天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

卯の花腐しの気分

2023-05-16 05:36:59 | 俳句



きのうは雨。散歩しにプールわきの森へ入ると白い花が垂れ下がっていてまるで異界への入り口みたいであった。その木が花をつけたこと、その花が雨の重さで垂れたことに驚いた。この花が卯の花かどうか定かではないが卯の花腐し(うのはなくだし)の気分になった。
この季語を歳時記は、陰暦四月の卯の花月に降り続く雨である。その頃は野山に卯の花が盛りで、その卯の花を腐らせるように降る雨である、という。

卯の花くだし逢ひゐることも流れゆく 水野菊枝
俳句をやり始めた30年前、若かったので、この句の恋愛情趣に惹かれた。情事の最中の女の感慨である。感極まっているのだがこれからどうなるか不安なのだ。恋ゆえの無常。季語が見事に決まっている。俳句の取り合わせはこういうふうにするのかと思ったものだ。

去年だったか句友がこの季語を兼題に出した。
水野句の懈怠というのを書こうと思ったが恋は書けない。女の得意分野であり類想に陥る可能性大。男の懈怠は……と考えていて、ふいに雀荘を思った。麻雀はやらないので雀荘は行ったことがないが季語を考えているうちに雀荘がありありと見えてきて、
雀荘に目覚め卯の花腐しかな わたる
ができて鷹に載った。仮眠しながら麻雀をしたという風景である。

『季語別鷹俳句集』に「卯の花腐し」を探したが無い。この季語の特選がなかったことを意味する。また、主宰もこの季語で格別な句を残していないことも。
ただし「卯の花」で
卯の花や箸の浮きたる洗桶 小川軽舟
がある。この句は明るい。窓のむこうに晴々とした白い花が見える。季語に対いて「箸の浮きたる洗桶」が何とも言えぬ情趣を醸す。なぜここで「卯の花」がいいのか、説明しにくい。
雨が降ると降らないとで卯の花はまったく違う様相を見せる花である。


コメント
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