金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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金色の涙(白拍子)97

2009-02-05 20:32:18 | Weblog
 ヤマトは背後の空気の揺らぎを感じた。
振り返りもせずに、軽く避けるように跳んだ。
 元いた場所に何かが突き刺さる音。
たぶん老忍者の投じた手裏剣ではなかろうか。
 ヤマトは相手にしない。
今は五右衛門が何よりも優先する。
再び床下に潜ると、外を目指した。
 忍犬ならまだしも老忍者の足では、ヤマトには追いつけないだう。
 代わりに言葉が飛んできた。
「黒猫、今にみておれ」と。

 五右衛門達四人は囲まれてしまった。
前方と左右に「雑賀の忍び」が展開し、後方からは捕り手達が迫っていた。
 雑賀の忍びは、かつての「紀州・雑賀鉄砲衆」の一部門であった。
「雑賀鉄砲衆」は織田・豊臣政権に頑強に抵抗した傭兵集団で、
石山本願寺の攻防戦で知られていた。
雑賀の地侍達が中核で、鉄砲の技量・物量では天下一。
防御戦において幾度も織田・豊臣いずれの軍をも撃退した。
その鉄砲衆の働きを裏から支えたのが「雑賀の忍び」と呼ばれる者達。
 彼等は信長の働きかけで二つに分裂し、最後は秀吉に攻め滅ぼされた。
 彼等が所司代の為に働いているとは知らなかった。
秀吉は仇の筈なのに。引き入れたのは誰だろう。
それらしい顔を次々と思い浮かべた。
 
 少し離れた草薮に雑賀の鉄砲使い五人が隠れていた。
雑賀の忍びは個人としての戦いより、集団としての戦いを得意としていた。
これもその一つだ。
埋伏、さらに埋伏の二段構え。
 五つの銃口が慎重に五右衛門達を狙っていた。
うちの二つが五右衛門一人に向けられていた。
殺すつもりはない。
多少の血を流しても、生きたまま所司代に引き渡すのが彼等の仕事だ。
これを切っ掛けに雑賀の名を復活させるつもりでいた。
 一人が奇異な物音に気付いた。
振り返った時には遅かった。
 多数の山猫達が殺到してきた。
戦場慣れしている鉄砲使いでも、こういう修羅場は初めて。
鉄砲を投げ捨て、身体を丸めて縮こまった。
 無抵抗の彼等の上を山猫達が駆け抜けて行く。
五右衛門と対峙している者達の右側を突き抜けようとした。
 忍びの一人が押し寄せる山猫達に慌てふためき、一匹を一刀両断した。
物悲しい悲鳴と、大量の血飛沫が上がった。
 敵討ちであるかのように、別の一匹がその忍びに襲いかかった。
顔を引っ掻き、喉に噛みついた。
 忍びは悲鳴を上げ、刀を捨てた。
両手で引き剥がそうとしたが、山猫の噛みつく力の方が強かった。
喉仏が鈍い音を立てた。
 それを合図にしたかのように、山猫達が個々に雄叫びを上げた。
同時に他の人間達に襲うかかった。
跳躍力を武器に次々と跳ぶ。そして喉仏を的確に狙う。

 五右衛門のみがヤマトの咆哮の意味を知っていた。
この時を待っていたのだ。
最初の犠牲者がでるや、「行くぞ」と配下を従え、包囲の一角を突き破った。
 包囲していた雑賀の忍び達は、五右衛門どころではなかった。
乱入してきた山猫達から自分の身を守るので手一杯。
 それでも数人が必死に逃れた。
仲間の救出より本来の役目の方が大事らしい。
傷だらけになりながらも、五右衛門を追跡した。
 五右衛門は、「暫らく表稼業をしていろ」と、配下達を先に逃がした。
そして自分は追手を待ち構えた。
 遅れて現れたのは四人。
荒々しい足音が、彼等の必死さを伝えていた。
 木陰に隠れた五右衛門に気付いたようで、彼等も左右に散開した。
居場所を掴むや、交互に、かつ慎重に前進してきた。
連携されると戦い難い相手だ。
 五右衛門は近くの藪にヤマトの気配を感じた。
反撃の機会到来。直ちに逃走を再開した。

 逃走する五右衛門を四人が追った。
ヤマトの潜む藪の前を通過して行く。
 ヤマトが動いた。後方より彼等を追う。
勢いをつけて跳んだ。
最後尾の忍びの肩に着地すると同時に、後頭部に軽く猫拳。
相手は声も立てずに昏倒した。
 続けて跳ぶ。二人目も同様に倒した。
 そして三人目。
が、相手は手強かった。
跳んだヤマトに振り返りざまの抜き打ち。
 甘くみていたヤマトには躱せない。
急場凌ぎで、四足で左右から白刃を挟むようにして止めた。
別名「真剣白刃取り」。
 ヤマトは四足で相手の刀を挟みながら、ぶら下がる形になった。
相手は唖然としながら、必死で刀を保持する。

 ヤマトの殺気を感じ取るや、五右衛門が踵を返した。
先頭の忍びに斬りかかる。
一撃で決着をつけるかのように、刀を大上段に振り翳した。
 相手は刀身を頭上に構え、防御した。
 五右衛門は振り下ろす刀を変化させる。胴を薙ぐ。


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