櫻井よしこという存在
櫻井よしこさんはその物腰の穏やかさと比べると驚くほどタカ派的です。いわゆる右と呼ばれる陣営のほぼ先頭をきっています。今回の安保法制については中国を仮想敵として想定し、アメリカの衰退という歴史的な転換点において、憲法改正などという悠長な手続きをひとまず飛ばしてできる限りの新安保法制を制定しなければいけない、とする立場ですね。この『永遠の0』(上、写真)の原作者百田尚樹さんもそちらの立場の方です。
それに対して、憲法違反(確かに普通に考えれば憲法にそもそも違反することは間違いないと思いますが)の戦時体制に反対する、とする立場の陣営が、この安保法制の廃案を目指しています。その側からみることが通常私たちの立場としては自然となるように私たちは教育を受けてきています。
さて、私はここでその両陣営のどちらがどうだ、という議論をここでしようというのではありません。
相対の世界に生きる私たちにとって、この両陣営のどちらが真実か、ということを断言することは不可能です。誤解しないでいただきたいのは、だから判断しなくていいのか、というとそれは私は私の立場で一国民として判断はします。そのことはひとまずここでの主題ではありません。
臆病者か否か
さて、私たちは『永遠の0』の宮部久蔵をみてきました。彼は、戦争中の真っただ中で、これまで説明してきたような、死なない生き方、死を恐れ、最後は家族のもとへと生きて帰るという戦術を極力貫こうとしてきたのでした。その生き方は、当時〈臆病者〉でしかなかったのでした。臆病者とののしられる生き方だったのです。それが、戦後70年たとうとして再び、よみがえり私たちによって再評価を得ようとしているのです。しかし、ここで考えなければいけないことがあります。私は宮部の生き方が正解だと見えます。特攻などという戦法を編み出した時点で負けなのです。負け戦は一刻も早く終了すべきだったのです。それができなかった当時の首脳部こそ本当は戦争責任を負うべきだったのです。この戦争で300万人が死にました。そのうちの200万人は最後の1年で死んでいるのです。宮部久蔵の生き方はその限りでは正解だったのです。当時としては、まちがっている、とこういう方法で表現するしかなかったのです。
しかし、よく考えてみましょう。それは、戦後70年たった私が判断しているのです。当時に舞い降りて私に判断せよ、といわれても、何が本当の事かは判断できなかっただろう。でも、宮部的な生き方を正しい・・・・かな、・・程度の判断を下した・・・かな・・・なのです。
この『永遠の0』の宮部久蔵は百田尚樹によって事後的に描き出された人格です。私たちは、事後的に宮部の生き方を正しいと判断できるのです。しかし、生きて、現実と向かい合っている当事者には、自らの責任の下生きる、生きることを判断するしかできないのです。
木村の教員人生
ここで、何も急に、ぐっと、個人の話になることもありませんが、ちょっと私の事を書きましょう。私は来年1年で教員を退職します。
この現在勤務する体制に対して、私はずっと「現実のニーズに沿っていない」「いつまでたっても生徒の教育を本位に考えるシステムにならない」とあるいみ異端児として生きてきました。最後はほぼ〈追放(笑)〉されたような状態になってしまったといってもいい。学校の体制はますますとんちんかんな方向へ向かっていく、とみています。周囲はおそらく面倒なことを言う、やらなくてもいい、聞きたくもないことばかり提案し、余計な不快をばらまく(笑)存在と見ているのですが、仮にそれがそうとして、私が本当に正しいのか、というと、それは、わからないわけです。私はもちろん、この消費社会、後期資本主義という段階にいたった日本社会での教育活動は、高度成長時代のそれとは根本的に方向をちがえなければいけない、と考えて行動してきました。あるいみ、それは、生徒には評価されてきたと思います。しかし、・・・。ここが、むずかしいところですね。ま、何十年か後に宮部久蔵のように扱われたらいいですけどね(笑)。私たちは事後的にしかその正確な判断はできません。そのような物語として、この『永遠の0』をご覧になればいいと思います。
・永遠の0 1 作為と自然
・永遠の0 2 比較としての武装する市民
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先生という存在が、学校からいなくなるという財産の紛失を、先生の多くの教え子は事後としてとらえている筈です。
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先生。いい加減、社会にいる人達に向けて「本」を書いてください。
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