天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

ひこばえネット4月の1句

2023-04-24 19:31:41 | 俳句



そう感激することもない日常。聞きたくないニュースが飛び込んでくる日常。自分の句もそうさえないと実感する日々、句会で優れた人の句に合うと熱いシャワーを浴びたような気持ちになる。
ひこばえネット4月の110句をみていて痺れるような1句に出会った。11人のうちの誰かだが4人ほどの候補の中で作者をあれこれ想像して楽しかった。

どの色も日に透けてをりチューリップ 内田創太
この句は俳句の世界でいう「一物」である。蒲公英の絮という季語のことのみ書いてほかの物、事を配合していない。取り合わせでない句作りはハードルが高い。季語のことを書くとどうしてもその説明に陥りやすい。
チューリップの一物の佳句といえば、「チューリップ喜びだけを持つてゐる 細見綾子」「チューリップ花びら外れかけてをり 波多野爽波」などすぐ思い出す。英語をぎこちなく邦訳したような細身句は幸福感いっぱい。波多野句の愚直な写生にほれぼれする。その二人と違う一物の世界を内田が見せてくれた。
内田は色に光を加味した。この花の大きさや構造は波多野の描いている通りでゆえに光を感じる花弁である。言われてみれば「日に透けてをり」であり色の透明感がなんともいい。日に透ける大柄の花はチューリップ以外にあるのだが、うまいのが「どの色も」という導入。これで赤、黄、橙、白など原色の鮮やかなチューリップをあますことなく描いた。
俳句で光を書くのはむつかしい。鷹主宰が菊は菊として使い菊日和としてほしくない、また晩夏光というより晩夏で決めてほしいと繰り返しおっしゃる。要するに光への衝動が句を軟弱に情緒的にすることへの警鐘である。同じことを湘子も指摘した。光そのものを言わずに光が感じられるほうがいいということである。
しかし内田は真っ向から光に挑戦してムードに流れないしかとしたチューリップを現した。見事である。

ひこばえネットは12名で鷹所属が6名。
鷹主宰は鷹の人が配合の句を書くのに習熟していてレベルが高いが一物はやや苦手であると指摘した。その警鐘は当たっているようで、この一物も鷹でない作者である。小生も含めて鷹連衆はもっと一物に挑戦しないといけない。

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