敗者復活の極意～２

戊辰戦争で幕府軍にはフランス軍事顧問団が付きフランス式の近代歩兵部隊
も有り海軍力は官軍とは比較にならぬほど優れていた。

長州藩は攘夷を実践し馬関戦争に脆くも敗戦するが彼我の武力の差を知らされ
列強との関係を友好的にし武器を調達し倒幕へと進む。
長州藩もまた上手に敗者に成ったのだ。

イギリスは薩英戦争に勝利し生麦事件の賠償金を幕府と薩摩藩から受け取ると
フランスに対抗する為に薩摩藩との関係を友好的にし武器を売却する。
ここでも攘夷を実践した薩摩藩は敗戦を上手に利用し倒幕へと進む。

徳川慶喜は京都で大政奉還し将軍職を投げ出した。
これで徳川政権は終焉を迎え内戦状態へ突入する・・・
下手に負けると日本は列強諸国の植民地に成る危機的状況が続くのでした。

攘夷勢力の薩長は対外戦争に敗者と成るがどちらも上手に敗者復活し倒幕戦争
へと進み鳥羽伏見で戦端は開かれた。
討幕軍に錦の御旗（錦旗）が翻ると慶喜将軍は部下や軍備を捨てて無敵艦海陽
で大阪から江戸へと単独で逃げ帰る。

江戸での慶喜将軍は賊軍に成るのが偲び難く有力な陸海軍が有るのにも関わら
ず官軍との戦闘を放棄し水戸に蟄居し敗者の道を選んだ。
幕府の歩兵隊や新撰組の残党は会津へ逃れ奥羽列藩同盟を作り転戦したが脆く
も敗れた。
江戸を脱走して来た榎本武揚率いる幕府海軍の戦艦は敗残の幕兵を収容し函館
へと逃れた。
彼らは北海道に蝦夷共和国を作り海外列強に幕府軍を交戦団体と認めさせよう
としたが夢破れ五稜郭で敗戦した。
敗軍の将、榎本武揚は後に明治政府の高官に返り咲き敗者復活を果たす。

肥前の鍋島候は鍋島藩独力でアームストロング砲（世界最先端の後装式大砲）
をスエズ以東で最初に製作した。
上野の彰義隊はこのアームストロング砲２門で瞬時に壊滅してしまう。

幕府には充分な軍人と兵器が有りながら、内戦状態を厭い、敗者の道を選んだ。
もしも潔く敗者の道を選ばなかったら・・・
幕府軍にはフランスが付き、薩長土肥にはイギリスが付いて内戦状態に成り国土
は荒廃し外国列強の植民地に細分割され悲惨な結果に成っていたに違いない。

例えば北海道はロシア領、本州は列強が分割した租界と傀儡国、九州はイギリ
ス領、四国はオランダ領などに成る可能性は有った。
日本人の潔さと負け上手の結果が我が国最大の危機を乗り越えたのだ。

薩摩藩と長州藩は尊皇攘夷の急先鋒で外国嫌いは徹底していた。
薩摩藩は横浜の生麦で行列を横切ったイギリス人を切り殺し有名な生麦事件を
起こす。
攘夷が嵩じて鹿児島で薩英戦争を起こし大敗するが上手に敗れた。
負けた上にイギリスに取り入り近代武装をして倒幕に備える。
長州も下関海峡を通過する外国船を砲台から砲撃し攘夷を決行するが大敗する。
有名な馬関戦争で上手に敗れた・・・
坂本竜馬の奔走で薩長連合が成立し時代は大きく動く。
薩長共に負けた事を奇禍にして上手に敗者復活し、倒幕を遂げ、戊辰戦争に勝利
し明治維新を成し遂げる。

勝者と成った明治政府も慶喜を赦し一部の有能な幕臣を新政府に取り込んで敗者
復活させた。
明治政府の成立直後には内部分裂も有り、勝者の中にも佐賀の乱や、萩の乱を起
こし敗者に成った勢力も有った。
なかでも西郷隆盛が征韓論で破れ下野し鹿児島へ帰る。
しかし鹿児島の私学校党に担ぎ上げられ西南戦争を起こしてしまう。
鹿児島から熊本までの地域で内戦状態に成るが、鎮圧されてしまい敗者と成る。
残念ながら西郷や桐野の敗者復活は成らなかった。

西南戦争で活躍した警視庁の跋刀隊の中核は戊辰戦争で敗者に成り新政府に雇わ
れ敗者復活した会津藩出身者で有った事は皮肉だ。

明治政府は国内を纏め富国強兵策を取り日清、日露の戦役で勝ち、朝鮮半島、
台湾を植民地にして帝国主義の覇道を歩き朝鮮、台湾の国民に多大な迷惑を
掛ける事になった。

第一次世界大戦では火事場泥棒的参戦をし戦勝国となる。