マリリンは攻防の一瞬の隙を逃さなかった。
素早い剣捌きで呂布の額を狙った。
逃さなかったのは呂布も同じ。
無防備となったマリリンの胴に大太刀を送った。
マリリンは確かな手応えを得た。
呂布の頭を覆っている黒い布を断ち切った。
しかも狙い通り、額には傷一つ付けていない。
だが自分の腹部に激しい衝撃。
防具が真っ二つに切り裂かれた。
予想外の事に血の気が失せた。
マリリンの中のヒイラギが、「落ち着け、まだ生きてる」と叱咤した。
慌てて剛を反転させ、距離を空けた。
呂布が追撃してこないのを確かめ、自分の腹部を見下ろした。
防具は真っ二つだが、幸いにも血は流れていない。
ただ、腹部に痛みを感じた。
おそらくは太刀傷が付いているのだろう。
遅れて身体が小刻みに震えた。
この動揺を誰にも知られてはならない。
呂布に知られると、嵩にかかって攻めて来る。
味方に知られると、呂布を斃そうと一斉に矢が射られ、槍が投じられる。
動揺を収める為に再び深呼吸。
すると身体の奥底に、今までにない漲る熱い力を感じた。
その力が熱い血潮となり、全身を駆け巡る。
ヒイラギの仕業に違いない。
姫達に見抜かれるのを承知で触手を使い、自分に力を分け与えてくれた。
マリリンは安堵して呂布に視線を転じた。
断ち切られた黒い布が風に舞い、金髪が白日の下に晒されていた。
明るい日射しに金髪が映えて美しい。
マリリンは、見返す呂布の視線に険しさを感じた。
怒っていた。
しかし、これだけ戦ってなお、息切れ一つしていないとは。
呂布には、もう呆れるしかない。
マリリンは剣を背中の鞘に仕舞い、呂布に尋ねた。
「たいした腕前ね。それだけの力量なら、どこにでも仕官出来るでしょうに。
それがどうして、何が楽しくて盗賊家業をしている分け」
呂布は目の色を消し、無表情。
「悪いが俺は盗賊の一味じゃない」
「惚けないでよ、この期に及んで何を言ってるの。盗賊団と一緒にいたじゃない」
「一緒にはいたが、仲間じゃない」と否定し、
「盗賊団の中に田舎で仲の良かった奴がいたので、付き合っただけ」と続けた。
そう言われれば、そうなのかも知れない。
これだけの腕を持つのなら、盗賊団の先陣を切るのが当然。
相手の守備陣を断ち割り、奥深くまで進撃して混乱に陥れる。
なのに後尾にいた。
当初は武器も手にせずにいた。
客人に見えなくもなかった。
「貴男が盗賊団の仲間じゃないとすると、では一体何者なの」
「俺は俺。それ以外の何者でもない」
話の接ぎ穂に困ってしまう。
「貴男は何なの。どこから来たの、どこに向かうの」
「余計な詮索を。用がないのなら行かせてもらおうか」
呂布の言葉は素っ気ない。
盗賊団と行動を共にしながら、罪の意識は欠片も無いのだろう。
ある意味、「恥を恥とも思わない」開き直りの羨ましい性格をしていた。
マリリンは引き下がらない。
「どこに行くつもり」
「どこなりと、気の向くままに」
言いながらも呂布に立ち去る気配はない。
大太刀を仕舞う様子も見せない。
何を考えているのやら。
マリリンの勘が働いた。
「貴男、死に急いでいるの」
一拍置いて呂布の表情が弾けた。
口を大きく開けて笑う。
笑いながら大太刀を仕舞う。
腹を抱えて笑う。
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逃さなかったのは呂布も同じ。
無防備となったマリリンの胴に大太刀を送った。
マリリンは確かな手応えを得た。
呂布の頭を覆っている黒い布を断ち切った。
しかも狙い通り、額には傷一つ付けていない。
だが自分の腹部に激しい衝撃。
防具が真っ二つに切り裂かれた。
予想外の事に血の気が失せた。
マリリンの中のヒイラギが、「落ち着け、まだ生きてる」と叱咤した。
慌てて剛を反転させ、距離を空けた。
呂布が追撃してこないのを確かめ、自分の腹部を見下ろした。
防具は真っ二つだが、幸いにも血は流れていない。
ただ、腹部に痛みを感じた。
おそらくは太刀傷が付いているのだろう。
遅れて身体が小刻みに震えた。
この動揺を誰にも知られてはならない。
呂布に知られると、嵩にかかって攻めて来る。
味方に知られると、呂布を斃そうと一斉に矢が射られ、槍が投じられる。
動揺を収める為に再び深呼吸。
すると身体の奥底に、今までにない漲る熱い力を感じた。
その力が熱い血潮となり、全身を駆け巡る。
ヒイラギの仕業に違いない。
姫達に見抜かれるのを承知で触手を使い、自分に力を分け与えてくれた。
マリリンは安堵して呂布に視線を転じた。
断ち切られた黒い布が風に舞い、金髪が白日の下に晒されていた。
明るい日射しに金髪が映えて美しい。
マリリンは、見返す呂布の視線に険しさを感じた。
怒っていた。
しかし、これだけ戦ってなお、息切れ一つしていないとは。
呂布には、もう呆れるしかない。
マリリンは剣を背中の鞘に仕舞い、呂布に尋ねた。
「たいした腕前ね。それだけの力量なら、どこにでも仕官出来るでしょうに。
それがどうして、何が楽しくて盗賊家業をしている分け」
呂布は目の色を消し、無表情。
「悪いが俺は盗賊の一味じゃない」
「惚けないでよ、この期に及んで何を言ってるの。盗賊団と一緒にいたじゃない」
「一緒にはいたが、仲間じゃない」と否定し、
「盗賊団の中に田舎で仲の良かった奴がいたので、付き合っただけ」と続けた。
そう言われれば、そうなのかも知れない。
これだけの腕を持つのなら、盗賊団の先陣を切るのが当然。
相手の守備陣を断ち割り、奥深くまで進撃して混乱に陥れる。
なのに後尾にいた。
当初は武器も手にせずにいた。
客人に見えなくもなかった。
「貴男が盗賊団の仲間じゃないとすると、では一体何者なの」
「俺は俺。それ以外の何者でもない」
話の接ぎ穂に困ってしまう。
「貴男は何なの。どこから来たの、どこに向かうの」
「余計な詮索を。用がないのなら行かせてもらおうか」
呂布の言葉は素っ気ない。
盗賊団と行動を共にしながら、罪の意識は欠片も無いのだろう。
ある意味、「恥を恥とも思わない」開き直りの羨ましい性格をしていた。
マリリンは引き下がらない。
「どこに行くつもり」
「どこなりと、気の向くままに」
言いながらも呂布に立ち去る気配はない。
大太刀を仕舞う様子も見せない。
何を考えているのやら。
マリリンの勘が働いた。
「貴男、死に急いでいるの」
一拍置いて呂布の表情が弾けた。
口を大きく開けて笑う。
笑いながら大太刀を仕舞う。
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