1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「カティンの森」(アンジェイ・ワイダ)

2010-01-19 12:46:23 | 映画
 アンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」を見ました。1939年独ソ不可侵条約の締結とともに、ポーランドは東半分はソビエト・ロシアに、西半分はドイツに分割統治されます。このとき、ポーランド人の将校ら15,000名が捕虜としてロシアに連行されます。この映画の主人公であるアンナの夫、アンジェイ大尉も連行されていきます。1943年ポーランドの東側に侵攻したドイツ軍は、5,000人をこえるポーランド人が頭を後ろからうちぬかれて殺されているのを発見します。
 だれが、将校たちを殺害したのか? 連行された夫アンディーは生きているのか?映画は、アンナの目を通してカティンの森の真実を明らかにしていきます。

 現在では、「カティンの森」で5,000人をこえるポーランド人を殺害したのは、ソビエトの秘密警察であったことが明らかになっています。しかし、第2次大戦後、社会主義国としてソビエト・ロシアの支配下におかれたポーランドにおいては、「カティンの森」の真実を明らかにすること自体が、タブーとされてきました。アンジェイ・ワイダ監督の父親も「カティンの森」で殺害されたそうです。そのような中で、ワイダ監督は、「地下水道」や「灰とダイヤモンド」を製作し、国を奪われたポーランド民衆の哀しみと、ナティズムドイツからの独立を求め立ち上がったポーランド民衆の「ワルシャワ蜂起」を見殺しにしたソビエト・ロシアの姿を描いてきました。
 この映画に、戦後、「父はカティンの森でソビエト軍に殺害された。」と履歴書に記載し、就職を拒否された上に権力によって殺されてしまう青年が登場します。これは、若き日のアンジェイ・ワイダの姿なのでしょうね。

 映画は、戦後のソビエト・ロシアの支配と抑圧の中で、真実を直視し権力と闘おうとする者、平穏に生きていくために真実に目をつぶろうとする者、ソビエトロシアの殺害を隠ぺいするために虚偽の証言を行い、良心と心の弱さに引き裂かれ自殺に追い込まれていく者など、ポーランド民衆の戦後の苦悩を追いかけていきます。

 映画のラスト。アンディー大佐の日記から「カティンの森」の真実が明らかになっていきます。真実が、圧倒的な迫力で見る者の心に迫ってきます。84歳ワイダ監督の生きているうちに「カティンの森」を映画化したいという執念と、未来に向けて一歩を踏み出すためにはまずは真実を直視しなければならないという鬼気迫る思いがひしひしと伝わってきました。

 映画を観終わってしばらくの間、僕は、語るべき言葉がなかった・・・。



 


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