映画とテレビジョンの現場

映画はワンカットずつ撮っていきます

そのぶつ切りのワンカットを

積み重ねて映画が出来上がります



テレビ生ドラマは、劇場の芝居のように

ドラマが始まると終まで連続して

います。



テレビドラマのスタッフを記しますと

まず、プロデューサー、ディレクター

複数のカメラを切り替えていくスイッチャー

そのカメラの調整をするビデオ・エンジニアー

音声を調整するオーディオ・ミキサー

音響効果とＢＧＭ(背景音楽)を担当する技術者

スタジオの照明を調整する照明技術者などが

副調整室のスタッフです



そしてテレビスタジオには芝居の時間の調整や

セットに出入りする俳優さんに芝居の切っ掛けを

渡すＡＤ(アシスタント・ディレクター)さんが数名

セットの音声をとるマイクロフォン・ブームを

操る技術者、セットの小道具を監視する小道具係

映画スタジオと同様、テレビスタジオでも

大勢のスタッフで制作されています

映画制作のスタッフ

テレビのスタッフ構成を考える前に

映画制作のスタッフを記してみます

…　…　…

まず，映画監督をはじめ、カメラマン

照明技師、録音技師、大道具デザイナー、

衣装、結髪、殺陣師などは契約者です

撮影所では脚本部、演出部、

製作部、撮影部、録音部、

照明部など、それぞれ技師をサポートする

助手が所員(社員)です

…　…　…

それぞれ、映画の助手さんは経験年数で

助手の階級が決まっています

監督には，数人の助監督が付きます

チーフ助監督、セカンド、サード(助監督)です。

…　…　…

それに、カメラマン、照明部、録音部さんにも

チーフ、ファースト、セカンド、サードと

助手がそれぞれつきます。



映画は長年の歴史で、助手さんの階級が

決まってきました。それぞれの助手さんの

経験と年数で自然に階級があったようです



映画と同じ映像(動画)を扱う新しい職業の

テレビジョンが台頭してきました

テレビ局の社員は、事務方は兎に角

スタッフにラジオ局からの出向者

劇場や演劇からの舞台経験者、

新聞社からの出向者

新しい職業に夢を抱いた

教師の卵などでした

ドラマ「私は貝になりたい」

戦後ラジオ放送はテープレコーダーの出現で

ラジオ番組が飛躍的に発展します

街の人々の意見を録音して「街頭録音」とか

公開録音番組が制作されました

…　…　…

音声信号を磁気録音する方法がテープレコーダーですから

同じ電気信号の映像信号も何らかの方法で録画できるのでは

と期待していました



アメリカから映像を録画できるアンペックスＶＴＲが

輸入されました。音声信号を録音するのに録音ヘッドを

テープが通ると音声の強弱高低に比例して磁気録音されます

映像の録画の場合は映像信号が音声信号に比べてはるかに

高いので録画ヘッドは高速回転しながら録画する方法が

とられました



芸術祭参加ドラマ「釜ヶ崎」がアンペックスＶＴＲが

使われましたが、

ラジオ東京テレビの芸術祭参加ドラマ「私は貝になりたい」も

ＶＴＲ部分と生ドラマを組み合わせて制作されました

ドラマ「私は貝になりたい」は

演出・岡本愛彦(よしひこ)で主演はフランキー堺でした



フランキー堺は、冗談音楽のシティ・スリッカーズで

ドラムを演奏していたミュージシャンです

そのフランキー堺が主演というので意外なキャスティングでした

フランキー堺は演劇が好きらしく、このドラマでは

大熱演で感激したドラマでした

テレビ生ドラマ「釜ケ崎」

テレビ初期のテレビドラマは

生放送でした

スタジオのセットで演じられる芝居（ドラマ）を

複数のカメラで切り替えながら放送される

劇場の舞台中継するようなものでした

…　…　…

芝居の時間経過で俳優さんの衣装替えが必要なときは

セットの横に畳を敷いて、男優さんも女優さんも

スタジオ内でサッと着替えていました



秋になると文部省芸術祭に

テレビ各局がドラマを情熱的に制作して参加していました

ＡＢＣが制作した「釜ケ崎」（９０分）がありました



１９６１年夏の第一次西成暴動を中心に

釜ケ崎（かまがさき）に住む人々の

人間模様を描いたドラマでした

…　…　…

出演は金田龍之介（かねだりゅうのすけ）

飯沼慧（いいぬまけい）中畑道子（なかはたみちこ）

遠山二郎、北村英三、柿木汰嘉子（かきのきたかこ）

園佳也子（そのかやこ）、遠藤辰雄（えんどうたつお）



第三スタジオ内に「釜ヶ崎周辺の町並み」、

「土手」、「居酒屋」、「デモの場所となる広場」

などが建てられて，長丁場の９０分の生ドラマが制作されました

…　…　…

同時に新しく導入されたアンペックスのＶＴＲに録画されました

スタジオの生ドラマをそのまま放送したのか

それとも，ＶＴＲに録画して放送されたのか覚えていません

どちらにしてもノンストップの生ドラマでした

「空からこんにちは」

深夜番組「ＡＢＣヤングリクエスト」は

大ヒットした番組でしたが

それに続いて昼間のヒット番組をもうひとつ

…　…　…

「空からこんにちは」です

報道局が契約しているヘリコプターと

そのパイロットが機上から道路の混雑状況を

アナウンスする内容で、阪神間の

タクシー運転手は放送時間になるとダイヤルを

ＡＢＣに合わせたそうでした



放送は月～金の午後４時１５分～４５分間

で１０年ほど続いたようです。

午前の放送もあったようです

…　…　…

地上（スタジオ）のアナウンサーが

「次は大日交差点へ向かってください…」と

問いかけると，ヘリコプターのパイロットは

「××…ラージャー（了解）」と言う交信用語が

世間で一時流行りました



大阪の交通渋滞が慢性化したのと

警察の交通センターのコンピューター化が進んで

あちこちにセンサーが設置されるようになって

番組の役割は終わりました

ＡＢＣヤングリクエスト

ラジオはテレビにすっかりリスナーを

奪われてしまいました

なんとかリスナーを取り戻す策として

受験期の学生を対象に深夜番組が

スタートしました

…　…　…

「ＡＢＣヤング・リクエスト」です

新人アナウンサーの道上洋三

因田宏紀などが起用され

「仁鶴頭のマッサージ」の歯切れのいい

早口ことばや謎かけで落語家・笑福亭仁鶴が

「ミキサー完備・スタジオ貸します」で

キダ・タローさんが人気者になりました



ラジオの新しい深夜放送は

夜、受験勉強の若者の「ながら聴取者」を

生み出しました。

…　…　…

毎日のリクエストの応募はがきは毎日七千通～八千通に

なりました。当時のリクエストはまだ、ファクスが

ありませんでした

ＡＢＣの「ヤンリク」はニュー・ラジオの

起死回生でした



受験勉強の学生を対象にした「ながら番組」は

ＡＢＣだけでなく東西ラジオ局でオン・エアーされました

ラジオ京都の糸居五郎は、その後、「オールナイト・ニッポン」で

また、亀渕昭信、土居まさる、斉藤安弘、などパーソナリティが

登場しました

ラジオからテレビへ

テレビ受像機の普及率は１９６５年(昭和４０年)に

９０％を超えて「一家に一台」の時代になります

茶の間の主役だったラジオは，

テレビに譲ることになります



ＮＨＫの「国民生活時間調査」によると

成人男子のラジオ平均聴取は

１９６０年(昭和３５年)で１時間３０分が

１９６５年(昭和４０年)では２７分に激減。

一方、テレビは１９６０年で５３分が

１９６５年では２時間４７分まで伸びています

…　…　…

ラジオの聴取者(リスナー)がラジオを離れてテレビの

視聴者に移っていくと、ラジオ番組のスポンサーも

離れていきます。ラジオの時事解説、ドキュメンタリー番組

主婦層に人気のあった帯ドラマも次々に消滅していきました



テレビの誕生で、まず映画の観客が激減して

世界的に斜陽化しましたが

映画に次いでラジオも影響を受けました

…　…　…

乗用車にラジオが搭載されるようになりました

家庭でラジオからテレビに移っていったので

ラジオはカーラジオに活路を見いだしました

ラジオ番組「ＡＢＣホームソング」

戦後、日本で始まった民間放送ラジオは

快調のスタートを切りました

ある商店街がラジオのスポット広告を流すと

買い物客が大勢押しかけたと…喜ばしい

噂が流れました



ラジオの聴取率ベストは

番組　　　　　　　　局名　　　　　聴取率

漫才教室 … ＡＢＣ… ５７、５

浪曲ごもくめし… ＮＪＢ… ４４，８

浪曲演芸会… ＮＨＫ… ４１、３

お好み演芸会… ＮＪＢ… ４０、３

明色歌謡ゲーム… ＡＢＣ… ３８、９

ラジオ浮世亭… ＡＢＣ… ３８、１



ラジオの聴取率はなんとも凄かったのでした

公開番組では、ハリス坊やというキャラクター人形を

使った、川上のぼるの腹話術で「ハリスクイズ」は

大評判になりました



また、家庭的な番組として月～土曜日の朝の１５分で

「ＡＢＣホームソング」がありました

公園の手品師、フランク永井。踊り子、三浦洸一

こいさんのラブコール、フランク永井。

川は流れる、中曽根美樹(なかそねみき)など

日本の歌謡史に残る名曲が数多く放送されました



この好調なスタートを切ったラジオ放送の世界に

テレビが産声を上げました



「朝日放送の５０年」(Ⅰ　本史)を参考にしました

人気者の声優さん

ラジオ全盛時代、「鐘の鳴る丘」「君の名は」など

ラジオドラマが盛んでした、ラジオから流れる

音楽、効果音、音だけの放送劇に聞き手は情景が

イメージできました



そのラジオドラマを演ずる俳優さんは

声だけの出演ですから,声優と呼ばれていました

ＮＨＫの東京放送劇団 からは

巌金四郎(いわおきんしろう)加藤道子

黒沢良、山内雅人、名古屋章、川久保潔

高橋和枝…

…　…　…

ラジオ東京放送劇団からは

大平透、中村正、滝口順平

田中信夫、向井真理子…



やがて、これら放送劇団出身の声優さんらは

アメリカからやってきたテレビ映画の日本語

吹き替えに大活躍されました



声優・若山弦蔵はショーン・コネリーの

吹き替えはぴったりです。また,日本の

テレビ映画「暴れん坊将軍」の

ナレーションもつとめていました

…　…　…

アラン・ドロンの吹き替えを担当した

野沢那智はすっかり人気者になりました

テレビ映画の吹き替え

洋画映画館で見るアメリカ映画の

ゲーリー・クーパーや、

フランス映画のアラン・ドロンなどは

勿論、英語やフランス語の台詞が

聞こえてきます

そして、台詞と同時に画面の下に横に

また、画面の縦に翻訳された日本語が

スーパーインポーズされます



日本語に翻訳された台詞の長さは

大体,１５字ぐらいが良いと聞いたことがあります

洋画を見るときは画面にスーパーインポーズされる

字幕を大急ぎに読んで,画面の俳優さんの演技を見る

習慣がついていました



テレビでアメリカのテレビ映画が放映されると

日本語の吹き替えの台詞が聞こえてきます

最初は、なんとなく不自然に感じていましたが

見慣れてくると,アンタッチャブルのエリオット・ネスの

吹き替えの声優さんは誰、ベン・ケーシーは誰が

吹き替えするのか,気になってきました

そして、画面の中の俳優さんと,吹き替えの

日本語の声優さん込みで

テレビ映画を見るようになっていました



映画館のスクリーンに比べて居間のテレビは

小さな１４インチテレビですから、翻訳の台詞の

スーパーインポーズは無理だったのでしょう



テレビがやがて、ステレオとか２カ国語放映の

バイリンガルになって、テレビ映画の俳優さんの

生の台詞を聞いてみたことがありましたが

日本の声優さんの吹き替えの台詞の方が

ピッタリなのに驚いたことがありました