金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(バンパイア)53

2011-06-26 10:02:44 | Weblog
 陰陽師の全身から血だけでなく、力までが抜けてゆくのが分かった。
それまではバンパイアに捕らえられながらも自分の両足で踏ん張っていたが、
今は立っているのさえ困難らしい。
身体を相手に委ね、ダラリとした体勢になる。
生気が感じ取れない。
 具志堅陽子は、もどかしさに目を逸らした。
助けに飛び出すには遅すぎた。
円陣の中の者達も同様な気持らしい。
ただ黙って見守っているだけ。
 榊誠に意見する者は一人もいない。
彼の考えが理解できるからだ。
今はバンパイアの戦い振りを観察するだけ。
全体を統率する者としては正しいのだろう。
お蔭で戦い振りの一端が観察できた。
 バンパイアが陰陽師を投げ捨て、こちらに視線を向けてきた。
あの少年の面影は全く残っていない。
狼を連想させる顔貌ではないか。
射抜くような鋭い目、高い鼻、そして尖った耳先。
口の両端から覗くのは、鉄板さえも噛み砕きそうな白く輝く獰猛な牙。
 仕込み杖で深傷を負った筈の手の甲の血が止まっていた。
だけではない。鳩尾からの血も止まっていた。
どうやら、事前説明のように自然治癒する力が強いのだろう。
 バンパイアは、こちら側に攻撃の意志が無い事が不満なのか、
挑発するように鼻で笑う。
だからといって自分からは攻めては来ない。
膠着状態に陥った。
 それを打ち破ったのは調伏僧。
すでに仙術師と陰陽師は絶命させられたが、彼だけは止めを刺されていない。
ゆっくり立ち上がると状況を見取り、背後からバンパイアに忍び寄る。
武器を失った今、残されたのは両手両足のみ。
 気付かれる事なく、残り五歩ほどの位置にまで接近した。
懐から数珠を取りだし右手で握りしめ、心の中で調伏の呪文を唱えながら、
最後の勝負に出た。
 背後から襲うのは卑怯だが、他に斃す手立て無し。
右手の数珠に熱い気が漲るのを感じながらの正拳突き。
地を蹴って一気に間境を跳び、バンパイアの背中に突き入れた。
 間一髪のところでバンパイアが動いた。
後方を振り返りながら、右手で相手の正拳突きを受け流し、
左足で回し蹴り一閃。
相手の首を刈るように捉えた。
乾いた音。
相手の首が直角に折れ曲がった。
 その瞬間を逃さない。
榊誠の合図で二丁の拳銃が火を噴いた。
狙い通りバンパイアの背中を射抜く。
手応え充分。
タキシードから血が迸った。
 バンパイアが鈍い動作で振り返った。
苦痛に歪む顔で、こちらを睨みつけ、激しい言葉を連ねた。
意味は分からないが、怒っている事だけは確か。
 拳銃は朝鮮人の霊媒師と、日本人の方術師が所持していたもの。
二人は呪術のみでなく拳銃をも得意としていた。
その二人が振り向いたバンパイアの顔面に銃口を向けた。
立て続けに絞られる引き金。
 バンパイアが意外な能力を見せた。
正面を見据え、飛び来る銃弾を躱すではないか。
獣をも凌ぐ動体視力。
弾切れと知るや、ペッと唾を吐いて挑発した。
 陽子はバンパイアの襲来に備えて背中の剣に手を伸ばした。
 窘める榊誠。
「ここで手の内を晒すな。抜くときは斬るときだ」
 傍に居た田原玲於奈が陽子の腕を掴む。
「その通りですよ」
 バンパイアは円陣への突入を躊躇っているようだ。
何か罠でもあるのではないかと疑っているのだろう。
そのうちに焦れてきた。
再び怒鳴る。
それでも事態が動かないと知るや、複雑そうな表情をした。
 ゆっくりとバンパイアが動いた。
二、三歩後退りし、銃傷からの血の流れが弱まるのを確かめると、
関心を失ったかのように跳躍した。
高々と後方の岩陰に跳び、姿を隠した。
身動きする足音が聞えない。
枯葉、枯れ枝を踏む音も聞えない。
遠ざかったのか、隠れているだけなのか、判断がつかない
 榊誠は円陣を解かせない。
「暫くこのまま待機だ。
どこから姿を現わすか分からない。警戒しろ」
 バンパイアの虚偽と見ているのだろう。
 陽子は素朴な疑問を口にした。
「バンパイアはどうして日本に来たの。
あの格好、見つけて下さいって言ってるようなものだわ」
 答えたのは玲於奈の父親、田原俊太郎。
「たしかに金髪にタキシード姿だからな。
ヨーロッパの夜には相応しいが、この国では目立つだけだ。
・・・。
我等キリスト教関係者の間では、連れて来られたという噂がある」
 意外な話しに円陣の者達が動揺した。
一人が叫ぶように問う。
「誰に」
「あくまで噂に過ぎないが、オールマン博士ではないかと」
 みんなの目が榊誠に集まる。
「お前は知っていたのか」と詰問の視線。
 榊誠は平然とした顔で、みんなを見回した。
「我等の仕事はバイパイアを捕らえる事だけ。それ以外の事はどうでも良い」
 それに苦笑いする俊太郎。
「榊さんらしいな。
・・・。
もう一つ、少年と同じ年頃の少女も一緒だったという噂もある」
 話しの展開に、みんなは戸惑う。
ただでさえ手強いバンパイアなのに、
知らされぬ事柄があっては戦いに集中出来ない。
 陽子が問う。
「その少女は」
「噂では、博士の所に居るとか」
 噂が真実だとすれば、博士とバンパイアの関係が分からない。
 陽子は榊誠に向き直る。
「私達はどうすれば良いのですか」
「目の前の仕事から、一つ一つ片付ける」
 毬谷家の使用人らしい言葉。
歴代の榊の者達は、こうやって毬谷家に仕えてきたのだろう。




百円ショップで買った二百円のカット・スイカを朝食にしたが、
これだけでは・・・。
腹減った。
どうしよう。


いつまでも
傍に居るよと
放射能


いつまでも
居座るかもと
菅首相




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