天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

舟崎克彦氏を悼む

2015-11-05 12:12:45 | 俳句・文芸


本日の毎日新聞27面に女優加藤治子の死亡記事が大きく出た。その横にこれより小さいながら、児童文学作家、舟崎克彦(ふなざき・よしひこ)氏の死も報じられていてはっとした。なんと先月の15日に亡くなっていた。70歳。

ぼくは22歳で文化出版局へ入社した。1年ほどして「すてきなお母さん」なる母子向け月刊誌を創刊してそこに配属させられた。
生意気なだけでろくに文章も書けないころつきあっていただいたのが舟崎さんである。
彼はそのころ『ぽっぺん先生と帰らずの沼』で赤い鳥文学賞を受賞するなど新進気鋭の作家であり、ぼくより6歳年長の頼りになる兄貴であった。

吉祥寺の公園の裏あたりに住んでいらした。たいして用もないのにお邪魔して夕飯をいただいたりした。
ぼくが飲めないのですぐ鍋料理となり湯気の中でいろいろな話をした。
舟崎さんは生粋の江戸っ子。ぼくが長野県の山育ちであることに興味を持っていただき、ぼくはよく故郷の話をしたものだ。
それが高じて、ある正月の企画に「歩き初め」を提案して、伊那の奥地の鉱泉宿に案内して冬の山国歩きの文章をお願いしたこともある。
「書初め」があるのなら「歩き初め」があってもいいのではというぼくの発想に舟崎さんはすぐ乗ったのである。

江戸っ子だけに古典落語に造詣が深いなどぼくはずいぶん勉強になった。
お礼にエッセイ集を出した。それが『ファンタジーの祝祭』(1981年)である。舟崎さんは文章も絵もこなす。デザイン感覚にも秀でていて挿画、装幀すべてをお任せしてぼくは口を出さなかった。
おもしろいことの大好きな兄貴は奥付も遊んだ。

たしか長男を連れて舟崎さんを訪ねたこともある。そのとき長男にサイン入りの本をくださった。長男は今もそれを大事にしているようだ。
『なきべそおおかみ』は凶暴のはずの狼の息子が泣いてばかりで羊の教室にとけこめない話。
長男の三歳の娘に読み聞かせすると食い入るように聞く。
舟崎さん、兄貴の書いたものはずっと生きていますよ。

亡くなりし人の本読む小春かな



弱い狼を扱った微苦笑の逸品  遊びこころ満点の『ファンタジーの祝祭』の奥付
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