四日目、正代をはたき込みで破った大栄翔
大相撲夏場所、関脇陣に注目している。大栄翔、若元春が4勝0敗、霧馬山、豊昇龍が3勝1敗である。大関・貴景勝、横綱・照ノ富士が満身創痍でかろうじて土俵に上っている状況にて関脇の誰かが上がって交代する気配がある。
霧馬山が今場所10勝すれば大関の声がかかるかもしれない。ほかに10勝して大関の可能性があるのが大栄翔である。朝之山は身体が悪くて落ちたのではないからいずれ上に来るだろう。若元春も近いうちに大関になりそう。自力がある。豊昇龍も可能性があり、問題は大栄翔である。問題というのは彼だけが突き押し相撲であるということである。
2021年の春13勝2敗で優勝したもののその後なかなか10勝できなかった。出来の良し悪しが定まらないというのが押し相撲の特徴である。大関になって苦しんでいる貴景勝もケガのほかに押し相撲特有の不利を背負っている。阿炎も成績が安定しない。
突き押しは相手がいなくなったとき支えるものがなくなって転ぶ。
四つ相撲は組んでいるのだから相手がいなくなることはない。
この差は運命である。同じ資質の力士が同じ努力をした場合、四つ相撲のほうが負ける確率が少ないとみる。
きのう翔猿を極め出しで破った照ノ富士が四つの安定感を示すいい例。もろ差しになられていい相撲ではないもののがっちり極めて動けなくしてブルドーザーのように相手を土俵の外に運んだ。四つ相撲は基本的に安定感があり、大関・横綱を維持するのに向いている形といえる。
むかし柏戸という横綱がいた。大鵬と一時代をつくったヒーローである。彼は関脇のころ突き押し相撲であった。回転の速い突っ張りを武器にした。そう、今の阿炎のように。柏戸は横綱になってから相撲の形を変えた。突っ張りが減って立ち合いにすぐ前みつを両手でつかむ四つに変えた。自然に変わっていき、その形で一気に寄り切る「電車道」を完成させた。組んで相手を動けなくする安定感に気づいたと思う。
突き押しのまま横綱を張ったのが北勝海である。この人の修練はすさまじかったと思う。突き押し相撲で横綱を張る安定感を得るのは至難の境地。そこに至ったことを尊敬する。
さて、大栄翔はまさに北勝海型である。先輩の精進を見習ってほしい。
初場所10勝5敗、春場所12勝3敗の準優勝、今場所10勝以上すれば安定感もまずまずといえる。
まわりが四つ相撲の敵ばかりゆえに突き押しの力士に頑張ってもらいたいのである。