スモーク・ブッシュ
なるほど煙のような雰囲気の花。
この花は、この季節、郊外を走るとよく見かける。
グラス・ツリー
よく見かけると言えば、この花も至る所に咲いている。
花は、このようにすくっと空に伸びているものもあれば、
横にクルリと巻きながら伸びたり、それはもう思い思いに伸びている。
今年の5月に来た時は、全く花は咲いていなかったのに、
半年でこんなに伸びるのか!と驚いたのは花だけで、幹は1年でほんの数センチしか伸びないそうだ。
だから、私たちがこうして目にしているグラスツリーは、もう何百年もその位置にいたということ。
そういえば、このグラスツリーという名前になったのは、割と最近のことらしい。
前の名前が、差別用語というのが事の起こりらしいが、
そんな事も含め、グラスツリーはオーストラリアの歴史を、じっと佇んで見ていたんだな~と、
ちょっと感慨深く眺める。
キングス・パークには、こんな並木道がいくつかあるが、そのほとんどが個人の記念樹のようで、
その木のそばに、いつ、誰が、何のために、などを記したプレートを立てている。
その一つひとつを読んでいくと、どうもこの通りは、
戦争で亡くなった人を偲んで家族や友人が植樹したものがほとんどのようだ。
プレートの中に記された、年齢、日付け、何が原因で、などを読み、
その木を植えた人の思いに胸が締め付けられる。
そして、その中で目に飛び込んできた、4月25日の日付け。
28歳の若さで、戦時中に怪我が原因で亡くなった男性を偲んで、母親が植えた木だった。
短い人生を終えた男性も、その男性を偲んで木を植えた家族も、今はもう誰もいない。
だが、その人達に会ったこともない日本人が、この木の前で涙を流している。
こうして、この場所に導かれたご縁の意味、きっとあるのだろう。
大きな存在に、その意味を問いながら手を合わせる。