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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(呂布)272

2013-09-26 21:20:28 | Weblog
 マリリンは攻防の一瞬の隙を逃さなかった。
素早い剣捌きで呂布の額を狙った。
 逃さなかったのは呂布も同じ。
無防備となったマリリンの胴に大太刀を送った。 
 マリリンは確かな手応えを得た。
呂布の頭を覆っている黒い布を断ち切った。
しかも狙い通り、額には傷一つ付けていない。
だが自分の腹部に激しい衝撃。
防具が真っ二つに切り裂かれた。
予想外の事に血の気が失せた。
 マリリンの中のヒイラギが、「落ち着け、まだ生きてる」と叱咤した。
 慌てて剛を反転させ、距離を空けた。
呂布が追撃してこないのを確かめ、自分の腹部を見下ろした。
防具は真っ二つだが、幸いにも血は流れていない。
ただ、腹部に痛みを感じた。
おそらくは太刀傷が付いているのだろう。
 遅れて身体が小刻みに震えた。
この動揺を誰にも知られてはならない。
呂布に知られると、嵩にかかって攻めて来る。
味方に知られると、呂布を斃そうと一斉に矢が射られ、槍が投じられる。
 動揺を収める為に再び深呼吸。
すると身体の奥底に、今までにない漲る熱い力を感じた。
その力が熱い血潮となり、全身を駆け巡る。
ヒイラギの仕業に違いない。
姫達に見抜かれるのを承知で触手を使い、自分に力を分け与えてくれた。
 マリリンは安堵して呂布に視線を転じた。
断ち切られた黒い布が風に舞い、金髪が白日の下に晒されていた。
明るい日射しに金髪が映えて美しい。
 マリリンは、見返す呂布の視線に険しさを感じた。
怒っていた。
しかし、これだけ戦ってなお、息切れ一つしていないとは。
呂布には、もう呆れるしかない。
 マリリンは剣を背中の鞘に仕舞い、呂布に尋ねた。
「たいした腕前ね。それだけの力量なら、どこにでも仕官出来るでしょうに。
それがどうして、何が楽しくて盗賊家業をしている分け」
 呂布は目の色を消し、無表情。
「悪いが俺は盗賊の一味じゃない」
「惚けないでよ、この期に及んで何を言ってるの。盗賊団と一緒にいたじゃない」
「一緒にはいたが、仲間じゃない」と否定し、
「盗賊団の中に田舎で仲の良かった奴がいたので、付き合っただけ」と続けた。
 そう言われれば、そうなのかも知れない。
これだけの腕を持つのなら、盗賊団の先陣を切るのが当然。
相手の守備陣を断ち割り、奥深くまで進撃して混乱に陥れる。
なのに後尾にいた。
当初は武器も手にせずにいた。
客人に見えなくもなかった。
「貴男が盗賊団の仲間じゃないとすると、では一体何者なの」
「俺は俺。それ以外の何者でもない」
 話の接ぎ穂に困ってしまう。
「貴男は何なの。どこから来たの、どこに向かうの」
「余計な詮索を。用がないのなら行かせてもらおうか」
 呂布の言葉は素っ気ない。
盗賊団と行動を共にしながら、罪の意識は欠片も無いのだろう。
ある意味、「恥を恥とも思わない」開き直りの羨ましい性格をしていた。
 マリリンは引き下がらない。
「どこに行くつもり」
「どこなりと、気の向くままに」
 言いながらも呂布に立ち去る気配はない。
大太刀を仕舞う様子も見せない。
何を考えているのやら。
 マリリンの勘が働いた。
「貴男、死に急いでいるの」
 一拍置いて呂布の表情が弾けた。
口を大きく開けて笑う。
笑いながら大太刀を仕舞う。
腹を抱えて笑う。




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