goo blog サービス終了のお知らせ 

金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

白銀の翼(劉家の人々)189

2012-12-05 21:18:04 | Weblog
 マリリンの回復は周囲が思っていたよりも早かった。
三日も経つと起き上がることが出来るようになり、
五日目には館内を歩き回れるようにもなった。
 そんなマリリンの為に醇包が衣服を用意してくれた。
呆れた事に、男の身体に生まれ変わったマリリンに、
女物かと見紛うような色鮮やかな物ばかりを揃えてくれた。
ことに花柄の衣服が多かった。
「この地方ではこれが流行りなんだよ」と醇包。
その言いように疑問は何一つ浮かばなかった。
文字通り、裸一貫の身の上。何も着る物を持っていない。
断る理由もないので喜んで着用した。
マリリンは身体こそ男だが、元々は女。
花柄に拒否反応が出る分けがない。
みんなには訝しい目で見られたが、いっこうに気にしなかった。
ヒイラギにも、
「郷に入っては郷に従え、と言うではないか。好意は喜んで受けな」
と釘を刺されていた。
 六日目からは隣の赤劉城に足を伸ばした。
当然ながら一人での気ままな散歩が許される分けもなく、
侍女、宋純が付き添うことで外歩きが実現した。
 初めて足を踏み入れた赤劉城の城構えには驚かされた。
本城は城郭の中央にこぢんまりと鎮座していたのだ。
「これで防御の役に立つのか」と疑問に思っていたら、
宋純が、「無位無冠ですから、派手には出来ないのですよ」と説明してくれた。
 敷地の大半は商家、民家が軒を連ね、大いに賑わっていた。
その繁盛ぶりからすると、城の大小は問題ではないのかも知れない。
 マリリンの事は直ぐに知れ渡った。
神樹の根元で素っ裸で寝ていた男としてではなく、「神樹の使わした者」として。
それから何日かは、マリリンが赤劉城に姿を現す度に大勢が野次馬として、
行くところ行くところに付きまとう始末。
 五日もすると数が減ったので、マリリンは陶洪、陶涼の兄妹を外出に伴うことにした。
「たまには外の空気でも吸ってみようか」と。
 二人は小さいながら館の使用人なので、自由に外に出られない境遇にあった。
誘いを喜ぶかと思いきや、兄妹は渋った。
「私が足手纏いになります」と陶涼。
「使用人なので勝手が利かない」というのもあるが、
それよりも目が見えないので遠慮したのだ。
 そのくらいで諦めるマリリンではなかった。
強引に陶涼の手を引いた。
陶洪の、「マリリン様、やめてください」と叫ぶ声や、
陶涼の、「足手纏いになるだけです」との泣き出さんばかりの声は無視した。
付き添いの侍女の宋純はオロオロするばかり。
 マリリンが陶涼を館の外に連れ出すと、陶洪も宋純も付いて来ざるを得なかった。
足の重そうな三人に、わざと明るく言う。
「咎めがあれば私が引き受けるわ。
だから今日は楽しくやりましょう」と。
 こうして四人で赤劉城に入った。
マリリンは陶涼の手を優しく引いて案内した。
陶涼からも、進むに従い興味が湧いたようで、
それまでのオドオド感が消えてゆくのが分かった。
時には店内に入り、商いの声を聞かせもした。
兄の陶洪も観念したのか、子供心に戻ったのか、どうとも言えないが、
その足取りは軽くなっていた。
宋純にいたっては母親のような目で兄妹を見守っていた。
 色々な店を周り、みんなが疲れた頃だった。
小間物屋を出たところで鋭い視線を浴びた。
物見高い野次馬達とは明らかに違っていた。
視線を向けなくても、目の端で相手を捉えた。
 熊の如き大きさの男であった。
その体躯はこの城一番ではなかろうか。
顎髭と頬髭の立派さが目を引いた。
熊男はやがて関心を失ったのか、先を急いでいるのか、視界から消えた。
 その熊男に引き合わされた。
館に戻っての夕食の席であった。
劉桂英が、
「洛陽から来た関羽殿だ」と、みんなに紹介した。




ランキングの入り口です。
(クリック詐欺ではありません。ランキング先に飛ぶだけです)
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

* フォントサイズ変更

* フォントサイズ変更 * drop here