《本記事のポイント》
- 1980年代の中南米債務危機が再発する
- 中国から融資を受ければ、政治的にも属国に
- 債務の罠に陥れようとして罠にはまりつつある中国
イエレン米財務長官は20日、米ワシントンで講演し、「米中の経済が完全に分離することは両国にとって破滅的だ」と述べ、経済面で中国に対し関与政策を続ける考えを示した。
保守系メディアである米FOXニュースで中国問題専門家のジョナサン・ワード氏は、「2030年までの10年間が勝負で、その間に対中依存がどれだけ減らせるかにかかっている。経済的な封じ込めが重要だ」と述べ、バイデン政権の方針を批判した。
米利上げで債務危機に陥る国が増え続ける
現在、アメリカの利上げとともに、途上国の債務危機のリスクがかつてないほど高まっている。
2022年3月から米連邦準備制度理事会(FRB)は、国内のインフレ対策のためにゼロ金利政策を解除し、利上げを行ってきた。
利上げに伴ってアメリカ国内では、低金利を当てにしてきたビジネスが立ち行かなくなってきている。一方、この利上げの影響は、アメリカ国内に留まらない。
このほど米ボストン大学グローバル開発政策センターが6日に公表した報告書で、すでに債務危機に陥っているか、陥る可能性が高い国は61カ国あり、これらの国が抱える債務8120億ドルのうち、3170億ドル~5200億ドル(約70兆円)の減免、つまり借金の棒引きが必要だとした。
途上国は、コロナ禍で財政出動をし、自国通貨が下落。外貨建て債務の返済額は上がる。
たとえば1ドルが100円から200円になれば、自国通貨で200円を支払わなければ、1ドルの返済ができない。
いわゆる「通貨のミスマッチ」が起き、ドル建て債務を返済するために、途上国は外貨準備を使い果たさなければならなくなる。
外貨を輸出で稼げなくなった場合、外貨はひっ迫し、輸入物価高によるインフレで、国内経済もインフレが進む。「インフレによる恐慌」が進んでいくのだ。
国際通貨基金(IMF)が輸入額やマネーサプライ、負債等に基づいて計算式を公表している。この計算式の下でIMFは、適正外貨準備額の適正水準を100%~150%とする。このレンジを下回る国に、トルコ、南アフリカ、アルゼンチン、中国、パキスタン、スリランカが挙げられている。
1980年代の中南米債務危機が再発する
アメリカでインフレが2桁台になった1980年代は、米景気後退の影響を受け、原油価格が急落。中南米各国では、利払いのためのドルが不足した。
元本の期日が到来しても、手元に現金がなく、借り換えができなければ、国はデフォルト以外に選択肢がない。デフォルトが急増し、貸し手は打撃を受け、グローバル債券市場は停滞した。
中南米の経済成長は全域で低迷し、「失われた10年」がやってきた。
既にスリランカ、ザンビア、ガーナがデフォルトしたが、今後外貨建てで借りている国のデフォルトが起きる可能性はさらに高くなるだろう。
中国から融資を受ければ、政治的にも属国に
問題は、ドイツのオーラフ・ショルツ首相が昨年5月に警告を発していたように、中国の諸外国に貸し付けている融資が、次の債務危機の引き金を引く可能性があるということだ。
国際開発協会(IDA)加盟の低所得国約70カ国の二国間債務は、中国からの債務が21年に49%を占め、10年の18%から上昇した。しかも、世界銀行から借りれば年利1%の低利であるのに対して、中国からの利子は7%と高利貸しそのもの。国内総生産(GDP)の20%超を借金返済に回さなければならなくなっている国もある。こうした国の行く末はデフォルトで、国外に脱出する国民を増大させることになる。
債務の罠にかけ、他国の債権者を道ずれにするような世界的な金融危機の爆弾を仕込んできたのは中国なのだが、債務再編でも政治的な理由で強弱をつけている。
例えば、対インドとの関係で地政学的な要衝である、スリランカへの債務再編には協力的である一方、アフリカのザンビア、ガーナ、エチオピアなどの債務再編には慎重といった具合だ。
しかも、中国の融資総額や融資条件は二カ国間で機密保持が徹底されており、極めて不透明である。知られている限りでは、パリクラブ(西側諸国から成る主要債権国22カ国の非公式の集まり)への支援を禁止する条項や、ウイグルや台湾問題について、中国寄りの立場を表明するよう強いる条項も含まれている。
例えば、ニカラグアは22年1月に中国の「一帯一路」構想に参加直後、台湾と断交した。借金漬けにされて、中国からお金を引き上げることを恐れる低所得国は、外交上、中国の属国となり、中国の味方になるよう強いられることになるのだ。
日本はスリランカの債務再編で主導的役割を担うが、経済的な面のみならず、中国の債務の罠がもたらす負の側面について徹底的に非難の声を上げるべきだろう。
債務の罠に陥れようとして罠にはまりつつある中国
中国・パキスタン経済回廊だけで中国は620億ドル(約8300億円)投じている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の調べによると、150カ国にトータルで約1兆ドルを投じているとされている。
中国の復旦大学グリーン金融開発センターの「2022一帯一路投資報告書」でも、中国は13年から22年までに、一帯一路事業に総額9620億ドル(約1.3兆円)も投じているとされている。当初は8兆ドルを投じる計画だったが、現在は1兆ドルに留まっているというところだ。
ただ、この約1兆ドルには外貨準備も含まれるとされており、焦げ付けば焦げ付くほど、中国の外貨準備が目減りしていくことになる。文字通り、罠にはめようとして、罠にかかった状態となりつつあるのだ。
中低所得国のデフォルトがスパイラル的に発生した場合、中国は自国通貨の防衛ができなくなるほど外貨準備が減少していくこともある。
メシアクラスの宇宙存在であるヤイドロンは、中国を崩壊させる方法として、以下のようなシナリオがあり得ると述べていた。
「いちばん平和的な方法としては、『中国経済の崩壊』を一つは考えています。欲がありますから、欲があるのを、いっぱいいっぱい欲をかかせて、兵線が伸び切ったところで中国経済の崩壊を起こすというのが一つです」
(関連書籍『ヤイドロンの霊言「世界の崩壊をくい止めるには」』参照)
ドル高の猛威、債務国のデフォルト、融資の不良債権化、人民元の対ドルレートの下落と外貨準備の不足により、自国通貨を買い支えられない未来から、変動相場制に移行する未来も視野に入ってきた。
そうした中で、バイデン政権は、中国の協力がなくして次の金融危機は乗り越えられないと考え、経済的な関与政策を模索しているようだが、世界平和にとって禍根を残す政策にほかならない。
利上げの影響で途上国の債務が焦げ付き、元安圧力も高まる中で、中国が自ら撒いた種を刈り取らなければならなくなっている今、中国に対しては経済的な封じ込めが最も効果的である。バイデン政権は、神の正義から目を背けてはならない。