古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

臨床研究法

2017-05-01 09:15:36 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

臨床研究法が平成29年4月14日に公布されました。施行は一年以内とのことです。

臨床研究法について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000163417.html

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1.臨床研究の実施に関する手続

(1)特定臨床研究(※)の実施に係る措置
① 以下の特定臨床研究を実施する者に対して、モニタリング・監査の実施、利益相反の管理等の実施基準の遵守及びイ ンフォームド・コンセントの取得、個人情報の保護、記録の保存等を義務付け。
※ 特定臨床研究とは
・ 薬機法における未承認・適応外の医薬品等の臨床研究
・ 製薬企業等から資金提供を受けて実施される当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究
② 特定臨床研究を実施する者に対して、実施計画による実施の適否等について、厚生労働大臣の認定を受けた認定臨 床研究審査委員会の意見を聴いた上で、厚生労働大臣に提出することを義務付け。
③ 特定臨床研究以外の臨床研究を実施する者に対して、
  ①の実施基準等の遵守及び②の認定臨床研究審査委員会への意見聴取に努めることを義務付け。

(2)重篤な疾病等が発生した場合の報告
特定臨床研究を実施する者に対して、特定臨床研究に起因すると疑われる疾病等が発生した場合、認定臨床研究審査 委員会に報告して意見を聴くとともに、厚生労働大臣にも報告することを義務付け。
(3)実施基準違反に対する指導・監督
① 厚生労働大臣は改善命令を行い、これに従わない場合には特定臨床研究の停止を命じることができる。
② 厚生労働大臣は、保健衛生上の危害の発生・拡大防止のために必要な場合には、改善命令を経ることなく特定臨床研究の停止等を命じることができる。

2.製薬企業等の講ずべき措置

① 製薬企業等に対して、当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究に対して資金を提供する際の契約の締結を義務付け。
② 製薬企業等に対して、当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究に関する資金提供の情報等(※詳細は厚生労働省令で規定)の公表を義務付け。

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要するに。
今まで製薬会社からの資金提供による臨床研究について 今までその論文の研究成果の妥当性の
チェック機能は論文査読者(レフェリー)のみに頼っていた状況がありました。
このシステムだと 製薬会社に都合のよいようなデータ改ざんを行い(ここも研究者の
良心頼み)製薬会社に都合の良い研究発表が行われ、その薬が売れつづけるということが起こって
しまう可能性があるので、というかすでに起こってしまいましたので、

今後そのようなことが起きなくなるように セーブすることを目的として作られた法律です。

罰則規定もあり、

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第六章 罰則
第三十九条 第十九条の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第四十条 第十一条又は第二十八条の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第四十一条 特定臨床研究を実施する者が次の各号のいずれかに該当するときは、五十万円以下の罰金に処する。
 一 第五条第一項の規定に違反して、正当な理由がなくて実施計画を提出せず、又はこれに記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をしてこれを提出して、特定臨床研究を実施した者
 二 第六条第一項の規定に違反して、正当な理由がなくて実施計画を提出せず、又はこれに記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をしてこれを提出して、特定臨床研究を実施した者
 三 第十二条の規定に違反して正当な理由がなくて記録の作成若しくは保存をしなかった者又は虚偽の記録を作成した者
 四 第二十条第二項の規定による命令に違反した者
 五 正当な理由がなくて第三十五条第一項の規定による報告若しくは物件の提出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対し、答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
第四十二条 医薬品等製造販売業者又はその特殊関係者が、正当な理由がなくて第三十五条第一項の規定による報告若しくは物件の提出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対し、答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をしたときは、三十万円以下の罰金に処する。
第四十三条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この条において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第三十九条又は前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

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製薬会社から資金提供を受けた研究が非常にやりづらくなることは確かでしょう。
一部の不心得者のために 全体が迷惑するのは 世の習いなのでしょうが・・・。

先般起こってしまった事件。のその後。
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ノバルティスファーマ社 
バルサルタン事件
論文不正の元社員に無罪 東京地裁判決
毎日新聞2017年3月16日 21時04分(最終更新 3月17日 01時36分)
京都府
事件・事故・裁判
速報
社会

 製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」の臨床研究データを改ざんしたとして、薬事法(現医薬品医療機器法)違反に問われた元社員、白橋伸雄被告(66)に対する判決で、東京地裁は16日、無罪(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。法人としてのノ社も無罪(同・罰金400万円)とした。辻川靖夫裁判長は元社員によるデータ改ざんを認める一方、医師に発表させた論文は「薬事法が規制する広告に当たらない」と判断した。

改ざんは認める
 元社員は京都府立医大の臨床研究でデータ解析を担当。バルサルタンに有利な結果が出るよう、別の降圧剤を服用した患者グループの脳卒中発症例を水増しするなどし、2011~12年に虚偽に基づく論文を医師に発表させたとして、同法違反(虚偽記述・広告)に問われた。
 判決は、公判で明らかにされた医師による患者情報の加筆について「不正ではあるものの水増しに関与したとは言えない」と指摘。第三者の関与を否定して「元社員が意図的にデータの水増しや改ざんをした」と認定した。
 一方で「発表させたのは学術論文であり、薬の購入意欲や処方意欲を喚起させる手段とは言えない」と指摘。元社員の行為は虚偽記述や虚偽広告には該当せず、罪にならないとした。
 無罪を主張していた元社員は、判決で改ざんが認定されると厳しい表情を浮かべていた。一方で元社員の弁護人は「極めて妥当で冷静な結論」と判決を評価、ノ社は「社会的、道義的責任を感じています」とコメントした。【近松仁太郎】
「学術雑誌、広告と言えず」
 薬事法は「虚偽または誇大な記事を広告、記述、流布してはならない」と定める。厚生労働省は、ノバルティスファーマ社が薬の宣伝のために大学の臨床試験結果を引用して専門誌に掲載した広告記事がこれに違反すると想定。容疑者を特定せず刑事告発したが、東京地検特捜部の捜査では、広告を出す権限がある幹部らがデータ改ざんを認識していた証拠は得られなかった。
 このため特捜部は、ノ社の白橋伸雄元社員が改ざんしたデータが使われた医師の論文に着目。バルサルタンを処方する医師が読めば、論文でも広告の要件である「顧客を誘引する手段」に当たるとして、虚偽記述・広告での異例の起訴に踏み切った。
 これに対し判決は、元社員の行為は一般的な学術雑誌への論文掲載と異なることはなく、薬の購入意欲を高める手段とは言えないと判断。ノ社側に論文を使った販売促進の意向があり、大学に多額の寄付がされていた経緯を考慮しても、違法とはならないとした。
 問題の調査に携わった厚労省幹部は「論文を読んで薬を処方した医師もいた。客観的データを装って販売を促進した問題に警鐘を鳴らすために刑事告発しただけに残念だ」と話した。検察幹部は「論文で薬の商品価値を高めたのは明らかなのに、判決は広告の意味を狭く捉えすぎている」と語った。【石山絵歩、桐野耕一】

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