2021年の1月、結構冷たい日々が続いているが、梅の開花は早いのだという。
四国の高松や松山では昨年末に、東京ではこの18日に開花している。昨年12月が暖かかったせいなのだろうか。
仙台では、昨年3月1日に開花しているとのことだが、昨年は、緊急事態宣言前の2月末にみゆきさんのコンサートのため大阪に出かけ、コンサートの前日、満開の大阪城公園で梅の香りをいただいた。
桜は散るを、梅は香りを、古代から日本人は愛でてきた。
桜はいく春の惜しみ、梅の香は早春のあやしいときめき。
芭蕉には、意外と少ないが、蕪村には梅の句がいっぱいある。万葉の時代は、梅といえば白梅だが、蕪村の
時代は、紅梅など色彩に飛んだ梅の花が咲き誇っていたのか、彼のイマジネーションを梅の香が媚薬のように湧き立たせたのだろう。
2021年、大阪城公園はあまりにも遠い時空に位置しているが、今年の梅の香は3月の仙台まで待てという、この憂き世はつらいものがある。
【蕪村の梅を読んだ句から十選】(かぜねこ訳)
〇 二もとの 梅の遅速を 愛す哉
(散っていく我が家の梅も、咲きだした隣の梅も、ことしも心和ましてくれるよな)
〇 梅折て 皺手にかこつ 薫りかな
(家に飾ろうとして折った梅の香りが こんな年寄りの手のひらに残っているよ)
〇 白梅や 墨芳しき 鴻臚館
(異国のヒトを招いた館 墨書の芳し匂いが立ち込めるし 庭の艶なる梅の香も立ち込めるし・・)
〇 しら梅や 誰がむかしより 垣の外
(だれが住んでいるんだろう 遠い昔から 春の始めに匂い立つつあの家の垣の外の白梅だよな)
〇 宿の梅 折取るほどに なりにけり
(この宿の梅は、もうみごとに薫り立ち、折って飾りたくてしょうがないよ)
〇 うめ散るや 螺鈿こぼるゝ 卓の上
(梅の花びらが 螺鈿細工のあでやかな漆器に舞い降りて より薫りたつよ)
〇 梅咲て 帯買ふ室の 遊女かな
(室という港の遊女たちが買った艶やかな帯に 梅の香が彩を添えているよな )
〇 燈を置ヵで 人あるさまや 梅が宿
(誰かいるだか 誰もいないんだか 真っ暗な宿の周りに 梅が白々とほのめいているよ)
〇 梅遠近(おちこち) 南にすべく 北すべく
(もう、あちこち梅の咲き匂う季節だ 今日はどこに旅しよう)
〇 こちの梅も 隣の梅も 咲きにけり
(我が庭の梅も 隣の庭の梅も ことしは一緒に咲いたな)
2020年2月25日 大阪城公園