
テレビ局内をあらためて
調べていくと、所属不明の若者が
一人いることがわかりました
… … …
その若者をみんなは
美術部、大道具係とか小道具係とか
スタジオ管理(略してスタカン)の誰かだろう…
と気にとめていませんでした。そして
その若者はスタジオで会うとニコッと笑って
挨拶します

その若者は、テレビ局と全く関係のない
ことがわかりました
ただ、テレビ局の雰囲気が好きで、フリーパスの
テレビ局に時々、潜り込んでいたのでした
… … …
音声効果係の若者チクボン(あだ名)は
なんとなく知り合いになっていたこの若者を指して
「あいつと一緒に風呂(社員風呂)に入った…」とか
仕事が遅くなったとき
「あいつも六階の宿直室に泊まった…」といわれるほど
局内はのんびりしていました。

その若者は局内で別にドロボウするわけでもなく
テレビ局の雰囲気に憧れているだけでした
… … …
テレビジョンは我が国で始まった新しい仕事です
集まった社員の年齢は極端に若く
事務系、現場(スタッフ)、全社的に
平均年令は二十歳代でした
テレビ局の上層部は将来、定年を迎えると
退職者がドッと出て、会社は退職金の支払いで
潰れると心配していました

…