鼠達は『ハーメルンの笛』で操られているので、死を恐れない。
仲間達が狐火でやられても、平気で前進する。
屍の上を、あるいは少しの隙間から、陰に陽に次々と侵入した。
狐達も竹槍と狐火で応戦した。
数は少ないが、巧みな連携攻撃で相手を倒すので、士気は高い。
康平が裏門を狐火で、ここでもまた扉を鼠達もろとも吹き飛ばした。
城の東に狐の大軍が現れた。およそ3000匹。
伏見稲荷の白狐・コスモが、京都周辺の狐達を召集し、駆けつけたのだ。
そのうちの1000匹が一団となって、表門の鼠達を背後から突く。
竹槍を扱ったことがないので、狐火と体力が武器だ。
コスモは1000匹を一組とし、二組で交互に攻撃させた。
残る一組1000匹は手元に置いた。
ぴょん吉の配下の報告で聞いた、多門・康平に備えているのだ。
多門は狐達に援軍が来るのは承知していたが、
白狐が率いてくるとは予想していなかった。
ここで白狐を始末できるとは手間が省けるので、歓迎だ。
丹波軍団を潰したら勢いに任せ、総本社に押し寄せるつもりなのだ。
そこで邪魔になるのが総本社を守っている白狐3匹。その1匹が目の前にいた。
笛を吹いて、城攻撃中の鼠達を鼓舞した。
笛の音を聞いたコスモは、手元の1000匹を率いて、多門目指して駆けた。
それを待っていたかのように、埋伏していた野鼠1万匹が動く。
正面から5000匹、残り5000匹が左側面より当たった。
コスモ達は罠に掛かったことに気づくが、躊躇はしない。
すぐさま円陣を組み、中央突破をはかる。
狐火を次々に打ち放ち、野鼠達を吹き飛ばした。
多門と康平さえ倒せば、残りは烏合の衆。自然に解散する筈だ。
コスモ達に向かって、狐火が飛んできた。黒狐・康平が放ったのだ。
直径20メートルあまりに膨張し、破裂した。
円陣を組み密集していたので、大きな被害を出した。
その崩れたところに野鼠達が割って入った。
康平と多門の足跡を追ってきたヤマト達が、屈羅誼城下に辿り着いた。
ポン太に哲也。ぴょん吉と無傷の配下が2匹。そして佐助。
少し遅れて和泉の、無傷の狐達が46匹。
城を中心に狐と鼠が各所で争っていた。
どうやら鼠達の方が押しているようだ。落城寸前。
ヤマト達は、笛の音を頼りに突き進む。途中で障害となる鼠達を、
哲也の狐火と、ポン太の千畳扇で吹き飛ばした。
佐助も小太刀を抜いて斬り進む。
この小太刀は元服のおりに、父より与えられた物だ。
たぶん、大阪城の蔵より持ち出した物であろう。
秀吉がこの小太刀に目を留め、苦笑いした覚えがある。
とにかく切れ味が良い。
前方で苦戦しているコスモ達に合流した。
ヤマト達が加わっても300足らず。
それでも白狐に赤狐・緑狸が並ぶと、攻撃力が大きなものになった。
3匹が正面に立ち、立ち塞がる野鼠達を狐火と千畳扇で吹き飛ばした。
背後はぴょん吉が指揮を執り、巧みに守る。気懸かりは黒狐・康平の狐火のみ。
姿を消しているので、出方がわからない。
ヤマトが側面の藪に潜む康平の、微かな臭いに気づいた。
勢いをつけて突進した。躱されても、執拗に追う。
康平が狐火を打ち放ってくるが、龍が平然と正面から受け止めた。
これまで幾度か目にした狐火を、金色の涙が解析していた。
その結果を試すべく、全身で受け止めたのだ。
破裂するエネルギーを外皮から吸収し、ドングリとタニシが分解した。
たしかに良質のエネルギーだ。熱く強烈な物が全身に駆け巡る。
龍が雄叫びを上げた。
その異様な声が戦場に響き渡り、全ての動きを一瞬だが止めた。
ヤマトの全身の毛が逆立っていた。
康平が恐怖に駆られて、狐火を連発した。
ヤマトは狐火を弾き飛ばしながら、突き進んだ。
唖然としている相手に、容赦のない体当たりを喰らわせた。
全身の骨を砕く派手な音がした。
ヤマトの体当たりで康平の体が、宙を高々と舞う。
首に架けた『李淵の鈴』がはずれた。
地に落ちた康平は身動き一つしない。その口から火が吹き出る。
あっと言う間に、全身が炎に包まれた。
鈴はというと、佐助の振りかざした小太刀の上にゆっくりと舞い降りた。
両者が触れ合うと、四方八方へ金色の光を放つ。
周辺のネズミ達が驚いて退きはじめた。
金色の光は小太刀に吸収されるかのように消えた。
佐助が不審に思って小太刀を一振りした。はっきりと鈴の音がする。
試しにもう一度。しかし二度目はない。
白狐・コスモが佐助の傍に寄った。流暢に人間の言葉で喋った。
「鈴がお主を選んだようだ。『李淵の剣』と名付けよう。大切にな」
ついに屈羅誼城が落城した。
生き残った者達が表門で戦っていた狐達に合流し、こちらに駆けて来た。
それを鼠達が追って来る。
白狐の周囲に集まったのはおよそ1500匹。
遠巻きに包囲を始める鼠達は2万匹近い。
狐火や千畳扇を警戒しているようで、かなりの距離を置いていた。
多門が狐達の前に立った。
鼠猿の異様さに、多くの狐達が驚きに声を失った。
多門が『ハーメルンの笛』を両手で交互にクルクル回した。
と、笛が一人でに旋律を奏でながら、1メートル程に伸びていく。
誘われたかのように狐達10数匹が、跳びかかっていく。
それを多門は笛を棒のように扱い、次々と打ち倒してみせた。
笛の殺傷力が凄い。ただの一撃で骨を打ち砕いてしまう。
ぴょん吉が狐火を打ち放った。しかし簡単に躱されてしまう。
多門が笛を構えて、狐達の真っ只中に跳び込んだ。
そして笛で周辺の狐達を打ち倒す。
多門の口から鋭い雄叫びが上がった。
それが合図だったのか、鼠達が一斉攻撃に出てきた。
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仲間達が狐火でやられても、平気で前進する。
屍の上を、あるいは少しの隙間から、陰に陽に次々と侵入した。
狐達も竹槍と狐火で応戦した。
数は少ないが、巧みな連携攻撃で相手を倒すので、士気は高い。
康平が裏門を狐火で、ここでもまた扉を鼠達もろとも吹き飛ばした。
城の東に狐の大軍が現れた。およそ3000匹。
伏見稲荷の白狐・コスモが、京都周辺の狐達を召集し、駆けつけたのだ。
そのうちの1000匹が一団となって、表門の鼠達を背後から突く。
竹槍を扱ったことがないので、狐火と体力が武器だ。
コスモは1000匹を一組とし、二組で交互に攻撃させた。
残る一組1000匹は手元に置いた。
ぴょん吉の配下の報告で聞いた、多門・康平に備えているのだ。
多門は狐達に援軍が来るのは承知していたが、
白狐が率いてくるとは予想していなかった。
ここで白狐を始末できるとは手間が省けるので、歓迎だ。
丹波軍団を潰したら勢いに任せ、総本社に押し寄せるつもりなのだ。
そこで邪魔になるのが総本社を守っている白狐3匹。その1匹が目の前にいた。
笛を吹いて、城攻撃中の鼠達を鼓舞した。
笛の音を聞いたコスモは、手元の1000匹を率いて、多門目指して駆けた。
それを待っていたかのように、埋伏していた野鼠1万匹が動く。
正面から5000匹、残り5000匹が左側面より当たった。
コスモ達は罠に掛かったことに気づくが、躊躇はしない。
すぐさま円陣を組み、中央突破をはかる。
狐火を次々に打ち放ち、野鼠達を吹き飛ばした。
多門と康平さえ倒せば、残りは烏合の衆。自然に解散する筈だ。
コスモ達に向かって、狐火が飛んできた。黒狐・康平が放ったのだ。
直径20メートルあまりに膨張し、破裂した。
円陣を組み密集していたので、大きな被害を出した。
その崩れたところに野鼠達が割って入った。
康平と多門の足跡を追ってきたヤマト達が、屈羅誼城下に辿り着いた。
ポン太に哲也。ぴょん吉と無傷の配下が2匹。そして佐助。
少し遅れて和泉の、無傷の狐達が46匹。
城を中心に狐と鼠が各所で争っていた。
どうやら鼠達の方が押しているようだ。落城寸前。
ヤマト達は、笛の音を頼りに突き進む。途中で障害となる鼠達を、
哲也の狐火と、ポン太の千畳扇で吹き飛ばした。
佐助も小太刀を抜いて斬り進む。
この小太刀は元服のおりに、父より与えられた物だ。
たぶん、大阪城の蔵より持ち出した物であろう。
秀吉がこの小太刀に目を留め、苦笑いした覚えがある。
とにかく切れ味が良い。
前方で苦戦しているコスモ達に合流した。
ヤマト達が加わっても300足らず。
それでも白狐に赤狐・緑狸が並ぶと、攻撃力が大きなものになった。
3匹が正面に立ち、立ち塞がる野鼠達を狐火と千畳扇で吹き飛ばした。
背後はぴょん吉が指揮を執り、巧みに守る。気懸かりは黒狐・康平の狐火のみ。
姿を消しているので、出方がわからない。
ヤマトが側面の藪に潜む康平の、微かな臭いに気づいた。
勢いをつけて突進した。躱されても、執拗に追う。
康平が狐火を打ち放ってくるが、龍が平然と正面から受け止めた。
これまで幾度か目にした狐火を、金色の涙が解析していた。
その結果を試すべく、全身で受け止めたのだ。
破裂するエネルギーを外皮から吸収し、ドングリとタニシが分解した。
たしかに良質のエネルギーだ。熱く強烈な物が全身に駆け巡る。
龍が雄叫びを上げた。
その異様な声が戦場に響き渡り、全ての動きを一瞬だが止めた。
ヤマトの全身の毛が逆立っていた。
康平が恐怖に駆られて、狐火を連発した。
ヤマトは狐火を弾き飛ばしながら、突き進んだ。
唖然としている相手に、容赦のない体当たりを喰らわせた。
全身の骨を砕く派手な音がした。
ヤマトの体当たりで康平の体が、宙を高々と舞う。
首に架けた『李淵の鈴』がはずれた。
地に落ちた康平は身動き一つしない。その口から火が吹き出る。
あっと言う間に、全身が炎に包まれた。
鈴はというと、佐助の振りかざした小太刀の上にゆっくりと舞い降りた。
両者が触れ合うと、四方八方へ金色の光を放つ。
周辺のネズミ達が驚いて退きはじめた。
金色の光は小太刀に吸収されるかのように消えた。
佐助が不審に思って小太刀を一振りした。はっきりと鈴の音がする。
試しにもう一度。しかし二度目はない。
白狐・コスモが佐助の傍に寄った。流暢に人間の言葉で喋った。
「鈴がお主を選んだようだ。『李淵の剣』と名付けよう。大切にな」
ついに屈羅誼城が落城した。
生き残った者達が表門で戦っていた狐達に合流し、こちらに駆けて来た。
それを鼠達が追って来る。
白狐の周囲に集まったのはおよそ1500匹。
遠巻きに包囲を始める鼠達は2万匹近い。
狐火や千畳扇を警戒しているようで、かなりの距離を置いていた。
多門が狐達の前に立った。
鼠猿の異様さに、多くの狐達が驚きに声を失った。
多門が『ハーメルンの笛』を両手で交互にクルクル回した。
と、笛が一人でに旋律を奏でながら、1メートル程に伸びていく。
誘われたかのように狐達10数匹が、跳びかかっていく。
それを多門は笛を棒のように扱い、次々と打ち倒してみせた。
笛の殺傷力が凄い。ただの一撃で骨を打ち砕いてしまう。
ぴょん吉が狐火を打ち放った。しかし簡単に躱されてしまう。
多門が笛を構えて、狐達の真っ只中に跳び込んだ。
そして笛で周辺の狐達を打ち倒す。
多門の口から鋭い雄叫びが上がった。
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