高校公民Blog

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世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか 1 補助金という足かせ

2010-10-23 23:27:07 | ブックレビュー


 少し経済のお話をさせてもらいます。

このエントリーのタイトルは、経済学者の野口悠紀雄の著書です。野口は、『超整理法』という新書で有名です。

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)1940年体制―さらば戦時経済

また、『1940年体制』という著書で、日本経済の高度成長時代の構造と失われた10年とも15年とも呼ばれている現在の日本経済の凋落の原因が同一の構造から発生していることを明らかにしたリベラリズムの経済学者として有名です。

このエントリーでは、野口の主張を私なりに解説したいと考えています。教育という世界に生活していると、野口の論ずる主張はきわめて示唆に富みます。

世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか

トヨタの赤字

 

2009年の1-3月期、尋常ならざる事態に陥りました。ザックリ言いますと、いわゆる企業経常利益が前年度比で7割減となったのです。なかでも、自動車、電器産業が深刻でした。トヨタ自動車が4600億円もの赤字に転落したということは、私には強烈なインパクトでした。

だって、日本ってトヨタ自動車で食べさせてもらっているようなもんなんでしょ(笑)?

そのトヨタが赤字なのです。おそらく製造業が赤字などということはこれまでなかったのです。つまりですよ、製造業が重荷になったってことなんです。じゃあ、何で君は飯をくうわけ?ということですよ。

それは、トヨタがある、愛知県の方言をつかっていえば、

 

どえりゃあこと

 

なんです。

野口はこの構造を解説しています。その前に、この現実をもう少し現在に引きつけて解説しましょう。

 

エコ減税・エコポイントという政府依存

 

あの子供店長こと加藤清史郎くんのコマーシャルで有名な補助金を私たちは、あまり深刻に考えたことがないように思うのです。よく考えてみましょう。大トヨタ自動車が、自分の力で自動車を売ることができない事態が続いている、ということです。

政府が、補助金を出して、トヨタ自動車他の自動車会社にカネをばらまいて、ようやくトヨタ自動車は売上を維持している、ということです。自分の足で立っていないということです。野口は、ここを強調します。自動車への補助金がなくなって、とたんに売り上げが落ちる、という報道もあります。これは、家電についても同様です。エコポイントって何かというと政府の補助金です。現在、日本経済を牽引してきた基幹産業である、家電と自動車産業が何と自分たちの力で収益をあげられない状況にあるということです。

 よく考えてみましょう。

つまりこういうことなのです。私たち学校の教員は、トヨタのシステムで生徒を教育しています。従順な工場労働者、学校へ休まずいく。与えられた作業を意味がなくてもこなす。素直さ、素直さ、素直さ、1も2も3も全部素直さ。これは工場労働を基本としています。答えは先生がもっている。それを、より早く理解し、繰りかえす。学校はこれを、これだけをやっているのです。それは、トヨタ自動車の「よき社員」になるため、と考えていいのです。しかし、そのトヨタ自動車関連の産業が、稼げなくなっているのです。

 

雇用調整助成金という政府依存

 

これだけではありません。政府は、実は、大企業に対しては「雇用調整助成金」中小企業には、「中小企業緊急雇用安定助成金」という補助金を出しています。対象労働者数は、厚生労働省の発表では、234万人です。2009年度の補正予算で約6000億円もの予算措置が行われているのです。この申請をしている地域も、何と自動車関連産業や製造業が集中している中部東海地方が大変多いのです。その後、2010年の1月時点では、172.7万人に減ったそうですが、それとても、政府の購入支援があるからではないか、というのが野口の分析です。

つまり、売れないものを作っている企業を、政府が補助金出して雇用を支え、失業者を出さないようにしている、ということなのです。野口は一言こういっているのです。

 

「これってどこまで続けるの?」

 

かんたんです。政府が国債を振り出せなくなるまでです。

野口の計算では、失業者が5%というのですが、実際は、こうした補助金をはずせば14%程度ではないか、というのです。

 必履修などという足かせをはめてもらって生徒は授業を受けています。

 74単位、という枠を卒業単位として固定するとして、規制緩和して、競争させ、教育の供給する側に市場を導入したとき、現在の規制で給料をもらっている私たち教員は、どうなるか、これがこの問題の教育版ですね。


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