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透析しながら考えた事、感じた事。内部障害者として、色々な障害者,マイノリティの人とお互いに情報発信したい。

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戦争は文化を破壊する/絵本『バスラの図書館員―イラクで本当にあった話』

2009-08-23 00:51:27 | 絵本・児童文学
バスラの図書館員―イラクで本当にあった話
ジャネット・ウィンター
晶文社

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 一部には、戦争は、文明を発達させるという結果を強調する向きもあるようです。確かに、技術面では、新しい開発を促進した面もあるのは事実ですが、同時に毒ガスや武器に開発も進められてきたわけです。イラク侵攻の際に使われた劣化ウラン弾は、いまだに、イラクの子どもたちの健康を蝕み続けています。核のゴミを安価な武器にして、イラクの戦場にごみの投棄も兼ねて処理したわけです。
 イラク侵攻については、大量破壊兵器の存在はでっちあげだったわけで、今や、イギリスでもブレア氏に対する責任追及が始まっています。日本の、あの重装備で短時間のイラク滞在をして、英米のイラク侵攻を支持した政治家たちの責任問題はどうなったのでしょうか。またもや、この国のお得意の「水に流す」ということで、責任はあいまいのまま忘れ去られてしまうのでしょうか。

 さて、イラク侵攻では、多くの文化財が海外に流出しました。当然、他の文化施設の破壊も行われたわけです。

 本書は、バスラの図書館員が、図書館の本を住民の協力のもとに避難させて、大切な本を守った実話に基づいたお話です。2003年4月6日に、イラク侵攻はイラク最大の港町バスラに達します。バスラの中央図書館の女性司書の責任者アリア・ムハンマド・バクトルさんは、図書館の本を友人と隣人の助けを借りて、自分の家やレストランなどに避難させました。全部の図書は無理でしたが、70%の図書を救い出すことには成功しました。その9日後に図書館は消失しています。彼女はその後重い病気をしましたが、今でも、図書館の再開の日を待ちながら図書を守っています。

 戦争は、文化を破壊します。先人の知的遺産である書物に対しても甚大な被害を与えます。イラクに本当の平和が訪れ、図書館が再建されることを祈りつつ、アリアさんのような書物に対する行動を通して、今回の戦争の無意味さを実感する次第であります。

戦争の傷あとを取り除くために/『地雷のない世界へ はたらく地雷探知犬』

2009-08-23 00:17:37 | 絵本・児童文学
地雷のない世界へ はたらく地雷探知犬
大塚 敦子
講談社

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 戦争時に安価な武器として世界中で使用されてきた地雷は、戦争が終わってからも人に対する被害を与え続けています。1997年に、対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)ができました。日本は、この条約の批准に当初はためらいも見られました(自衛隊の戦略上の理由からでしょう)。やっと批准にこぎつけ、2003年までに自衛隊の所持していた地雷を廃棄しました。しかし、世界には、まだ、地雷を製造し、使用する国が存在しているのが現実です。

 本書の解説によれば、現在、世界全体では8000万から1億個の地雷が埋められているそうです。アジアでは、カンボジアでは、住民の生活圏の近くにも地雷が埋められたままで、今も、400万から600万個の地雷が残されたままだそうです。
 ポル・ポト派の支配が続いてた後の後遺症です。今でも、この政権を支持していた当時の中国政府や、日本の政治家は責任を感じているのか疑問に思っています。

 この地雷を探知・除去する方法には、人間の手で金属探知機を使って探し出してからて除去する「マニュアル除去」と、ブルドーザーのような地雷除去機を使って、除去の障害となる灌木を伐採しながら、埋まっている地雷も同時に爆発させる「機械式除去」の方法が取られています。後者に関しては、テレビなどで、日本の会社が地雷撤去用の重機を開発して現地で活躍する姿の放送を見られた方もおられるかと思います。山梨日立建機、コマツなどの企業が活躍しているということです。

 機械式除去の方法は優れた方法ですが、狭い土地や山岳地帯には不向きで、傾斜地では人の手による除去が行われています。

 本書で、初めて、人間を助ける地雷探知犬の存在を知りました。その鋭いきゅう覚で、人に、地雷の埋まっている場所を教えてくれるわけです。犬種は、マノリア(ベルジアン・シェパード)が中心です。

 本書では、2007年にボスニアで生まれた子犬たちが地雷探知犬としての訓練を受けて、その後にカンボジアに送られて活躍するようになるまでを追った写真集です。子犬の時は、盲導犬同様に、人間の愛情に触れて育ちます。訓練の仕方も細かく描かれています。

 なお、地雷探知犬が活躍してきたボスニア・ヘルツェゴビナやカンボジアで、探知犬の事故が一件もなかったというのは、素晴らしいことだと思いますし、命を落とすことがないというのを聴いて、ホッとしたものです。

 本当は、彼らの力を借りなくてもいい世界がやってくる、人間自らの力で実現できるのが一番いいことなのです。そうすれば、彼等は、麻薬探知犬や警察犬として活躍できることでしょう。それまでは、彼らの頑張りが続くようですね。

 人と犬との歴史は、大昔にさかのぼります。しかし、こうしたパートナーの力を借りるというのは、人類というのが歴史的に本当に進化したのか疑問が生じる所ですね。