初心者の老人です

75才になって初めてVISTAを始めました。

監督は悪い奴

2010年03月31日 21時48分35秒 | Weblog


あるキャメラマンの

「映画の中で,監督ほど,悪い奴はいない…」

というボヤキが聞こえてきました。

             … … …

クラシック演奏会のポスターの指揮者の名前を見て、

観客(ファン)は行くか行かないかを

決めるのでしょう。

同じように演劇でも,演出家の名前で,

劇場にお客が集まったり,集まらなかったり。

「お客の呼べる指揮者」
とか
「お客の呼べる演出家」

と言われています。

映画製作の中で,作品の善し悪しは,

監督の考えや演出によって決まります。

大入り映画(ヒット作)をつくる監督さんは

会社で大事にされます。




そういう監督さんは現場である程度,

思うようにスタッフ,俳優を動かせます。

ヒットを飛ばしている人気の俳優さんの

出ているスタジオの現場では,

その俳優さんが仕事の中心にいます。

              … … …

監督さんは,自分の作品の構想のイメージを

スタッフに伝えます。

スタッフの仕事ぶりを見て,

「私のイメージとちょっと違うんだなあ…」

最初はいくら監督でも,

イメージが膨らまないときが

あるのかもしれませんが。

              … … …

監督のイメージをまとめて映像にするのが

キャメラマンですから

狙いと、表現の違いから揉めることがあります。

キャメラマンの仕事は映像表現ですから,

具体的に画面で示します。

それに対して,監督さんは

「私のイメージとちょっと違うなあ…」

キャメラマンは

「ならどうすればよいのか…」

監督さんは

「私のイメージはなんと言ったらいいのか…」

と漠然と答えます。

             … … …

冒頭のあるキャメラマンのボヤキにつながります。









映画監督いろいろ

2010年03月30日 21時46分01秒 | Weblog


監督には映画監督のほかに

さまざまな監督がいます。

オーケストラの指揮者は音楽の監督でしょう。

リハーサルのときに指揮者として作品に

対する解釈を伝えて,

練習に励みます。

野球の監督は、試合運びに監督の力量を

発揮するのでしょうか,




映画監督もいろいろなスタイルがあります。

              … … …

仕事が始まって、制作の方向がこれでいいのか,

悪いのか横から見て,

ワンカット撮り終えるたびに

「OK」

といってよくわからない監督さん。

             … … …

演技のテストを見ていて,

俳優さんにダメを出している監督さん。

「違うんだなあ…もう一回テスト」

とダメ出しの理由を一言もいわなくて

「もう一回テスト」

という監督さん。

             … … …

女優さんの横に座って,

演技指導をしつこく教える監督さん。

             … … …

「テストいきます」

俳優さんの演技にウンウンと納得して

本番を撮る監督さん。




セットの小道具に凝る監督さんがいます。

セットの床の間の小道具の壺,茶道具に、

高価な一流品を好む監督さんです。

スタジオのセットは大道具の製作で、あちらこちらを外して,

撮影できように工夫されています。

デザイン,やセットの材料にいいものを使っていても,

所詮,セットは舞台です。

床の間の掛け軸や生け花の壺、違い棚の茶碗に

保険をかけるほどのものを作品で要求する

監督の真意は何なのでしょう

私の長い間の監督に対する疑問です。

監督さんは,

「私は小道具に超一流のものを用意しています。

どうぞ、出演する俳優さん方,あなたたちも、

この作品で超一流の演技をしてください」

と、私はひねくれて解釈するようになってきました。




監督の評価は,その人の作品に

どこまで観客を呼べるかです。

『明治天皇と日露大戦争』の渡辺邦男監督は

、空前の大ヒット作品でしたから

この監督さんの言うとおりに制作すれば間違いないと

スタッフ,俳優さんは思います。

また、渡辺監督も別に作品に凝って芸術派になることなく

いつものペースで制作を続けていきます。








続・シネマスコープ映画

2010年03月29日 21時37分12秒 | Weblog


『明治天皇と日露大戦争』はシネマスコープ天然色映画です。

渡辺邦男監督で新東宝で製作されました。

総天然色・シネスコ大画面に教科書や絵本での

日露戦争の大パノラマが展開されたのでしょう。



シネマスコープレンズ(アナモ(ル)フィックレンズ)は,

NCミッチェルカメラのレンズ前、

フードを取り付けるレールに取り付けられます。

アルミダイキャスト鏡胴の大きなレンズでした。

キャメラの重量バランスは前重になります。

画面の左右を2分の1に圧縮するのに無理があったのか、

ワイドスクリーンに投影された画面は少し歪みました。

『忠臣蔵』の松の廊下が、廊下の中程が左右より少しくぼんで映りました。


キャメラのルーペを覗きますと,縦長の歪んだ画面で,

キャメラマンは構図をどうやって考えたのでしょう。

キャメラの横にはファインダーが付いていますが,

撮影レンズとかなりパララックスがありますから、

撮影に苦労されたでしょう。




20世紀フォックスの「シネマスコープ・レンズ」

アナモ(ル)フィックレンズは

国産化されました。

光学メーカーのコーワ(興和)がプロミナーという名前で製品化しました。

コーワは二眼レフ「カロフレックス」や、

35㍉カメラの「コーワSW」28㍉のレンズ付きの

ユニークなカメラを作っていました。




映画館で「シネマスコープ」作品を上映するには、

映写機の前に「シネマスコープ・レンズ」アナモ(ル)フィックレンズを

取り付けないともとの広い画面になりません。

シネマスコープの設備が間に合わない劇場の為に、

撮影にはシネスコカメラと普通カメラの2台のカメラを

並べて同時撮影されたそうです。

             … … …

明治天皇に扮した嵐寛寿郎のポスターを見たとき,

イメージ的にまさに適役を思いました。

嵐寛寿郎は前代未聞の明治天皇役を

どう演じるか悩んだそうです。

             … … …

観客動員数は「日本人の5人に1人が見た」と

言われました。

この記録は、『千と千尋の神隠し』の

出現まで破れませんでした。

封切映画の入場料150円の時代の大記録だったそうです。

              … … …

私は,この『明治天皇と日露大戦争』を見逃しました。

残念です。










シネマスコープ映画

2010年03月28日 20時49分45秒 | Weblog



渡辺邦男監督は セットの模様替えに

時間がかかるとわかると

襖(ふすま)だけを入れ替えてしまいます。

そうすると、襖が変わったことによって別の部屋の

セットになってしまいました。

そういう曲芸をする監督と映画界で知れ渡っています。

撮影所が早撮り名人監督に映画製作を依頼するときから,

「中抜き」や襖の取り替えなどわかっていますから,

スタッフや俳優部などから文句は出ません。




渡辺邦男監督と仕事をしたことのない俳優さんは

「待ち時間」の計算が大変です。

ベテラン俳優さんには,セットインは○○時だが、

30分ぐらいは大丈夫だろうと,

予想します。

今までの映画の仕事を振り返って

この待ち時間を計算しているのです。




渡辺邦男監督の超スピードの仕事を知らない俳優さんは,

これで、失敗してしまいます。

              … … …

米国の映画界は,テレビジョンの台頭で、

映画館の観客動員に陰りが見え始めました。

20世紀フォックスで「シネマスコープ」というワイド画面(1対2)で、

宗教を題材にした『聖衣』が公開されました。

画面の広い天然色映画で小さな白黒画面のテレビに対抗しようとしました。

              … … …

シネマスコープは,撮影所で撮影するキャメラに

「シネマスコープ」レンズをつけます。

「シネマスコープレンズ」、別名アナモファック・レンズで

画面の横方向を2分の1に縮小して撮影します。

そして、映画館で、このアナモフィック・レンズを

映写機に取り付けて,

映画を上映すると2対1の広い画面に戻ります。





アメリカに次いで,日本でも映画館の観客動員に

陰りが見え始めました。

そこで、

日本初のシネマスコープ天然色映画として

『明治天皇と日露大戦争』(めいじてんのう と にちろだいせんそう)を、

渡辺邦男監督が新東宝で製作します。

明治天皇を嵐冠寿郎(あらし・かんじゅろう=アラカン)が演じます。

後から製作した東映の『鳳城の花嫁』が先に公開してしまいます。

従って、日本初のタイトルは東映に奪われてしまいました。







セットの「待ち時間」

2010年03月27日 20時39分41秒 | Weblog



最近,初めて映画に出演した新人タレントを

テレビの芸能ニュースが放映していました。

インタビューアーが

「映画はどうでしたか…」

「意外と待ち時間がありました…」

と言っています。

              … … …

映画は,この待ち時間も仕事のうちと言います。

セット待ち…、小道具待ち…、衣装待ち…,メイク待ち…,

役者待ち…,

スケジュール通りに,セットを組んで,小道具を飾り付けて,

照明を施してスタジオは準備しています。

なるべく待ち時間を出さないよう,

各部は段取りよく用意しています。





スタジオに入ったある監督さんの「思い付き」で

段取りが少し変わるときがあります。

手ぶらだった俳優Aさんに小道具の煙管(きせる)を

持つように変えるとしますと

小道具係は早速,煙管を準備に部屋に帰ります。

この準備のことを「小道具待ち…」と言われてしまいます。



監督さんが本番テストのあとの変更で

俳優Aさんがセットの左から入ってくるのを、

セットの右から入ってくるように変えますと、

照明のやり直しになります。

「照明待ち…」

です。

              … … …

この待ち時間の積み重ねが、

その日のスケジュールに微妙に影響します。





「早撮り名人」渡辺邦男監督の話をします。

この監督さんは、前日の打ち合わせ通りに仕事が進んでいきます。

現場の思い付きはありません。

次のシーンの俳優Bさんをセットに待機させるよう,

助監督は手配しているのですが,

何かの手違いかその俳優Bさんのスタンバイが

出来ていないときがありました。

そこで渡辺邦男監督は,セットで

準備の出来ている俳優Cさんを呼んで,

「君は俳優Bさんの代役だ…」

「兄は病で臥せっております…」

とセットで詫びるシーンを作り出しました。

そして俳優Bさんのカット(出番)は場面から

なくなってしまいました。

             … … …

遅れてきた俳優Bさんは、真っ青です。

そのうわさは撮影所中に広がりました…。









監督さんのスタイル

2010年03月26日 18時42分31秒 | Weblog



映画監督には色々なスタイルがあります。

大きな声で,

「用意…スタート…カット…OK」

叫ぶ監督さん。

反対に小さな声で静かに

「用意…スタート…カット…OK」

いう監督さん。

             … … …

俳優さんのリハーサルの演技を静かに見ている監督さん。

ある監督さんはリハーサルの俳優さんの演技に

「ウン…ウン…ウン…」

いちいち頷いて

「それでいきましょう…」

本番を迎える監督さん。





何が気に入らないのか

俳優さんにキチッとダメ出しをしないで

テストを何回もくり返す監督さん。

俳優さんは演技か、セリフの何がいけないのかわかりません。

その俳優さんはセリフの強弱を考えて演技をしても,

監督はなかなかOKを出しません。

監督は「違うんだなあ…」

とかいって,

やがて、そのカットの本番が廻らないうちに

昼食の時間にかかることがありました。

結局,そのカットは午後の1番手になりました。





喜劇専門の監督さんがいました。

その監督さんはさぞ、喜劇の演劇論を

もっていると期待して,セットを見学しました。

テストのときに,

喜劇俳優さんにいきなり

「何か面白いことやってみて…」

といいました。

その喜劇俳優さんは,ギャグを必死になって考えます。

そしてテストでそのギャグを披露します。

監督さんは,

「それでいきましょう…用意…スタート」です

私は,その監督さん独特のギャグを俳優さんに

演技指導して撮るとばかり

思っていました。

              … … …

たまにその監督になじみの喜劇俳優さんが,

その監督の仕事場のセットにやってきます。

監督はすかさず,その喜劇俳優に

「今日は予定があるの?」

「このシーンに付き合っていかない…」

「今出ているこの人の弟になって出てよ…」

そして、この俳優さんに

「何か面白いことやって…」

といいました。

この監督さんは,数々の喜劇映画を撮って

喜劇の王様と呼ばれていた人です。











映画「誰か夢なき」

2010年03月25日 17時39分29秒 | Weblog



戦後,昭和21年(1946年)中学1年の年齢で

満州から引き揚げてきました。

落ち着き先は,親戚を頼って静岡県浜松市でした。

             … … …

浜松市は見渡す限り焼け野原でした。

米軍の艦砲射撃でやられたのでした。

飛行機の爆音が聞こえて爆弾を落とすのではなく、

沖合の軍艦からの砲撃です。

いきなり「ドカン」ですから大変だったようです。

              … … …

当時,小高い丘に登ると、遠くの山並みに、

小さな白い三角形の富士山が望めました。




戦後,いち早く復活した娯楽は,

「ブロ野球」と「映画」といわれていました。

焼け跡の浜松も、映画館が7,8館、ありました。

浜松市田町の新東宝の映画館で『誰か夢なき』(1947年)を見ました。

大きな鐘が「ガラン…ガラン」と鳴る新東宝のマークで始まります。

ストーリーはすっかり忘れてしまいましたが、

藤田進(ふじた・すすむ)、黒川弥太郎(くろかわ・やたろう)、

新人,野上千鶴子(のがみ・ちづこ)、

大河内傳次郎(おおこうち・でんじろう)です。

戦時中は,

藤田進と大河内傳次郎は柔道映画『姿三四郎』と

『ハワイ・マレー沖海戦』に共演。

黒川弥太郎は『ハワイ・マレー沖海戦』で

藤田進、大河内と共演していました。

この3人の青春映画でした。

私には平和な青春ドラマは初めてでした。

この映画に『誰か夢なき』竹山逸郎(たけやま・いつろう)の

主題歌がありました。

今でもこのメロディは覚えています。




戦後の映画館での悩みに、時々,映画の途中で停電することでした。

戦後の電力事情が悪かったのでしょう。

いきなり、映画館が停電するので,アナウンスもありません。

無事に最後まで映画が見られたときは、

映画の善し悪しより先に

停電しなかったなあと思ったものでした。

              … … …

後年にわかったのですが、なんとこの映画が

「早撮り名人」渡辺邦男監督の作品でした。









ジクソーパズル

2010年03月24日 20時29分01秒 | Weblog



「中抜き」撮りは,仕事の能率は上がりますが,

2人のショットで,俳優Aさんを「中抜き」でとっていきますと,

相手役の俳優Bさんがどのような演技をするのか判りません。

熱心な俳優Bさんは,「中抜き」で撮っていく俳優Aさん演技を

セットの横で,見ています。

そして、俳優Aさんの「中抜き」カットが終了して,

相手役となる俳優Bさんは、相手の演技の内容に合わせて,

演技を組み立てていきます。

              … … …

渡辺邦男監督の仕事は前後編の映画の場合でも,

前後編の中で,俳優Aさんの「中抜き」を、

俳優Bさんの「中抜き」ですから

まるでジクソーパズルの一片を撮っているようなものです。




さすがの早撮り監督も,

このジクソーパズルの山の中で俳優Cさんを相手に

「中抜き」カットの俳優Cさんが俳優Aさん左に居るのか,

右にいるのか判断がつかないときがあるのでしょう。

その時は、俳優Aさんに「左を向いて演技してください」と

まず、左目線のカットを撮ります。

そして、俳優Aさんに「右を向いて同じ演技をしてください」と

もうひとつカットを念のために撮ります。

              … … …

俳優Aさんを「中抜き」で撮っているときに,

俳優Aさんの目線のところにチーフ助監督が

セットの中で座って(スタンド・イン),

俳優Aさんの演技を助けるときもあります。

俳優Bさんがセットで待っているとき,大事な場面では

,俳優Aさんの目線のところに座ることもあります。

              … … …

あとで、その場面を編集でつないだときに,

俳優Aさんと俳優Bさんのカットの

切り替えの中で目線が合うことになります。





ある時代劇で武士が白い塀の道を傘をさして歩いています。

そして、白い塀の角を曲がった途端、

その同じ武士は傘を持っていませんでした。

その白い塀の角のところで、「中抜き」になっていたのです。

監督の横に座っているスクリプター(女性)の責任は重要です。

俳優Aさんの小道具、扇を左手に持っているのか、右手に持っているのか,

俳優Aさんの要望でセリフを変えたときは,

どうセリフを変えたのかを記録します。

俳優Aさんは煙管(きせる)でたばこを吸っているのかとか…












早昼開始(はやびるかいし)

2010年03月23日 19時23分50秒 | Weblog


渡辺邦男監督のセットの仕事のスケジュールは,

午前8時00分~午後5時00分です。

朝,監督一行は8時にセットに入ります。

最初のカットをできるだけ早い時間に廻します。

超スピードで次々にカットを撮り終えていきます。

昼食前に予定のカットを撮り終えます。

また、予定のカットを撮り終えなくても、

きりのいいところで休憩に入ります。

              … … …

午前中の予定のカットが昼食時間に

はみ出すことはありませんでした。

きりのいいところが午前11時過ぎに終わったとしますと

ここでスタッフの昼食時間(休憩)をとります。





この終わった時間から1時間(休憩)をとります。

例えば,11時20分に午前中の予定カットか

きりのいいカットが終わったとしますと

午後の開始時間は12時20分になります。




セットで助監督は

「午後の開始時間は12時20分の…早昼(はやびる)開始です」

とスタッフに告げます。

昼食時間の12時00分から13時00分より早く終わると,

早昼開始にしてしまいます。





午後の撮影が始まります。時間は刻々と経ちます。

やがて,午後5時になると、その日の予定は終了です。

よほどのことがない限り,夕食後の残業の撮影はありません。

監督はたまに、スケジュールの関係か、夕食後の撮影で、

午後8時ぐらいのときがありました。

これをやった翌日のセットでは撮影のテンポが落ちてしまうのです。

まして、ほかの作品のように、徹夜での強行撮影もありません。





その日の予定の撮影が午後5時00分に終わると,

監督,キャメラマン,チーフ助監督、スクリプター(女性)は宿へ引き上げて

翌日以後の綿密な打ち合わせを行うのでしょう。

              … … …

予定のカットを昼食時間をはみ出して撮影したり、

午後の終了時間をはみ出したりとスケジュールの時間をルーズにすると

仕事の能率が悪くなるのを渡辺邦男監督は知っているのでしょう。

              … … …

映画が完成してスタッフの残業が少ないので

撮影所は残業代が助かります。

大喜びです。













四七人の刺客

2010年03月22日 19時14分15秒 | Weblog


渡辺邦男監督のオールスターキャスト『忠臣蔵』の

続きの話です。

『忠臣蔵』は色んな作家が物語を書いています。

『忠臣蔵』の話はわかっていますから,たまには、

口直しで違った解釈の物語もいいのです。

              … … …

池宮彰一郎の『四十七人の刺客』(しじゅうしちにんのしかく)は、

奇抜な解釈に納得しながら面白く読みました。





それを東宝で映画化しました。

監督が市川崑ですから,異色の配役です。

大石内蔵助…高倉健、おかる…宮沢りえ、

中井貴一、黒木瞳、中村敦夫

石坂浩二、森繁久彌。

              … … …

吉良邸は、要塞のように堅固な造りで、

迷路があったり、庭に水の溜まった溝があったりと、

大変なセットの凝りようでした。

松の廊下での刃傷の原因が判らないという設定でしたから

事件の発端の江戸城松の廊下がありませんでした。

映画化された『四十七人の刺客』を改めて見ると、

ちょっと首を傾げてしまいました。

             … … …

私は、『忠臣蔵』の物語は名場面が出てくるのが好きです。

昔から何度も何度も上演されて一応,

スタイルが出来上がっていますから,

それを新解釈で変えてしまうのはどうでしょう。





昔からのいつものスタイルの『忠臣蔵』を

「快いマンネリ…」として私は受け止めます。

             … … …

桜の花びらがハラハラと散る庭先の白幕の内側で,

白装束の浅野内匠頭が切腹する名場面があります。

大石内蔵助が来るまでと内匠頭は切腹を待ちます。

「内蔵助はまだか…」

「未だ参上仕りませぬ」

内匠頭が短刀を腹に突き立てたときに

内蔵助が駆けつけます。

「内蔵助か」

「ハハッ」

豪華な配役は、大石内蔵助…長谷川一夫、

浅野内匠頭…市川雷蔵です。

             … … …

早撮りの渡辺邦男監督は,涙声で,

「用意…スタート…カット、OK」

悲しい場面の俳優さんの演技にハンカチ片手の

監督は次々に「中抜き」で

カットを撮り続けていきます。

              … … …

そして、昔ながらの解釈で,オールスターキャストで

名場面をつないでいくのですから

渡辺監督の映画はヒット間違いなしです。