金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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金色の涙(ヤマト)19

2008-05-07 11:38:50 | Weblog
 鼠達は『ハーメルンの笛』で操られているので、死を恐れない。
仲間達が狐火でやられても、平気で前進する。
屍の上を、あるいは少しの隙間から、陰に陽に次々と侵入した。
 狐達も竹槍と狐火で応戦した。
数は少ないが、巧みな連携攻撃で相手を倒すので、士気は高い。
 康平が裏門を狐火で、ここでもまた扉を鼠達もろとも吹き飛ばした。
 
 城の東に狐の大軍が現れた。およそ3000匹。
伏見稲荷の白狐・コスモが、京都周辺の狐達を召集し、駆けつけたのだ。
そのうちの1000匹が一団となって、表門の鼠達を背後から突く。
竹槍を扱ったことがないので、狐火と体力が武器だ。
 コスモは1000匹を一組とし、二組で交互に攻撃させた。
残る一組1000匹は手元に置いた。
ぴょん吉の配下の報告で聞いた、多門・康平に備えているのだ。
 多門は狐達に援軍が来るのは承知していたが、
白狐が率いてくるとは予想していなかった。
ここで白狐を始末できるとは手間が省けるので、歓迎だ。
 丹波軍団を潰したら勢いに任せ、総本社に押し寄せるつもりなのだ。
そこで邪魔になるのが総本社を守っている白狐3匹。その1匹が目の前にいた。
 笛を吹いて、城攻撃中の鼠達を鼓舞した。
 笛の音を聞いたコスモは、手元の1000匹を率いて、多門目指して駆けた。
 それを待っていたかのように、埋伏していた野鼠1万匹が動く。
正面から5000匹、残り5000匹が左側面より当たった。
 コスモ達は罠に掛かったことに気づくが、躊躇はしない。
すぐさま円陣を組み、中央突破をはかる。
狐火を次々に打ち放ち、野鼠達を吹き飛ばした。
多門と康平さえ倒せば、残りは烏合の衆。自然に解散する筈だ。
 コスモ達に向かって、狐火が飛んできた。黒狐・康平が放ったのだ。
直径20メートルあまりに膨張し、破裂した。
円陣を組み密集していたので、大きな被害を出した。
 その崩れたところに野鼠達が割って入った。

 康平と多門の足跡を追ってきたヤマト達が、屈羅誼城下に辿り着いた。
ポン太に哲也。ぴょん吉と無傷の配下が2匹。そして佐助。
少し遅れて和泉の、無傷の狐達が46匹。
 城を中心に狐と鼠が各所で争っていた。
どうやら鼠達の方が押しているようだ。落城寸前。
 ヤマト達は、笛の音を頼りに突き進む。途中で障害となる鼠達を、
哲也の狐火と、ポン太の千畳扇で吹き飛ばした。
 佐助も小太刀を抜いて斬り進む。
この小太刀は元服のおりに、父より与えられた物だ。
たぶん、大阪城の蔵より持ち出した物であろう。
秀吉がこの小太刀に目を留め、苦笑いした覚えがある。
とにかく切れ味が良い。
 前方で苦戦しているコスモ達に合流した。
ヤマト達が加わっても300足らず。
それでも白狐に赤狐・緑狸が並ぶと、攻撃力が大きなものになった。
3匹が正面に立ち、立ち塞がる野鼠達を狐火と千畳扇で吹き飛ばした。
背後はぴょん吉が指揮を執り、巧みに守る。気懸かりは黒狐・康平の狐火のみ。
姿を消しているので、出方がわからない。
 ヤマトが側面の藪に潜む康平の、微かな臭いに気づいた。
勢いをつけて突進した。躱されても、執拗に追う。
康平が狐火を打ち放ってくるが、龍が平然と正面から受け止めた。
これまで幾度か目にした狐火を、金色の涙が解析していた。
その結果を試すべく、全身で受け止めたのだ。
破裂するエネルギーを外皮から吸収し、ドングリとタニシが分解した。
たしかに良質のエネルギーだ。熱く強烈な物が全身に駆け巡る。
 龍が雄叫びを上げた。
その異様な声が戦場に響き渡り、全ての動きを一瞬だが止めた。
ヤマトの全身の毛が逆立っていた。
 康平が恐怖に駆られて、狐火を連発した。
ヤマトは狐火を弾き飛ばしながら、突き進んだ。
唖然としている相手に、容赦のない体当たりを喰らわせた。
全身の骨を砕く派手な音がした。
ヤマトの体当たりで康平の体が、宙を高々と舞う。
首に架けた『李淵の鈴』がはずれた。
 地に落ちた康平は身動き一つしない。その口から火が吹き出る。
あっと言う間に、全身が炎に包まれた。
 鈴はというと、佐助の振りかざした小太刀の上にゆっくりと舞い降りた。
両者が触れ合うと、四方八方へ金色の光を放つ。
周辺のネズミ達が驚いて退きはじめた。
金色の光は小太刀に吸収されるかのように消えた。
佐助が不審に思って小太刀を一振りした。はっきりと鈴の音がする。
試しにもう一度。しかし二度目はない。
 白狐・コスモが佐助の傍に寄った。流暢に人間の言葉で喋った。
「鈴がお主を選んだようだ。『李淵の剣』と名付けよう。大切にな」
 
 ついに屈羅誼城が落城した。
生き残った者達が表門で戦っていた狐達に合流し、こちらに駆けて来た。
それを鼠達が追って来る。
 白狐の周囲に集まったのはおよそ1500匹。
遠巻きに包囲を始める鼠達は2万匹近い。
狐火や千畳扇を警戒しているようで、かなりの距離を置いていた。
 多門が狐達の前に立った。
鼠猿の異様さに、多くの狐達が驚きに声を失った。
多門が『ハーメルンの笛』を両手で交互にクルクル回した。
と、笛が一人でに旋律を奏でながら、1メートル程に伸びていく。
 誘われたかのように狐達10数匹が、跳びかかっていく。
それを多門は笛を棒のように扱い、次々と打ち倒してみせた。
笛の殺傷力が凄い。ただの一撃で骨を打ち砕いてしまう。
 ぴょん吉が狐火を打ち放った。しかし簡単に躱されてしまう。
 多門が笛を構えて、狐達の真っ只中に跳び込んだ。
そして笛で周辺の狐達を打ち倒す。
多門の口から鋭い雄叫びが上がった。
それが合図だったのか、鼠達が一斉攻撃に出てきた。




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