わが家の母はビョーキです中村 ユキサンマーク出版このアイテムの詳細を見る |
今日の福祉ネットワークは、漫画家の中村ユキさん(36)の話が聞けた。著者が4歳の時に、統合失調症を発症した母親との生活を描いた漫画エッセーの作者である。幻聴と妄想の中を生きる母親のそばで、子どもの時は病気のことも理解できず、母親の自殺衝動と自分への殺意に苦しんだ。暴力的な扱いを受けても、誰にも相談できずに、母親の気持ちが鎮まるまで隠れて様子を探っていた。
統合失調症は、日本人の場合、100人に1人がかかる身近な病気である。しかし、幻覚・幻聴・妄想などの症状から、周囲の理解を得ることが難しく、むしろ偏見を持たれることが多い。今では、適切な治療を早めに浮ければ、回復可能な病気とされる。
中村さんは、子どものときには、生きているのがつらくて、消えちゃえば楽になれるなどの気持ちを持ったりした。母親は、一応、精神病院に通っていたが、薬をちゃんと飲まずに、症状も正直には医師に伝えていなかったようだ。この病気は、服薬を正しく続けることが大切である。
母親は、50歳くらいから、今までの症状に加えて、無気力になった。表情もなくなり、調子の悪い時には、一日寝ていた。しかし、中村さんは、母親にグータラ病だと言ってしまい、そんなのは気力で治るなどと発言していた。
回復の兆しがみられるようになってのは、5年ほど前、地元の地域支援センターのデイサービスに通うようになってからだった。そこでの人間関係を通して、母親は笑顔を取り戻していった。また、そこの保健師さんから、この病気は良くなりますよ、何か困ったことがあったら相談してください、そんな言葉を初めてかけてもらった。今までなかったことで、感激した。
中村さんの夫も、優しい人で、母親への対応が適切であった。調子の悪い時は、無理をして散歩をしないで寝てればいい、無理をしないで様子を見ようよなどの言葉をかけてくれた。
中村さんは、今まで、母親に敵意をもって相手もしたことがあった。そんなときは、母親も敵意をもって返してきた。だから、中村さんは気がついた。敵意には敵意でかえってくる。必要なのは、思いやりと共感ではないかと。それに、服薬が加われば最高の回復法につながるのではないかと。
中村さんは、もっと早く、病気に知識や情報を得ることができたらよかったのにと思っている。地域生活支援センターのような社会資源も活用できたのにと。
中村さんが番組の最後で書いてくれた言葉は、「早期治療で、早期回復!!」
一番苦しんでいたのは、母親かもしれない。この病気に対する社会の理解が深まることも期待される。
中村さんの失敗や反省も描いた「わが家の母はビョーキです」。こうした本が病気の理解を深めるのに貢献できる。
※障害者自立支援法の成立により、地域生活支援センターは、地域活動支援センターと名前が変わったところもある。問い合わせは、保健所、精神保健センター、市区町村の障害者福祉の窓口。
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