高校公民Blog

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メタファとしての八重の桜

2013-08-02 22:18:18 | 映画・演劇・ドラマ

NHK大河ドラマ『八重の桜』

 まったくご存じない方のためにかんたんに説明しましょう。
 現在、NHKで日曜の夜8時から大河ドラマ『八重の桜』がオンエアされています。時代は幕末、つまり江戸時代の末期です。主人公は山本八重。綾瀬はるかが演じています。八重は会津藩の武士の娘です。幕末の会津藩はきわめて悲惨な末路をたどります。会津は何度となく江戸幕末のドラマの素材として取りあげられ、私たちはその顛末のなかに時代から消えゆくものの悲劇を見てきました。
 もちろん、ドラマは時代の子です。時代が産み出すのです。今回の『八重の桜』も、そういう意味で見る側に時代の解釈を多様に可能とするものとなっています。

最後まで軽視される山本覚馬



八重の兄、山本覚馬(西島秀俊)(上、写真)は佐久間象山に師事し、西洋砲術を学びます。西洋と当時の日本社会の軍事力の途方もない格差をいち早く知った山本覚馬は藩に対し、近代的な武力の必要を説きます。しかし、藩はまったくそれを受け入れようとせず、槍と刀による鍛錬で十分とし、覚馬は一時登城を許されなくなります。
 八重はその兄から鉄砲をはじめとした西洋砲術の手ほどきを受けます。女、というところがミソですね。しかし、藩は最後まで山本覚馬を重視することはなかったのです。
 会津藩はいくつもの過ちを犯しますが、藩主の決断が、すべてでした。藩主が間違っていたのです。時代を読むこともなく、徳川への忠誠を堅く守り、いくら自藩が劣勢になり、多くの犠牲をだしても、徹底して新政府に刃向かっていきます。相手は、西洋の砲術をいち早く受け入れていった薩摩や長州なのです。その武力の差は歴然としていました。しかし、最後までその事実を認めず、精神力で〈がんばる〉のです。日本社会ではよくある失敗ですよね。
 会津は最後、鶴ヶ城に籠城します。そのときのエピソードが意味が深い。薙刀(なぎなた)をもって女たちが出陣を申し出ます。

「薙刀で勝てるかよ!バカ」

彼らは戦場でライフル銃の雨を見、はじめて気づくのです。

「もし無事にお城へ戻れたら、八重さんに鉄砲を習おう!」

 そう言った本人は銃弾を腹に浴び、帰らぬ人となるのです。
 その後、〈おんな〉の八重が、銃を片手に西洋砲術の知識を駆使し縦横無尽の活躍をします。その姿を見、会津のジャンヌダルクと呼ぶ人もいるのです。
 この八重の姿をみて、砲術についての知識がいかに重要かを、このとき藩主が痛感する姿を映像では映し出します。

「バカヤロー!遅いんだよ!」



 私たちは、そう言わずに会津藩主、松平容保に同情の涙を流してきたのかもしれないのです。実は、藩のなかにも先を見据えていた家老がいたのです。西田敏行演ずる西郷頼母(たのも)(上写真右)がその一人です。もちろん、注意が必要ですが、「先を見据えていた」という事実は、後から判明します。その時は、ただの「腰抜け」として、冷遇されていくのです。

ここでちょっと世界史のお勉強

 さて、幕末の世界情勢を少し、おさらいしましょう。
 西洋史的にいいますと、1870年代から西洋は帝国主義の時代に入ります。かんたんに言うとグローバル経済が出現すると言うことです。そのなかで市場を世界に求めて、各国が競争します。経済のグローバル化こそが時代の流れでした。そのなかで我が江戸幕府は鎖国体制をひいてきました。しかし、その圧倒的な武力を前に、日本は開国していきます。国内を近代化する必要性、封建的な社会制度を市民社会へと変換していかなければならない時代でした。ところが、会津藩はグローバル化からはほど遠いスタンスをとり続けることになります。
 それは、指導者の責任が大変大きい。近代化に遅れ、封建的なシステムを温存し、多くの犠牲を払っていったのです。その過程で考えようによっては彼らは責任をとり自決していくのです。滅びるものの美学を想定する人は、ここで涙すると良いと思いますね。でもね、いざ、てめえが滅びるかと思うとそこは違います。

 今、我が静岡藩の藩校で禄を食んでいる私木村は、この封建藩校の管理職につきあって、賃金カットにつぐ賃金カットを続けていくかと思うと、複雑な思いになります。市場という感覚もなく、授業料は年貢と考え、顧客という感覚もきわめて薄く、「そこへならえ」というお手討ち体罰を続ける藩校藩士を見ていると、会津は人ごとではない、と思えるのです。
 
  

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