1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「夏時間の庭」

2010-01-31 18:48:05 | 映画
 「夏時間の庭」をみました。うーん、どう感想を書けばいいのだろう。オルセー美術館所蔵の、コローやルドンの絵、ブラックモンの花瓶、ドガの彫刻、マジョレルの机、ホフマンの戸棚などなどが、亡くなった母親から三人の子供たちが相続する家の装飾につかわれているのが、この映画の一番の見せ場だろうか。パリの郊外の緑にあふれる家と庭もとても美しかったです。

 母が、有名な画家であった叔父の思い出として、大切に管理していた家と美術品を、母の死後に、手放さざるを得なくなった子どもたちの物語です。手放した美術品がオルセー美術館で展示されているのを見る長男夫婦の寂しそう表情や、「おばあちゃんにお前の子供をこの庭につれておいでと言われたの」とボーイフレンドに語るときの孫娘の涙などなど。思い出は「もの」によって運ばれるということが、しんみりと伝わってくる映画ではありました。



 

「ホワイト・ティース(上)」(ゼイディー・スミス)

2010-01-30 14:46:56 | 
 「ホワイト・ティース(上)」(ゼイディー・スミス)を読みました。作者のゼイディー・スミスは、1975年、ロンドン北西部のウィルスデンで、イギリス人の父とジャマイカ人の母との間に生まれました。この小説は、彼女の処女作で、ケンブリッジ大学在学中に書かれました。

 小説の舞台は、彼女が生まれた移民の町、ウィルズデン。ロンドン下町育ちの優柔不断男アーチーと、バングラデシュ出身の誇り高きイスラム教徒サマード。二人の中年男の交流を中心に、ロンドンに生きる移民の姿がリアルに描かれていきます。アーチーの妻クララは、ジャマイカ出身。クララの母は、同じくジャマイカ出身の「エホバの証人」の信者。作者ゼイディー・スミスの家庭が投影されているのでしょうね。

 上巻では、バングラデシュ出身のサマードと妻のアルサナ、ロンドンで生まれた彼らの子供たちの姿がとても印象的でした。バングラデシュの文化とイスラムの宗教を守ろうとする父も、モスクにも行かず、お祈りもせず、どこの誰ともわからない相手とセックスし、マリファナを吸引する息子も。アイデンティティーの分裂に悩み、寄る辺ない思いを抱えています。

父の言葉
「おれにはいま、なにもぴったりくるものがない、慈悲深き全能のアッラーでさえもだめなんだ。おれはどうしたらいい、ベンガルへもどるか?それともデリーへ?でも誰がいったいこんなイギリス人を雇うだろう?イギリスへ行くか?誰がこんなインド人を雇う?彼らはおれたちのアイデンティティーと引き換えに独立を約束する。」

息子の言葉
「自分、ミラトは、実際はどこの出身であろうとパキであるということ。自分はカレーのにおいがするのだということ。自分の国に帰るべきなのだということ。帰れないならこの国でなんとか稼いで食べていくのだということ。自分はこの国では顔をもっていない、声をもっていないということを知っていた。」

そして、混血(分裂するアイデンティティー)こそが普遍的なのだと語る妻の言葉
「どこまでさかのぼってみたって、この地上で混じりっけなしの人間を一人見つけるよりはね、混じりっけなしの信仰をみつけるよりはね、ちゃんとあう掃除機の袋を見つける方が簡単よ。誰かイギリス人だって言える人がいる?本物のイギリス人だって?そんなのおとぎ話よ。」

たしかに、その通りだと思う。

 ウィルスデンの学校では、クリスマス、ラマダーン、中国の正月、ディワーリー(ヒンドゥー教の祭り)、ヨーム・キップール(ユダヤ教の贖罪の日)、ハイレ。セラシェの誕生日など、さまざまな宗教的、非宗教的行事が行われているのですね。

 さて、引き続き下巻を読みます。




09年失業率は5.1% 過去最大1.1ポイント悪化

2010-01-29 22:39:18 | 経済指標メモ
 総務省が29日発表した2009年平均の完全失業率は前年を1.1ポイント上回る5.1%で、雇用情勢の急激な落ち込みを反映し、悪化幅は過去最大となりました。厚生労働省が同日発表した有効求人倍率の09年平均は0.47倍で、1999年の0.48倍を下回り過去最低を記録しました。


    グラフは朝日新聞より

 同時に発表された昨年12月の完全失業率(季節調整値)は前月より0.1ポイント低い5.1%で、2カ月ぶりに改善しました。一方、昨年12月の有効求人倍率(同)は前月より0.01ポイント高い0.46倍でした。


     グラフは日経新聞より

 12月の完全失業者数は317万人で、前年同月より47万人増加。理由別では企業の倒産やリストラなどが同27万人増の104万人、自己都合は1万人減の97万人でした。有効求人倍率では、正社員の有効求人倍率は0.28倍。倒産やリストラで職を奪われた人たちにとって、安定した仕事探しが難しい状況が続いています。

 また、同日発表された09年の消費者物価は、前年比1.3%低下し、過去最大の下落率を記録しました。深刻なデフレに日本経済は直面しています。

 これらの経済指標をみると、09年は、働く者にとってほんとうに厳しい年であったことを実感します。
 

ウィリアムモリスのデザインを使った陶磁器

2010-01-28 19:22:26 | 日記
 2001年からニッコー株式会社の代理店として、小型風車を販売してきました。ニッコー株式会社は、100年の歴史を持つ陶磁器のメーカーです。ちなみにわが社は、50年の歴史を持つ消波ブロックのメーカーです。
 昨日、韓国からのお客さんと一緒にニッコー株式会社を訪問したのですが、ちょうど新作陶磁器の展示会が開かれていました。



これは、ウィリアムモリスのデザインを使った陶磁器です。とても美しかったです。今年のお正月にヴィクトリア&アルバート博物館で、モリスのデザインしたカフェ「緑の部屋」を見たばかりだったので、すぐに目にとまりました。僕には何の関係もないのだけれど、なんかちょっぴりうれしい気持ちになりました。

世界失業率 最悪の水準 09年6.6%

2010-01-27 21:35:41 | 経済指標メモ
 今日の日経夕刊。国際労働機関(ILO)が27日に発表した雇用情勢の年次報告によると、2009年の世界の平均失業率は前年を0.8ポイント上回る6.6%となり、調査を始めた1991年以降で最高水準に達したとのこと。失業者数は初めて2億人を突破し、前年比14%増の2億1200万人に達しました。年齢別にみると、18歳~24歳の平均失業率は13.4%に急上昇しています。2億人の失業者・・・すごい数字です。
 ILOは、「10年の失業率も高水準で推移する」と予測しています。失業率の指標を毎月追いかけているけれど、ほんとうに厳しい雇用情勢が続きます。

韓国の造船重工 風力発電事業を急拡大

2010-01-26 00:18:17 | 自然エネルギーと省エネ
 今日の日経夕刊。韓国の造船重機工業大手が昨年相次いで参入した風力発電機事業を急速に拡大させているという記事が載っています。
 現代重工業は、米ウィスコン州に1650kwの発電機6機を納入する契約を結んだのに続き、パキスタンに同規模の発電機を30機納入する契約を結んだとのこと。STK重工業は2000kwの発電機25基をオランダとトルコ、イラクに供給。サムソン重工業はテキサス州に2500kwの発電機の輸出を開始するそうです。記事は、風力発電の生産で、米欧中韓が上位を占める可能性があり、日本の出遅れが鮮明になっていると結んでいます。日本やデンマークなどから技術移転を行いながら、急速にビジネスを立ち上げていく姿は、ほんとうに韓国の企業らしいと思いました。
 明日(厳密には今日)、韓国から、僕たちの小型風力発電機を韓国で販売したいという企業がやってきます。去年から数えて、4社目。どの企業からも、風力発電機をビジネスにしたいという強い熱意が伝わってきます。

「パークアンドラブホテル」

2010-01-25 23:43:13 | 映画
「パークアンドラブホテル」を見ました。主演は、70年代に一世を風靡したシンガーソングライターのりりィです。りりィも、今年58歳。顔も丸くなって、すっかり歳をとったなぁって思いました。もちろん僕も、同じだけ歳をとりました。先日は、一世代上の浅川マキもなくなったし。映画を見ながら、あの頃のことを思いだしていました。

りりィ演じる中年女性が女手ひとつで経営するラブホテル。その屋上に地域の人たちが訪れる公園があるという、ユニークな舞台設定の物語です。地域の人たちは、そこを「アジール(解放区、避難所)」と呼んでいます。そこを訪れた、離婚した父親との関係に悩む13歳の少女や、夫との関係に悩んでいる女性などが、主人公とのかかわりを通して、新しい一歩を踏み出していくというお話し。彼女たちとの出会いを通して、主人公もまた、長い間ひきずってきた宙ぶらりんの思いに折り合いをつけていきます。こうして書くと、なんかさわやかそうな映画なのだけれど、結構退屈で、どんよりとした映画でした。自分自身の老いに向き合ったからかなぁ・・・。

関係ないけれど、明日は、金沢出張。ブログはお休みです。


「イタリア広場」(アントニオ・タブッキ)

2010-01-24 21:21:58 | 
 「イタリア広場」(アントニオ・タブッキ)を読みました。アントニオ・タブッキは、1943年、イタリアのトスカーナ州ピザに生まれました。この本の舞台は、タブッキの故郷トスカーナのある「村」です。この村に生きた三世代にわたるある一家の物語。ガリバルディによるイタリアの統一からファシズムを経て、戦後の共和国に至る、1世紀近い近代イタリアの歴史が、「村」に生きる人々の目を通して描かれていきます。

 この小説はエピローグから始まります。主人公の名前はガリバルドで、その父の名もガリバルド。巻頭のエピローグで軍隊によって殺されてしまうガリバルドは、父のガリバルドであるのか息子のガリバルドであるのか。それは、小説の最後で明らかになります。この他にも双子の兄弟が二組。アフリカ戦線で戦死するのは兄なのか弟なのか?錯綜する人間関係の中で、家系図を何度も見ながら小説を読み進んでいくのが楽しかったです。

 主人公のガリバルドは、生活のために若き日にアメリカにわたり、帰国後は北イタリアを支配したナチスドイツと闘うためにパルチザンに参加し、戦後は工場労働者の闘いの先頭に立ちます。彼の父ガリバルドも、飢饉のときに、国王の食糧倉庫を襲撃し、隠匿されていた小麦を村の人たちに平等に分配しようとし、憲兵によって殺されてしまいます。このあたりの主人公の設定、権力者の言葉ではなく、日常生活を生きる民衆の立場からイタリア近代の歴史を描こうとするタブッキの思いがつたわってきました。

 ガリバルディのイタリア統一に従軍した祖父。統一後のアフリカ侵略で命を落とす叔父、不幸な愛に傷つき修道院にはいってしまう叔母。大地主の家の養子になり、ファシストとして村人に敵対するいとこ。背中にこぶを持つ共産主義者の友人、キリスト教社会主義者の牧師、村の占い師のおばあさんなどなど、急速に進む近代化の中で、苦闘しながら生きている村人の姿が簡潔な文体で描かれていきます。国王から、ムッソリーニのファシズムを経て、民主主義へ。権力者が交代しようとも、したたかに生きていこうとする民衆の姿がとても印象的な一作でした。

 題名の「イタリア広場」。村の人々が集まり、語りあう広場でこの物語は始まり、終わります。この本を読みながら、一昨年に行ったトスカーナ地方の町、シエナの広場を思い出していました。シエナの広場も、町の中心にあったけれど、イタリアの町って、こいうつくりがそういえば多いのですよね。








「海」(小川洋子)

2010-01-23 12:47:13 | 
 「海」(小川洋子)を読みました。表題作「海」他、7編の短編集です。この本には、とても味わいのある脇役たちがたくさん登場します。40年間バスを運転してきた運転手、同じく40年間ホテルのドアマンとして生きてきた人、タイプの活字管理人、公認観光ガイドなど、自分に与えられた場所を守り、決してそこからはみだすことなく生きてきた人たちがその一つです。次に、見も知らぬ二人の日本人に老人ホームで看取られるドイツの老人。それからもう一つは、「不完全なシャツをつくるシャツ屋のおばさん」、「お客さんたちが持ち込んでくる記憶に題名をつける『題名屋』」、「魚の鱗と胸鰭で作った鳴鱗琴(メイリンキン)という楽器を演奏する青年。」といった、小川洋子の想像力が生みだしたユニークな個性を持つ人々です。

 僕は、この本を読みながら、決して商売には向いていなかったけれど、50年以上果物の仲買人を続け、88歳で死んで行った父親のことを思い出していました。

鳴鱗琴を演奏する青年(表題作「海」)は、次のように語ります。

「彼らもまた僕と同じように食べたり、家族を作ったり、眠ったり、しんだりするのかと思うと、それだけで安心なんです。」

 そう僕も、自分たちのささやかな世界を守りながら生きているたくさんの人たちの存在を思うと、とても安心した気持ちになりました。

 「ガイド」の主人公の少年は、題名屋さんに「今日の僕の一日に題名をつけてほしいんです」と頼みます。「思い出を持たない人間はいない」というのが、題名屋さんが少年の一日に付けた題名です。題名屋さんは、競市でうまく買い物ができなくて、いつも苦虫をつぶしていた僕の父親の思い出にどんな題名をつけるのだろう・・・僕なら「不完全な果物屋」ってつけるかな。




ベルギー工場を独オペルが年内閉鎖 労働組合が工場封鎖

2010-01-22 20:15:29 | 経済指標メモ
 昨日に続いて今日もベルギーの話題です。今朝の日経新聞。米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の独オペルが、21日、ベルギー北部のアントワープ工場(従業員数約2600人)を年内に閉鎖すると発表したという記事が載っています。同社は約5万人の従業員のうち約8300人の削減を表明しており、近く再建計画の全体を公表する。今回の工場閉鎖もその一環とのこと。
 オペルの新車販売は落ち込んでおり、今後生産能力を約20%削減する予定で、ドイツや英国など他の工場でも合理化が計画されています。去年の11月には、雇用削減と工場閉鎖への反対して、ドイツのオペル労組がドイツ国内でストライキを行い、本社工場では、従業員約1万人がデモに参加しました。
 アントワープ工場の閉鎖の発表を受け同工場では21日、労働組合が工場を封鎖するなどの行動に立ち上がっているとのこと。今後の動きに注目です。

ビール世界首位アンハイザー・ブッシュ・インベブでストライキ

2010-01-21 19:23:38 | 経済指標メモ
 今日の神戸新聞。ベルギーのビール世界首位アンハイザー・ブッシュ・インベブは20日、人員削減をめぐりストが2週間以上も続くルーバンなど同国内の3工場を一時閉鎖、生産や出荷を阻止していた労働者を排除したという記事が載っています。
 アンハイザーはベルギーで消費されるビールの約6割を生産しており、同国のレストランやバー、スーパーなどでは、同社ブランドのステラ・アルトワ、レフ、ベックなどのビールが入荷せず、在庫も底をつきかけており、品不足は隣接するフランス、オランダにも広がっているとのこと。
 アンハイザー社は今月7日、業績不振を理由に、欧州の従業員の10%削減を発表。ベルギーでは約260人が解雇されるため、労働者らが工場の入り口にビールケースを積み上げるなどしてリストラ撤回を要求してストライキ中とのこと。労働組合には、解雇に負けないで、がんばってもらいたいと思いました。



写真は共同通信より。リエージュ郊外でビール会社アンハイザー・ブッシュ・インベブの工場の入り口をふさぐ労働者。

「倒壊する巨塔」(ライト・ローレンス)

2010-01-20 21:40:12 | 
著者ライト・ローレンスは、作家兼映画脚本家とのこと。この本は、2001年9月11日の「米同時多発テロ」に至るまでの経緯を、イスラム過激派のメンバーや、CIA、FBI関係者などへの膨大なインタビューデーターを中心に追いかけたノンフィクションです。

 図書館の予約の関係で、下巻から読み始めました。下巻は、1996年、スーダンを国外追放となったビンラディンが、アフガニスタンでタリバンのムハンマド・オマルと巡り合うところから始まります。ザワヒリのジハード団とビンラディンのアルカイダの組織統合もアフガニスタンで行われます。

 この本を読んで、まずは、イスラム過激派の国境を越えるうごきにあらためて驚かされました。エジプト、イエメン、サウジアラビアなどの中近東だけでなく、アフガニスタン、パキスタン、チェチェン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マレーシアなどなど、イスラム宗教圏全土に活動のネットワークが広がっています。
 二点目に驚いたのは、同時多発テロの1年半前から、実行犯の二人がアメリカに入国し、テロ活動の準備を行っていたことを、CIAが把握していたということです。CIAは、その情報を組織内で覆い隠し、国内捜査を担当するFBIに知らせませんでした。筆者は、CIAとFBIの情報共有が行われていれば、同時テロは防ぐことができであろうと述べています。
 三点目は新たにアルカイダに合流した若者たちの階層です。筆者は、新しくアルカイダの交流した若者たちが、貧困に苦しむ、社会の底辺に生きるものではなく、中・上流階級の出身で、都会育ち、高い教育と言語能力、コンピューター操作のスキルを持つと述べています。そして、彼らがアルカイダに参加する理由として次のように書いています。

「(彼らの共通点をあげるとすると)それは、”寄る辺なき思い”だったろう。ジハードに参加した大半のものは、自分たちが育ったのとは違う国に定住しており、茫漠たる気分をかかえていた。彼らはフランスの外国人居住区に暮らすアルジェリア人であり、スペインのモロッコ人であり、サウジアラビアのイエメン人だった。いま住んでいる土地でどれほど実績をあげようと、彼らはそのホスト社会に本当の足場を築けなかった。ロンドン在住のパキスタン人は、自分が本物のイギリス人でもなければ、本物のパキスタン人でもないことを知っていた。そしてこの境界線上で生きているという感覚はクウェートのレバノン人にとっても、ブルックリンのエジプト人にとっても、同じくらい切実だったのだ。」

 この文章を読みながら、アイデンティティーの喪失に苦しむモロッコ人青年の姿を描いた「出ていく」(タハール・ベン・ジェルーン)を思い出していました。

「移住はもはや(モロッコの抱える)問題の解決にはならない。敗北です。わたしが望むのは、モロッコが雇用を創出し、人びとが出ていかなくてもよくなることです」

「出てゆく」の作者タハール・ベン・ジェルーンの言葉が、あらためて心に響いた一冊でした。


「カティンの森」(アンジェイ・ワイダ)

2010-01-19 12:46:23 | 映画
 アンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」を見ました。1939年独ソ不可侵条約の締結とともに、ポーランドは東半分はソビエト・ロシアに、西半分はドイツに分割統治されます。このとき、ポーランド人の将校ら15,000名が捕虜としてロシアに連行されます。この映画の主人公であるアンナの夫、アンジェイ大尉も連行されていきます。1943年ポーランドの東側に侵攻したドイツ軍は、5,000人をこえるポーランド人が頭を後ろからうちぬかれて殺されているのを発見します。
 だれが、将校たちを殺害したのか? 連行された夫アンディーは生きているのか?映画は、アンナの目を通してカティンの森の真実を明らかにしていきます。

 現在では、「カティンの森」で5,000人をこえるポーランド人を殺害したのは、ソビエトの秘密警察であったことが明らかになっています。しかし、第2次大戦後、社会主義国としてソビエト・ロシアの支配下におかれたポーランドにおいては、「カティンの森」の真実を明らかにすること自体が、タブーとされてきました。アンジェイ・ワイダ監督の父親も「カティンの森」で殺害されたそうです。そのような中で、ワイダ監督は、「地下水道」や「灰とダイヤモンド」を製作し、国を奪われたポーランド民衆の哀しみと、ナティズムドイツからの独立を求め立ち上がったポーランド民衆の「ワルシャワ蜂起」を見殺しにしたソビエト・ロシアの姿を描いてきました。
 この映画に、戦後、「父はカティンの森でソビエト軍に殺害された。」と履歴書に記載し、就職を拒否された上に権力によって殺されてしまう青年が登場します。これは、若き日のアンジェイ・ワイダの姿なのでしょうね。

 映画は、戦後のソビエト・ロシアの支配と抑圧の中で、真実を直視し権力と闘おうとする者、平穏に生きていくために真実に目をつぶろうとする者、ソビエトロシアの殺害を隠ぺいするために虚偽の証言を行い、良心と心の弱さに引き裂かれ自殺に追い込まれていく者など、ポーランド民衆の戦後の苦悩を追いかけていきます。

 映画のラスト。アンディー大佐の日記から「カティンの森」の真実が明らかになっていきます。真実が、圧倒的な迫力で見る者の心に迫ってきます。84歳ワイダ監督の生きているうちに「カティンの森」を映画化したいという執念と、未来に向けて一歩を踏み出すためにはまずは真実を直視しなければならないという鬼気迫る思いがひしひしと伝わってきました。

 映画を観終わってしばらくの間、僕は、語るべき言葉がなかった・・・。



 

「大英博物館」

2010-01-18 22:09:13 | 美術館
ロンドンの話題もこれで最後。「大英博物館」です。今回は、大英博物館に歩いて行けるRussell Square で宿泊。このあたりはロンドン大学もすぐそばにあって、アカデミックな雰囲気ただよっていました。





大英博物館



博物館の中にあるグレート・コートとリーディングルーム。前回来た時は、これはなかった・・・新しく建てられたのでしょうね。



古代エジプトの遺品と



パルテノン・ギャラリー。アクロポリスにある大神殿を装飾していた大理石彫刻だそうです。

収蔵品700万点、常設展示は15万点。建物の中に入っただけで、おなかいっぱいになるのです。大英帝国時代の植民地支配を象徴するような美術品の数々。返還要求がでてくるのも当然なのだと思いました。



博物館のカフェでたべたフィッシュアンドチップス。これぞイギリスです。

オイスターカード

2010-01-17 22:03:54 | 旅行
 今回のロンドン旅行でとても便利だと思ったオイスターカード。前回に来たときはこのようなカードがなかったので、購入の仕方や使い方、チャージの仕方などに少し不安がありました。



 オイスターカードというのは、R東日本の「SUICA(スイカ)」、JR西日本の「Icoca(イコカ)」のようなカード型乗車券です。オイスターカードを購入し、金額をチャージするだけで、地下鉄・バス、Tate to Tateの船がワンタッチで簡単に利用できます。料金的にもとってもお得でした。



 まずは、ヒースロー空港から市内に向かう地下鉄の改札口の向かいにあるTravel Informationでカードを購入。地下鉄の窓口でも買えるけれど、こちらのほうがすいていてスムーズです。4人分を買って、15ポンドチャージしてもらったのですが、4 oystercars for 15pounds each,please? といってクレジットカードを出したら、購入することができました。その時に、カード一枚について3ポンドのデポジットをとられます。
 デポジットの3ポンドとあまったチャージ分は、帰国の時に地下鉄の窓口で、accounts,please? といえば清算してもらえます。旅行中に5ポンドを2度チャージしたのですが、地下鉄の窓口に行って Top up,please? 5pounds each といってクレジットカードをだせばチャージしてもらえました。ただし、4枚オイスターカードを出したら、4回サインさせられたけれど。

 韓国でも地下鉄やバスは「T-money」というカードで乗ったけれど、もうこうれが世界標準なのですね。



チューブも



二階建てバスもオイスターカードで。



ブラックキャブといわれているタクシー。この形、イギリス人のこだわりなのでしょうね。



これはなんて呼ぶのだろう?リンタクっていうのかな。ロンドン市内、とてもたくさんリンタク(?)が走っていました。