木のつぶやき

主に手話やろう重複の仲間たちのこと、それと新聞記事や本から感じたことを書き込んでいきます。皆様よろしくお願いします。

読売新聞「手話通訳者 心身の不調深刻」

2010年12月21日 21時52分39秒 | sign language
2010年12月21日(火)読売新聞夕刊に「手話通訳者 心身の不調深刻」との記事が掲載された。
朝日の記事との掘り下げ方の深さの違いはどうして起きたのか?
取材先が朝日;全日ろう連と読売;全通研という違いによるものなのか?
読売の記事にも全日ろう連のコメントが載っているが「通訳者拡充のためには、手話に関心を持つ人を増やす必要があると、『手話学習辞典』を先月刊行した。」ってそりゃただの自分ところの本の宣伝だろっ!情けない。

■手話通訳者 心身の不調深刻■
 -肩こり、視力低下、不眠、うつ・・・
  -人手不足 待遇改善を

 聴覚障害者のコミュニケーションを保障するために、放送や会議など様々な場面に手話通訳が取り入れられるようになった。活躍の場が増える一方で、手話通訳者特有の健康障害への対策が課題となっている。(梅崎正直、写真も)

*20分めどに交代
 内閣府で開かれる「障がい者制度改革推進会議」は、4時間にわたる長い会議だ。インターネット配信のため、手話通訳者も長時間、カメラの前に立つ。通訳者の江原こう平さん(35)は「20分をめどに3人で交代します。そうしないと通訳能力が低下するからです」と話す。
 手話通訳は、はた目以上にハードな作業。肩や腕が疲れるのはもちろん、音声言語を手話という動作での伝達に翻訳する行為はヽ脳の負担が大きい。「長く通訳しすぎると、頭の中が真っ白になってしまうこともある」(江原さん)という。
 裁判や病院での通訳は責任が重い。推進会議のように専門用語が飛び交う場面にも対処しなければいけない。疲労と緊張の連続に体調を崩す通訳者も多い。
 手話通訳者の健康問題が表面化したのは、1970年代の末だ。典型的なのは「頚肩腕障害」といわれる症状で、肩や腕のこり、痛み、しびれがとれなくなる。身体症状だけでなく、不眠やうつ、自律神経の不調を伴うことが多い。
 全国手話通訳問題研究会が05年、1376人の通訳者に行った調査では、8割の人が肩のこりとだるさを訴えていた。そのうち、常に症状が続いている人が約半数。「目が疲れる」は8割、「視力が落ちた気がする」は6割と、相手の手話を理解するために、目を酷使する仕事であることもわかる。また、手話通訳を「やめたい」「続けられないかもしれない」と答えた人に理由を聞いたところ、「体力や健康上の理由」が4割弱に上った。
 長崎県の女性(61)は、16年前に頚肩腕障害と診断された。当時、県の嘱託の立場で、多い年は年300件の通訳をこなしていた。「肩こりくらいは当たり前だと思っていましたが、ある時から、しびれやふるえが止まらなくなった。何もしなくても肩がぴくぴく動いたり、お茶を持つ手が震えたり」。精神的にも追いつめられ、電話が嫌になり、手話の話も聞きたくなくなっていた。時間制限を設けて仕事を続けながら治療し、快方に向かったのはこの数年のことだという。

*医大協力の電話相談
 深刻になる前に治療につなげようと、全国手話通訳問題研究会は滋賀医大と協力し、「けいわん110番」を設け、相談を受けている。健康維持のため、通訳前後のストレッチや、リラックスする呼吸法の習慣化を呼びかけ、冊子やDVDも作成した。場面によるストレスの違いから、病院や職場など生活の場では25分、講演会や警察署、裁判所などでは20分、テレビ中継では15分と連続時間に限度を設け、交代で通訳することを提唱。自治体による健診の普及にも力を注ぐ。
 背景には、手話通訳者の不足がある。他に頼める通訳がいなければ、聴覚障害者からの依頼を断れない。時間外の依頼にサービス残業で応じている人も多い。
 全日本ろうあ連盟は「通訳者拡充のためには、手話に関心を持つ人を増やす必要がある」と、「手話学習辞典」を先月刊行した。
 また、非正規雇用の割合が近年増しており、05年では8割弱。依頼に応じて派遣される非正規の登録型通訳では、いくつもの事業所を掛け持ちしないと、生活が維持できない実態もある。通訳者の健康を守るには、身分の保障や待遇改善により、安心して働け、休める体制作りも必要だ。

 ◆けいわん110番
 医療的な相談=滋賀医科大学社会医学講座℡077・548・2187、ファクスO77・548・2189
 仲間を守る取り組みに関する相談=全国手話通訳問題研究会健康対策部ファクス075・451・3281
 ◆わたしたちの手話学習辞典(2600円)財団法人「全日本ろうあ連盟」出版局℡03・3268・8847、ファクス03・3267・3445
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

朝日新聞より「手話通訳 充実が課題」

2010年12月21日 21時41分27秒 | sign language
はからずも同じ日に朝日新聞と読売新聞に手話通訳についての記事が掲載された。
まずは2010年12月21日朝日新聞朝刊より。
全日ろう連に取材しているのに、手話通訳者の待遇に関する記述がなくて、単に「最高裁が悪い」記事になっていてがっくり。「初の弁護士」っていうのもなぁ~。この記事じゃ「手話通訳制度の充実」って具体的にどういうことが求められているのか読者にはさっぱり伝わらない。

「手話通訳 充実が課題」
【写真略】聴覚障害者の相談にのる田門浩弁護士=東京都渋谷区の東京聴覚障害者自立支援センター

◆聴覚障害者狙う聴覚障害者/結婚詐欺公判
 東京地裁立川支部で20日に開かれた、結婚詐欺の罪に問われた聴覚障害者の男(65)の公判。同じく聴覚障害者である被害者の女性は、法廷の手話通訳を通じて被害の実態を訴えた。同じ境遇への安心感を利用した悪質な事件が相次ぐなかで、聴覚障害者が司法や行政に少しでもアクセスしやすくなるよう、関係団体からは手話通訳制度の充実を求める声が上がっている。(根岸拓朗、浜田知宏、三浦英之)

◇尋問時間、通常の数倍
 詐欺の被害に遭ったとされる女性にはこの日、検察、弁護側双方から尋問があった。女性は「うそをつかない」との宣誓文を声を出して読むのが難しいため、裁判所職員が代読して裁判が始まった。
 女性は検察官の質問に対し、裁判官の前に座った手話通訳を介して答えた。検察官が質問を声にすると、手話通訳が手話にして質問を女性に伝える。女性は自らの記憶や体験を手話で答え、通訳がその証言を声に出して法廷の裁判官らに伝えた。
 手話の通訳を介するため、質問のやりとりは通常の尋問の数倍の時間がかかっただけでなく、質問の内容が思うように伝わらず、女性からは「質問が長すぎます」「理解するのが難しいです」という返事が繰り返された。
 証言によると、女性と男が初めて会ったのは2003年5月。検察官に「初対面で『結婚相手を探している』と言われてどう思ったか」と問われると、女性は「優しそうな人だと思った」と答えた。
 検察官の質問に対し、女性は男に対して200万円、500万円など次々と高額の金を貸したと証言。「彼は1億円の定期預金があると言っていた。返してくれると思っていた」と説明した。
 弁護側が「男が偽名を名乗っていたことに気づいた後も、理由を尋ねなかったのはなぜか」と質問すると、女性は「おとなしい性格なので疑問は言わなかった」と証言した。
 女性への尋問中、被告の男は通訳と女性を交互に見つめ、時折メモを取っていた。この日は結局、尋問は終わりきらず、次回の公判に持ち越された。

◇地域で運用まちまち
 法務省によると、1880(明治13)年制定の旧刑法は聴覚障害者をいっさい処罰の対象にしておらず、1907年に定められた現在の刑法も40条で「罰しないか、減刑する」としていた。これらの規定は「聴覚障害者は言語の知識を獲得するのが極めて困難で、一般的に精神の発達が阻害されていると考えられていたため」とされる。「聴覚障害者への差別」という意見が絶えず、40条は95年になって削除された。
 刑法は改められたものの、聴覚障害者が司法や行政にアクセスしにくい環境は改善されていない。
 98年にろうあ者として初の弁護士になった田門浩弁護士(43)は「聴覚障害者の被害を防ぐためには、聴覚障害者を狙った被害の実態や正しいお金の使い方を知ってもらう必要がある」とする一方で、「行政では今、健常者には様々な社会教育を実施しているが、手話通訳者がいないと聴覚障害者は参加できない。公的機関には手話通訳を配置し、聴覚障害者がより広く社会に参加できるようにすることで、情報を得られやすくする仕組みが必要だ」と問題点を指摘している。
 聴覚障害者の司法参加には、どうしても高度な技能を持った手話通訳が必要だ。
 全日本ろうあ連盟によると、法廷における手話通訳の運用は各裁判所の判断に委ねられているといい、「地域によって基準がまちまちで、通訳技術についても保証がなされていない。最高裁には手話通訳の法制化などを求めているが、実現していないのが現状だ」(担当者)という。
 同連盟は「聴覚障害者が司法にアクセスするためには、手話通訳がどうしても必要。手話は言語として認められておらず、手話通訳の絶対数も足りていないため、聴覚障害者の司法への参加はかなり難しい」と話している。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする