姪っ子メグ おじさん、洋服買ってる?
キミオン叔父 もう20年ぐらいろくに服なんて買ってないな。
太っちゃったから?(笑)
ああ、それもあるな。いつだったかな、キクチタケオの洋服買おうかなと思ってショップに入ったら、ウェストが全部入らないの。直せる?って聞いたら「直せるサイズの限界を超えています」って言われてさ、それ以来、ショップには足を向けていない。
ハハ。昔はよく行ったんでしょ。
そうだよねぇ。中学校・高校生ぐらいの時はさ、田舎だったけど、三軒ぐらいちょっとおしゃれな洋服が置いてある店があってさ、毎日のように覗いていたよ。でも恥ずかしいな、JUNの花柄のシャツ着たり、太いベルトにラッパジーンズとか、テンガロンハットにサングラスしたり、当時の流行だからしょうがないこともあるけど、その頃の写真見せられたら卒倒しちゃうね。
そうか、今度盗み出しちゃおう。
まあジャケットとかコートとかはさ、何年も前に相方のお兄さんが亡くなったけど、その義兄の形見分けで譲ってもらって、そればっかり。そうだね、40ぐらいになった時は、これからはPAPAS路線で行くかぁなんて思ったこともあったけど、もう買い物自体が面倒くさい。食べ物の調達だったら、市場に毎日でも行くのにさ。
アタシもそうだなぁ。古着屋さんがほとんどかな。引越しのときに昔のお洋服をダンボールに入れたまま、もう何年もそのままよ。ときどき街でおしゃれな人見るといいなあと思うことあるけど、そんなにフォーマルな機会もないしさ、おじさんとお出かけするときもほとんどジーンズだしなぁ。
このアミューズ・ミュージアムは、アミューズが経営してるんだな。いつも浅草寺あたりに来たとき、気にはなっていたんだけど、どうせみやげ物やみたいなもんでしょ、と思っていた。今回から「ぐるっとパス」にここが入ったから期待もせずに来て見たんだけど、いやあなかなかいいじゃないの。
BOROというのは、ボロでも襤褸でもいいけど、いまや国際語だもんね。裂布や刺し子やの展示会はわりとよく行くけど、ここはちゃーんと考えられた展示がしてあるね。小さいミュージアムだけど、テキスタイルアートが好きな人にもお勧めだし、ディスプレイのお手本になるような工夫があちこちに施されている。ちゃんとディレクションしてあるのよね。
名誉館長は、民俗学者でもあり古民具などの収集家でもある田中忠三郎さんだけど、まあこのミュージアムは、彼のコレクションの展示から、外人客も多い浅草で観光客にも見てもらえるように構成したというものだね。田中さんはとくに青森の江戸から昭和の庶民の古着や民具を収集したんだね。
青森は寒いから綿花栽培は出来ない。だから麻から糸を紡いで織って衣服にする。でもそれはすぐにボロボロになるから布をほどいて糸にして編みなおしたり、パッチワークやキルトのように裂布をつなぎあわしたり、もう次から次に重ねて防寒用にしたりとか、とにかく「もったいない」ということで大事に大事に針仕事をしながら、何代も継承してきたのよね。それがだけど、もう凄く見事で、「実用の美」になっている。
とくに、津軽南部なんかに多いけど、刺し子がいい。800点近く田中さんは収集したらしいけど、これ嫁入り道具で晴れ着にしたんだな。彼のコレクションは古書や近世文書も1万点近く、縄文遺跡からの収集物も1万点を越えている。で、ここのミュージアムのいいところは、写真もOKだし、BOROなんかは触ってくださいとなっている。手触りのなかに貧しいけれども温かい庶民の暮らしが浮かんでくるんだよな。
そんなBOROに魅せられ、作品に使用したのが寺山修二の『田園に死す』(75年)や黒澤明の『夢』(90年)ね。『夢』は黒澤和子さんが田中忠三郎と組んでBORO衣装を用意したんだけど、田中さんは根っからの黒澤ファンで、監督も満悦したらしいね。そのコーナーもあった。田中さんは棟方志功や高橋竹山など、もちろん北の芸術家とも交流していた。
昔の風習なんかも文章で紹介されていたけど、好きだったのは「夜酒盛(よじゃかもり)」という風習。下北半島の方で、十二月の初旬から中旬まで開かれる行事なんだけど、娘たちが年齢ごとの集団になって一軒の家を借りて、若い男たちを招待する。秋の収穫時期に採れたものを娘に持たせて、娘たちは料理をみんなでつくり、まあ合コンを暖炉端でやるわけだ。で、夜が明ける頃に男たちはござの下にそっとお金を残していく。それを娘たちは集めて、平等に分ける。そこで払いがけちくさかった男には、もうあんたは来るなと笑って言う。
なんか情景がまざまざと浮かんでくるね。そういう場でお互いに品定めしていたんでしょうね。ここは浮世絵コーナーは例のNHKとボストン美術館が三年間をかけてスポンルディングコレクションの6500枚の浮世絵を超高彩デジタル処理したコンテンツの展覧権を所持しているのね。
それもスクール形式の机でお勉強できるようになっていたけど、よく出来ていたよ。ナレーションが小倉久寛なんだけど、味のあるセリフでさ、よくシナリオが考えられているよ。これから次々とDVD化もされていくらしいし、浅草来るときの楽しみがひとつ増えたな。
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