戦略核兵器削減条約を批准
米上院 米ロの新たな核軍縮へ
米上院は22日午後、今年4月にオバマ大統領がロシアのメドベージェフ大統領との間で調印した戦略核兵器削減条約(新START)を批准しました。ロシアと並ぶ核大国米国での条約批准は、昨年12月に米ロの旧条約のSTART1が期限切れで失効した後、新たな核軍縮に向けた第一歩となるものです。
本会議での採決で、賛成は民主党58、共和党13の71人となり、条約批准に必要な3分の2にあたる67を上回りました。反対は共和党の26人、棄権は共和党の3人でした。
オバマ大統領は就任直後の2009年4月、チェコのプラハで「核兵器のない世界を」と演説で主張。新STARTの今年中の批准をめざしてきました。
新条約では、世界の核兵器の90%以上を保有している米ロ両国が核兵器の削減を透明性を持ってすすめていくもので、7年間で、戦略核兵器配備数はそれぞれ1550発以下に、弾道ミサイルなど運搬手段は800基以内にすることが主な内容となっています。
上院外交委員長のケリー議員(民主)は、「条約の批准は、核兵器が持つ危険を遠ざけ、われわれの国をより安全とする歴史的な行為」と語り、同委員会の共和党筆頭を務めるルーガー議員も「大量破壊兵器の阻止を望む人々や科学者の意に沿ったもの。ロシア議会もすぐに批准することを期待している」と表明しました。
解説
「核なき世界」へ一歩
「民主、共和の両党が今国会で、国の安全保障上の最重点の懸案を承認したことを歓迎している」
オバマ大統領は22日夕、米ロの新たな戦略核兵器削減条約である新STARTが上院本会議で批准された後の記者会見でこう語りました。
就任後、「核なき世界」を前面に出してきたオバマ大統領にとって、新STARTの年内批准は必須とも言える課題でした。
会見のなかで、新STARTの意義について、核兵器削減に向けた検証措置も伴っているもので、信頼のおけるものと指摘。「ロシアとの(核兵器削減での)関係強化を続けることは、イランの核開発阻止や、核兵器がテロリストの手にわたることを防ぐうえでも、不可欠なことである」と、核拡散のうえでも効果的であることを強調しました。
2009年12月に米ロの第1次戦略兵器削減条約(START1)が期限切れで失効するのを前に、オバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領は09年4月に後継条約での交渉開始で一致。10年4月には両大統領が調印にこぎつけていました。
新STARTは、包括的核実験禁止条約(CTBT)や、兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約などと並び、一連の核軍縮措置の一つです。
ただし新STARTが対象にしているのは射程の長い戦略核の配備数だけ。両国がなお互いに数回消滅させられるといわれる戦略核の保有数の削減と、今回の条約に含まれていない射程距離の短い戦術核の削減に進むことが今後の重要な課題になります。
国際的に核兵器廃絶に向けた交渉開始をとの機運も高まっているなか、ロシアの批准を待って発効する新STARTは、オバマ大統領が提唱する「核なき世界」の実現に向けての一歩前進でしかありません。
しんぶん赤旗より
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