担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

約物 { } の呼び名。

2024-04-14 20:24:35 | Weblog
世界初の hello, world サンプルプログラムは, 1973 年の Kernighan 氏の手になる B 言語のチュートリアルに先立つこと 6 年,1967 年に Martin Richards 氏によって作成された BCPL のマニュアルにさかのぼるという話であるが,Denis M. Richie 氏が自身のコレクションを PDF 化したものを公開して下さっているものの,惜しいことにマニュアルは肝心のサンプルコードを述べようとしたところ (8.0 Example Program) で途切れている。

BCPL というプログラミング言語について調べようと日本語版 Wikipedia を見たところ,BCPL は世界初の弓カッコ { } を用いた言語とされる,とある。

この「弓カッコ」なる呼び方は初めて見た。言われてみれば { は弓の形にそっくりなので,その点については全く意義はない。

問題は,この呼び方が現在どの程度普通なのかということである。

ISO/JIS による数学記号の標準化文書などを見ていて,数式中に用いられる約物(区別したい記号列を囲う囲い,delimiter)に関する記述を目にすることがあり,また,LaTeX で文書を作成する際,集合を表すのに { } を用いるのが標準的であるため,カッコの中身に分数を入れたりしたときにカッコの大きさや,要素を表す見出しと,要素であるための条件を述べた本文との仕切りを表す縦線 | の長さを調節したいことがあり,それらの制御の仕方をちょくちょくネットで調べることがあり,また,行列を表すときの delimiter として ( ) を用いるのか [ ] にするかで常々悩んでいることもあり,最近はカッコの英語名まで含めて覚えてしまうほどの関心を寄せているところである。

( ) は丸括弧,parenthesis で,片仮名でパーレンとも書かれる。

[ ] は角括弧,日本のサイトでは square brackets と書いていることがあるが,英語圏では単に brackets といえばこれを指すらしい。私は子供の頃,数式を囲むとき一番外側に用いる大括弧と教わった。

< > は山括弧というそうで,Dirac 氏がかの有名な量子力学の教科書 "The Principles of Quantum Machanics" の第 3 版において本格的に導入して以来,量子論における状態ベクトルを表す標準的な記法となった bra ベクトル,ket ベクトルとして,<φ|,|ψ> のように左右に分離して単独で使われることもあり, 非線形偏微分方程式論のさらにとある一分野において,日本人が Japanese brackets と呼んだりしている(※)ものである。ちなみに,Dirac 氏の bra と ket では真ん中の c がどこかに消えてしまっているのだが,それがどういうことなのか,どこかでジョークだかなんだか,解説を見たことがあるような記憶がある。私見を述べれば,Dirac 氏は量子論で用いられる通常の数を c 数と呼び,おそらく演算子に相当すると思われるものを q 数と呼び表していたのだが,bra と ket でサンドイッチされるものは c 数よりも q 数の方が普通であるため,braqket になってしまうこととなって,いまいちおさまりが悪い。

この括弧は英語圏では angle brackets というようだ。

それでは真打ちの { } の登場といきたいが,これは現在あちこちで見かける日本語の名称は波括弧である。英語では braces といい,日本語による解説ではたいてい中括弧と記されている。弓括弧で検索したら,世界初の { } を使って記述するプログラミング言語は何だったのだろうか,という問題に関する考察を述べたブログ記事が見つかった。Wikipedia の記述はそのあたりに起源があるのかもしれない。

せっかくの休みなのに授業の準備をそっちのけでしようもないことばかり気にして調べたことを書き綴っているだけで一日が終わってしまった。

なんとか来週一週間も自転車操業で切り抜けることとしよう。

(;´д`)トホホのホ~


(※)たまたま私がその言い回しを講演中に用いている研究者として日本人の方しか見かけたことがないだけなのだろうとは思うのだが。
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