全くモノが違う。それは、「コブクロ刺し」を見て、確信した。

このコブクロ、一度さっと湯がいてはいるが、鮮度が違う。歯ごたえがよく、特製の味付けとしゃきしゃきの青ねぎで、抜群の旨さである。これを食べるだけで、お店に通う価値はありそうだ。

 

ついつい、楽しくなって、ホッピーの外を追加。とうとう2ラウンド目に突入。つまみがなくなり、串焼きの「ねぎ」と「シロ」（各80円）、「ハラミ味噌炒め」を追加。なんといってもハラミ好きなもんだから、これを食べずに帰る訳にはいかない。

たまねぎと炒めた、それはハラミは柔らかく、抜群に旨かった。

串焼きはともかく、「コブクロ刺し」とハラミは絶品。次回はこれを中心にオーダーを組みたいと思った。その旨味を倍加させてくれたのが、ダイヤ焼酎だと思う。一人飲みの時は、そんなに飲まないのだが、かなり限界まで飲んでしまった。

噂に違わない名店である。