腐ったミカンは、その後どうなるのか？

ちょいと仕事で悩んでまして。

学園もののドラマか何かで、こんな台詞が確かあった。

「お前は腐ったミカンだ！」

有名アレなので説明不要かとは思うが、一応説明しておくと、組織の中に不協和音を起こすような人がいる場合には、その人を早々に排除して、組織内のコミュニケーションをスムーズにしようというものだ。ダンボール箱の中に腐ったミカンがあると他のミカンも腐っていく事を例にとっている。

確かに、一般的な組織論においてはこれは正論であって、最終的に結果というアウトプットを出さなければならない中で、「特定の人材」が障壁となるのであれば、それをいかに排除して前に進む方法を検討する必要がある。

が、それはそれとして、腐ったミカンがその後どうなるのかという事を皆さん考えられた事はあるだろうか。

例えば、そのミカンが露骨に意図的に内部不和を起こしていたり、そういう行動に対して反省の色がなかったり、何をどう足掻いても改善させる事が出来ないという場合においては、その人を切る（というか、正確には人事異動や契約を延長しないなどの方法を取る）事により、組織全体を正常にする事が出来る。あまりよろしくない発言かもしれないが、その人がその後どうなるかなんていう事は、この状況下においてはあまり検討というか考慮されない（人として考えるべきかどうかは別として）。

さて、私は11人のメンバーの面倒を見ながら、とあるプロジェクトを回しているのだが、やはり立場上「人を雇う・人を切る」といった決断を下さなければならない場面が頻繁にある。で、やはり「人を切る」というのが一番辛くて、変な話なのだが「明らかに内部不和を引き起こしている人」はあまり躊躇なく切れるのだが、そうじゃない場合が恐ろしく辛い。

今まで長々と書いてきたが、最近そういう厄介な場面があって非常に困惑しているのだ。

その特定の人というのが、どうも自分の知識と経験に頼り過ぎていて、自分の主張を絶対に譲歩しないのだ。例えば、自分が得意な事はやるが、自分の不得意な事はグズグズで何もやらない。何をやっているか分からないから聞き出しても、やんわりと「言っても分かってもらえないと思うので」とかわされる。意見の対立が発生すると「自分はこうやった方が良いんですよね」という主張をずっと繰り返し、こっちが「じゃあ、こういう角度で見てみましょうよ」と提案をしても「でも自分はこういう見方なんで、すいません」みたいな具合で、結局、傍から見ていると「独りよがり」というか「自己満足のみ」的な印象を受けてしまうのだ。

これは、実は私だけが感じていた事ではなく、他のメンバーも同意見だったので、「そういう決断をせざるを得ない」という結論に達していたのだ。というよりも、もう、ほぼそういう方向で事が動き始めているのだ。

が、今日、その「元凶」たるべく人と話しをしていたら、その人がさり気なくなのだが、いかに真剣に真摯に他のメンバーのために今まで頑張っていたかが見える瞬間があったのだ。「こんなの本当に気付くか気付かないかぐらい分からない」レベルのさり気なさだったのだが、もしかすると、この人は独りよがりや自己満足ではなく、自分なりに精一杯メンバーやプロジェクトのために頑張っていたのではないか、と気付いたのだ。そう考えると、もしかすると「この人を切る」という判断をしてしまった自分は、とんだ間違いを犯してしまったのではないか、とんだ冤罪をかぶせてしまったのではないか、と。

さて、どうしよう。

というか、結論はもう出ている。
結論は「結論がない」なのだ。
どうしようもないのだ。

事実関係だけ並べて客観的な立場を貫けば「そのまま切る」という判断以外はない。その人が仮に頑張っていたのだとしても、それを周りと協力してやらない、アウトプットを見せない、既に人間関係が崩壊してしまっている、そういう状況下の中では、そういう判断をする外にないのだ。

が、そこに主観が入ってしまうと、もう、恐ろしいまでの自己嫌悪に陥ってしまうのだ。

腐ったミカンは、その後どうなるのか？

もしかすると自分は誰かの人生をとんでもなく狂わせてしまったのかもしれない。
さらに卑屈な言い方をすれば「自分は悪者になりたくない」というエゴがどっかにあって、そういうコインのもう一面の事実が自分をとんでもなく苦しめるのだ。

結局のところ自分は前に進まなければならない。
他の10人のメンバーのためにも、プロジェクトの成功のためにも、お金を払ってくれているお客のためにも、前にも進まなければならないのだ。だが、今回の一件は、間違いなく二重にも三重にも堅く結ばれた重石の如く、今後も自分にまとわりついてくるのだと思う。ほどこうにも間違いなく一生纏わりついてくる問題なのだと思う。



というわけで、腐ったミカン、その後どうなると思いますか？