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最近読んだ本

2010年01月17日 | 本・映画・音楽レビュー
ここ数週間、塩野七生だとか、老子だとか、そういった小難しい本ばかりを読んでいましてですね。
で、小難しい本を読んでいた反動でしょうか、もう狂ったようにフィクションものを読みまくってるわけです。

というわけで、あんまり長くならない程度に面白かった作品を紹介していきたいと思います。

鬼平犯科帳(池波正太郎)
江戸時代に存在した「火付盗賊改方」という警察みたいな部署で長官をしていた長谷川平蔵(通称:鬼の平蔵)の話。

と、これだけ書くと別に何てことは無いという話になるんでしょうが、そこはさすが池波正太郎。江戸の状景と人の情景が、粋に、色鮮やかに、艶っぽく描かれていて、読んでいて清々しく暖かな気持ちになれます。

加えてですね、今の世の中にも通ずるようなことをを鋭く分析しているようなところも要所でありましてですね。例えば八巻の「白と黒」という作品なんかを読んでいると、最近の派遣法改正にも通ずるような解説だとかが出てきてですね、色々と考えさせられたりするわけです。

いずれにしても、純粋に「豊かな小説」を読みたい方にはオススメです。



魔王(伊坂幸太郎)
自分が思っていることを人に喋らせることが出来る能力を持った人の話。で、時の首相がファシズム的な思想を持っていると気付き、それに対して主人公は・・・という話。まぁ、実際はもっと色々とあるんですが、設定としては面白いです。

で、伊坂幸太郎ってのは、毎回読んでて思うけれども、この人の作品はホントに異質。これは感覚的な話なんですが、伊坂幸太郎と映画「ピンポン」には共通している世界観があるなと。

で、これは両方に言えることなんですが、「活字」だとか「映像」だとか、そういう限られた伝達手段に甘んじないところがあるんじゃないかと。例えば、前述の池波正太郎で言えば「文学」という枠内において最高に豊かな文章が書かれているんですが、伊坂幸太郎っていうのはその枠内に留まらないというか。

例えば、本作の中で突然、シューベルトの「魔王」が表れたりするんですね。



「活字」で伝わることっていうのは当然限界があって、それをいちいち書こうとしてもドンドン陳腐になっていってしまう。だから最低限の文字数で最大限の表現をしなければならない。その点、伊坂幸太郎は、それを音楽とそれに付随するモチーフと結び付けて、読者に、より立体的な想像をさせる。

なんかこういったところに魅力があるんじゃないかなと思ったりするわけです。



球形の季節(恩田陸)
色々とアレが面倒くさくなってきたので、概要は背表紙から丸々引用します。

「四つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広がった。「地歴研」のメンバーは、その出所を追跡調査する。やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消した。町なかでは金平糖のおまじないが流行り、生徒たちは新たな噂に身を震わせていた…。何かが起きていた。退屈な日常、管理された学校、眠った町。全てを裁こうとする超越的な力が、いま最後の噂を発信した!新鋭の学園モダンホラー。 」

「モダンホラー」ではないような気もするんですが、まぁ、それはさておいて。

恩田陸ってのは、しかしこれまた特殊な作家だなぁと。

「常野物語」とかを読んでいても思うんですが、「ものすごくありふれた穏やかな世界」を軸にしながら「人智を超えたところにある何か」を描くんですよね。超能力だとか、地域伝説だとか。でも、どの作品も軸は「普通の穏やかな世界」。

で、この「普通」と「特殊」という二つの価値観を鍋に放り込んで、弱火でじっくりコトコト煮込んで、まろやかなスープが出来上がるというか。飲み終えると体も心もポカポカ的なサムシングです。



という感じです。
他にも色々と読んだのですが、まぁ、やはり個人的にはここらへんが一番面白かったなと。

ただ、フィクションも少し食傷気味になってきたので、今読んでいる司馬遼太郎の「風神の門」を読み終えたら再び小難しい系に戻ろうと思います。塩野七生の「ローマから日本が見える」とマキャヴェッリの「君主論」あたりが次に控えているので。

以上です。
オチは特にありません。

コメント (2)
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